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サンブリッジ一志氏「グリッドでデータベースのアウトソースが実現」

~Developers Summit 2004 講演

 1月29・30日に「Developers Summit 2004」が東京コンファレンスセンター品川で開催され「データベースの課題と今後の動向-データベースはどこへ向かうのか-」をテーマに、株式会社サンブリッジテクノロジーズ 技術本部開発部 プロジェクトマネージャの一志 達也氏が講演を行った。


データベースの市場動向

株式会社サンブリッジテクノロジーズ 技術本部開発部 プロジェクトマネージャ 一志 達也氏
 まず同氏は、最近のデータベース(以下、DB)を取り巻く市場動向を取り上げた。

 現在のところ4月に出荷される予定なのが「Oracle 10g Database」。複数ノード間でリソースをシェアするグリッドコンピューティングが目玉となる。IBMも現行版となる「DB2 Information Integrator v8.1」で“グリッド”をうたってはいるものの、「レガシーを含む複数のDBに対し一括でクエリを投げ、これを一括で戻すもので、IBMのグリッドはミドルウェアのような機能」だという。

 Microsoftでは、次期SQLの「Yukon」を制作中だが、発売時期は未定のため、「SQL Server 2000」が現行バージョンということになる。「YukonではWindowsのファイルシステムにDBのアーキテクチャを導入する戦略がとられており、これは障害対策にもつながる」という。

 オープンソースの「PostgreSQL」の最新バージョンは、2003年11月リリースのv7.4。「主にエンタープライズ向けの機能が強化されている」という。


企業におけるデータベースシステムの課題

複数の企業システムに各々DBがあり、管理コストも上昇しているのが現状
 企業ではWebや販売、CRMやデータウェアハウスといった業務システムで、それぞれがDBを持っているのが通常だ。同氏は「これがひとつ増えると管理者がひとり増える」という。業務の拡張に伴い、システム数ばかりかひとつひとつのデータ容量も増加していく。「データ量の増強は3年後を見て行われている」。

 また管理対象が増え、運用計画作成、運用マニュアル作成、運用保守の代行までの業務が発生するため、実際に情報システム部の要員が増えるわけではないが、発注先のベンダーやSIの側に担当が増えるわけだ。こうした複数のDB間でのデータは連携されておらず、「連携するためにもシステムが増える」という循環も起こる。

 こうして将来をにらんだ大きめのシステムと、複数のシステムの乱立した企業インフラでは、当然「リソースの数%しか使っていない」状態となる。「現状仕方がないと思われているが、例えばサーバーが30台あって、フル稼働しているのは3台。このリソースを生かせない状況をそろそろ真剣に考える時期に来ている」と同氏はいう。

 もともとはSIだったという同氏だが、「この世界に問題意識を持っている」という。「そもそも企業側では自社システムの稼働に多くの人間やハードウェアを使いたいとは思っていない」というのだ。


オラクルのグリッドコンピューティングが問題を解決

 そして「こうした問題を解決するのが、オラクルの提唱するグリッドコンピューティング」だという。Oracle 10gでは、ノードを束ねて、複数の業務システムにサーバーやストレージのリソースを動的に配分することが可能だ。「稼働率の変更を昼夜や月の特定の日付ごとにスケジュールすることも可能で、設備増強も必要な分だけできる」という。

 同氏は2003年12月に開催された「Oracle World Tokyo 2003」で、128ノードで稼働するOracle 10gのデモを実際に見て、そのサイズに「たったそれだけ?」と驚いたという。そのシステムはブレードサーバーで稼動しており、「物理的なスペースもとらないので、リソースを一カ所にまとめて管理でき、システム間連携もこれまでより簡単になる」という。

 リソースを集中させた場合には、災害や電源断などのリスクが伴う。「時間をかけて蓄積したデータが消失すれば、企業には致命的ダメージがある」ほか、バックアップを行えても大規模なシステムではリカバリに長時間かかるため、その間の業務が停止してしまう。こうしたケースを想定し、同氏は「遠隔地にクローンを配置するディザスタリカバリを行うべき」という。そうすれば障害発生時も「回線を切り替えるだけで、ユーザーからはシステムが止まっていないかに見える」という。


データベースのアウトソーシングが可能に?

クライアント側のアプリケーションとDBでXMLデータをやりとり
 同氏は「大企業向けでない」としながらも、このグリッドコンピューティングの技術を利用して「Webサーバーやメールサーバーをアウトソースするのと同じように、DBのインフラを提供するホスティングサービスが可能ではないか」と提案。「DBの完璧な運用とハードウェア設計をできる人は一握りで、彼らがその技術をつかえる範囲はこれまで限られていたため、運用面でもメリットがある」とし、「これが実現すれば、ビジネスが大きく変わる」と期待を述べた。

 そうしたとき、クローズアップされるのがWebサービスの技術だ。「社内のシステムと同様に使えることが理想。また管理コストが下がっても回線コストが跳ね上がっては意味がない。このためHTMLベースは得策でない」とし、「アプリケーションはクライアント側に用意し、回線にはインターネットを用いれば、XMLが処理データとしてhttpプロトコルにそのまま流せる。これが重要」とした。

 同氏はすでにクライアント側のアプリケーションにVB.NETを用いたWebサービスのシステムの導入を手がけているが、レスポンスに問題はないという。「人間が一度に見れるのは20件まで。これだとデータ転送から帰るまで遅くとも1秒程度」とのことで、「特定顧客に使用を限定した場合は.NETでいい」とした。そして「自社と他社でシステムを共存するASPの形が主流になる」とした。

 一般向けとしては、「どこの誰ともわからない人間が作ったアプリケーションをインストールはしないもの。配布が難しいのでFlashがよい」とした。これだと、通常のWebアプリケーションと違い、データをやり取りするたびにページ全体を書き換える必要がないため、「レスポンスがよくなる」とのことだ。


XMLDBとRDBにはそれぞれメリットがある
 こうしたサービスが実現した場合、DB内にはXML形式でデータをストアするべきだろうか。同氏は「SQLでの検索や更新の柔軟性などはRDBの方が高い。入出力の形式にWebアプリケーションやMicrosoft Office、携帯電話などの異機種を考えた場合にはXMLに将来性がある」とそれぞれのメリットを挙げ、「両方入れる手もあるが、物理的スペースがかかる。またXMLでデータを格納してもRDBのように見えるという、OracleやDB2には実装済みの機能を利用する方法もある」と述べた。

 またデータベースを管理する人間は集約されるが、「DBがアウトソースされても、RDBの設計、開発、分析をする業務はなくならない」とし、「DBの技術が活用されるチャンスと考えるべき」と述べた。



URL
  Developers Summit 2004
  http://www.seshop.com/event/dev/
  株式会社サンブリッジテクノロジーズ
  http://www.sunbridge-tech.com/


( 岩崎 宰守 )
2004/02/02 12:29

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