2月4日、「.NETによる次世代基幹系システム構築セミナー」がトランスコスモス株式会社、日本ユニシス株式会社、マイクロソフト株式会社の共催で開かれ、Microsoft Korea, Inc.のChan Ik KiL氏が「韓国における.NET基幹系システム構築事例」のテーマで講演を行った。
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Microsoft Korea, Inc. インダストリー プラクティスマネージャー Chan Ik KiL氏
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Microsoft KoreaのChan氏は日本語で講演を行った。まず.NETプラットフォームをXMLと、WindowsプラットフォームをHTMLに関連づけながら対比し、「これまでとは全く違うもの」と述べ、デジタル家電やPDAなどの新規デバイスもシステム変更なしにサポートできるプログラマブルなプラットフォームとした。
同氏は飛行機チケットの予約を例にとり、「他の企業で手がけるホテル、レンタカーの予約もひとつのサイトから行える。このうちひとつを変更したときにも、他の予約先から変更を問い合わせてくるシステムが作れる」とし、「各社集まって仕様を合わせればこのシステムはできるが、これが世界中でつながるのがWebサービス」と述べた。
Webサービスは、データ項目を定義できるXMLのほか、これを送受信するSOAPプロトコル、Webサービスを登録するUDDIといった標準化技術で構成される。UDDIでは、「他企業が登録しているWebサービスを検索し、必要なモジュールとして呼び出して利用できる」ものとなる。
企業内にこれを適用する際の構成例として、「SAPやOracle、ナレッジ、メールといった複数システムを連携するEAIツール、他企業と業務システムを統合するB2Bi、そのUIとなる顔としてのポータル、ユーザー認証などでシステムが構成される」とした。
こうしたシステムを構築する際の.NETプラットフォームについて同氏は、開発ツールのVisual Studio.NETとそのフレームワークである.NET Platform、サーバープロダクト、Microsoftが提供する基本的なWebサービス群であるBuilding Block Services、そしてWebサービスでの標準化技術から構成されるとした。そしてVB.NETは、「Visual BasicやC#、C++、Jscript、COBOLなどのマルチランゲージに対応しており、これまでの資産を利用できる」と述べた。
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飛行機チケット予約を例に、XML、SOAP、UDDIといったWebサービスの標準化技術を取り上げた
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Windows Server 2003をベースに、SQL Server 2000やEAIツールとなるBizTalk Server 2000などのサーバープロダクト
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PassportをはじめとしたMicrosoftの提供するWebサービス群
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■ 韓国における.NETでのシステム構築事例
続けて同氏は韓国国内でコンサルティングを担当した.NETによるシステム構築の事例を紹介した。ロッテワールドは、1989年に開設し、年間約800万人が来園、ホテルなども併設される「日本のディズニーランドのような」エンターテイメントテーマパーク。3年前、それまでのホスト系から機能追加の難しさやコスト高などを理由に.NETプラットフォームを100%採用したシステムへ移行した。
それまでのシステムでは、決算に膨大な時間がかかっていたほか、入場客数や売上高の予測があいまいで効果的な経営戦略が立案できず、多くの施設を抱えるため運営管理にも問題があった。また臨時出店などでは手作業で対応していた。同氏によれば「すべてをサポートするトータルソリューションを提供できるのはMicrosoftだけだった」とのことで、点在する各施設からはPDAなどのモバイル機器を用いてデータをやりとりしている。また天気予報サービスも加味した需要予測システムにより、人員配置やアトラクションの実施、食材の在庫管理などでも効果が上がったという。このほか通常の企業と同様の人事・経理・購買・CRMなどのシステムも含めた開発が行われた。施設数が膨大なことも相まって、「画面に入りきらずERPとEIPのポータルを分けた」ほどその範囲は幅が広く、期間も業務プロセスの分析を開始した2002年4月から、最終的には2003年10月までを要したという。今後は系列グループ内の製菓、飲料などの企業でも、.NETでのERPを中心としたシステム構築が検討中とのことだ。
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広範な範囲でシステムが構築され、開発プログラム本数は2000を超えたという
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中央のデータベースサーバーはクラスタリングされている。またクライアントにはPDAが多数利用されている
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Webサービスからデータベースへの連携では、IISからCOM+基盤の階層を経由している
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韓国最大のエレクトロニクス企業である三星電子では、国内外の流通企業や、海外拠点との連携での問題を解消するため、.NETでシステムを構築した。三星電子ではERPにSAPを使っていたが、社内のシステムを連携するEAIツールには、SAPアダプタも存在しているBizTalk Serverを利用した。既存のホスト、社外とのB2B連携も含め、システムの開発そのものは問題なく終わったが、「海外25拠点にそれぞれ導入を行うのに時間がかかった」という。
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Webサービスで外部の流通パートナーや海外拠点と接続し、BizTalkを介して社内システムと連携する
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BizTalk Mapperでは、データベースと、WebサービスやERP、CRMなどのシステム間でデータのマッピングを行う
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BizTalk Orchestration Designerでは、業務プロセスに沿ったワークフローを開発できる
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このほかにも、SIであるロッテ情報通信でのExchangeとSharePoint Portal Servertを用いた事例や、日本ユニシスの16Wayサーバー「ES-7000」を用いたロッテショッピング、三星保険といった韓国でも有数の企業での事例も紹介された。
■ URL
.NETによる次世代基幹系システム構築セミナー
http://www.unisys.co.jp/cross/seminar/040204/
Microsoft Korea, Inc.
http://www.microsoft.com/korea/
トランスコスモス株式会社
http://www.trans-cosmos.co.jp/
( 岩崎 宰守 )
2004/02/06 00:00
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