2月4日から6日まで、「NET&COM 2004」(主催:日経BP社)が千葉市の幕張メッセで開催されている。初日には、株式会社NTTデータ 代表取締役副社長の中村直司氏による「情報システムによる新たな企業価値の創造 ~eコラボレーションが拓くビジネスの可能性~」と題した特別講演が行われた。
■ 企業間のネットワークが貧弱な日本企業
|
代表取締役副社長の中村直司氏
|
中村氏はまず、日本のIT化の現状に触れ、「2000年から2003年の4年間における日米政府のIT投資の伸び率を比べると、アメリカが9.1%の伸びに対し、日本は1.8%の伸びでしかない。投資額としては不十分」と指摘した。しかし、厳しい景気動向などを踏まえ「われわれはその少ない投資を有効に生かす努力をする必要がある」と、限られた条件内で工夫する必要性を強調した。
また、企業のIT投資についても触れ、「2001年から2005年までの予測を含むIT投資の日米の傾向をみると、アメリカが4.3%、日本は2.3%と極端な違いとなっていない」と投資額面での違いは少ないとした。しかし、投資内容に対する評価については、「米国は投資結果に対する満足度がやや満足を含めて70%以上の評価が得られているのに対し、日本ではほとんど評価が得られていない。評価自体していない企業も多い」と、大きく異なる評価結果が出ていると指摘した。中村氏はネットワーク化の比率を例に、「社内のネットワーク化は日米ともほぼ同じ高いレベルになっている。しかし、社外とのネットワーク化は米国に比べ、日本はほどんど進んでいない。これがIT投資の評価結果にも影響しているのではないか」と社内整備だけで完結している日本企業の実状に触れ、「企業価値の創造のためには、ITによってプレイヤー同士を結びつけることが必要」と、企業間のコラボレーションの重要性を強調した。
|
自動車購入におけるワンストップサービスの事例
|
中村氏は自動車の購入を例にコラボレーションによるメリットを説明した。「自動車を購入すると、車庫証明や自動車税などの税金、自賠責保険などさまざまな手続きが必要。それぞれIT化されていたとしても、結局はばらばらになっているとIT化のメリットは得られない。現在弊社が行政と連携して進めているワンストップサービスは、これらばらばらな手続きと電子決済をひとつのシステムで統合し、個人がインターネットで直接申請できるシステム。このように行政・金融機関・民間企業のシステムを連携することで、IT化のメリットが活かせ、新たなビジネスチャンスが生まれてくる」と、コラボレーションによるビジネスの可能性について紹介した。
■ 情報の増大化・多様化に対処するための技術「タンジブルフューチャー」
中村氏は、今後コラボレーションによる企業間で扱う情報量が膨大になることに触れ、同社が提唱する「タンジブルフューチャー」の必要性についても説明を行った。タンジブルフューチャーは、情報量の増大や多様化など、複雑化する意思決定プロセスを支援するための技術を表す同社の造語。タンジブルフューチャーを実現するために取り組むべき技術要素として、同氏は「情報マイニング技術、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、情報統合センサーネットワーク、パーソナライズ技術」の4つを挙げた。
「多様なデータを解析し、情報価値を生み出す分析技術が情報マイニング技術。テキスト解析技術や音声認識技術、画像解析技術などが含まれる。例えば特許の審査を行う場合に、過去の特許を検索するのは非常に困難だが、テキスト解析技術を用いることで負担を減らすことが可能」と説明した。「またグリッドコンピューティングなどHPCもタンジブルフューチャーに欠かせない技術。現状はHPCはスーパーコンピュータの代わりとおもわれているが、実際には企業の経理などの処理にも応用がきく技術」と身近なものであるとした。
情報統合技術については、「複数のカメラで得た映像から情報を抽出し、ITインフラと統合することで新たな情報源として活用できる技術。たとえば、駅などに定点観測カメラを設置し、人の流れを情報として得ることで、混雑を解消できる導線を作ることができる」と説明した。パーソナライズ技術については、「利用者の状況や目的に合わせた情報/サービスを提供する技術」と紹介した。
中村氏は、タンジブルフューチャーにより、「既存ビジネスの効率改善や新規ビジネスチャンスの発見、潜在リスクの発見・回避、個人適応型サービスなどを実現できる。企業の新たな価値創造につながる」と利点を強調した。
最後に中村氏はSIサービスを提供する企業として、「顧客は量から質を求めるようになってきた。弊社としては、IT導入度を測るIT導入度診断を行うなど、投資対効果を高めるコンサルティングを行うことでカスタマーバリューを最大化するSIサービスの提供を目指す」として講演を締めくくった。
■ URL
NET&COM 2004
http://expo.nikkeibp.co.jp/netcom/
株式会社NTTデータ
http://www.nttdata.co.jp/
( 福浦 一広 )
2004/02/05 13:29
|