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慶應大・村井教授、「IPv6は基盤作りから新しいサービスの創造の段階へ」

~IPv6ビジネスサミット2004 キーノートスピーチ

慶應義塾大学 環境情報学部教授の村井純氏
 IPv6ビジネスサミット2004(主催:日本経済新聞社/財団法人インターネット協会/IPv6普及・高度化推進協議会)が2月16日に開催された。慶應義塾大学 環境情報学部教授の村井純氏が「IPv6がもたらすその無限なる可能性」と題したキーノートスピーチが行われた。

 IPv6は、アドレス空間の枯渇をきっかけに開発された次世代のIPプロトコル。「これまでは実験段階という印象が強かったが、今回やっとビジネスという視点に立って話せるようになった。非常にうれしいこと」と、IPv6ビジネスサミットの開催の意義について触れた。

 村井氏はまず、3年前にインターネットがどうなるかの予測と現在までのブロードバンドの普及状況を表したスライドを示し、インターネットの利用形態が大きく変化していることを指摘した。その上で村井氏は、「2004年に何が起こるかを考えると、無線LANやRFID、携帯電話などに代表される利用シーンの異なるインターネットを考えなければならない。また、安心というのも大きなキーワードだ。そのほか、何でもインターネットにつながったり、高品質な映像を配信することも意識しないといけない。これらを実現するためには、IPv6の技術が欠かせない」とグローバル社会の基盤としてのIPv6の重要性について述べた。

 IPv6のメリットとして、機器ごとに個別のアドレスを割り当て、1対1のコミュニケーションなどに生かせるという特長がある。「インターネットをもともとデザインしたときに、機器が移動することは考えていなかった。しかし、実際には無線や携帯電話などが普及しており、これをどうするかが大きな課題だった。これまでは、移動先でアドレスを消費していたわけで、非常に嫌われる存在だった。モバイルインターネットはIPv6になって、はじめて使えるようになったといっていい」と、IPv6の利点について説明した。

 また、遠隔医療などにもIPv6が効果的であるとし、事例を紹介した。「ベッドにIPv6対応の機器を設置し、患者の心拍数や血圧などを測定し、医者がそれをみて診察するという実験をおこなっている。心拍数や血圧といった情報は、場合によっては家族にも知られたくないプライベートな情報。IPv6なら1対1のセキュアな通信がおこなえるので、プライバシーの保護にもつながる」と、IPv6が有効であることを強調した。

 そのほか、ブロードバンドの普及により、動画配信が進んでいる点にも触れ、「現在、動画配信のプロトコルにはUDPが使われている。UDPは、TCPと違いそのまま流れっぱなしになるため、今後動画配信が大量になると、UDP同士の輻輳が問題になる。マルチキャストという考えがいわれて久しいが、IPv6によってこうした問題も解決する」と紹介した。

 村井氏は最後に、「通常、新しい製品はニーズがあって生まれるものだが、ITの世界では、どうしてもシーズ(種)が先行してしまう。IPv6も同様で、これまではIPv6を表現するとき“造る”という言葉がふさわしかったが、これからは“創る”という言葉が重要になるだろう。IPv6が目立つ必要はない。さりげなく、しっかりと基盤が作られれば、私たちは自由に新しいサービスを提供できるようになる」と、IPv6による基盤上に新たなビジネスチャンスがある点について触れ、講演を締めくくった。



URL
  IPv6ビジネスサミット2004
  http://www.v6bizsummit.jp/


( 福浦 一広 )
2004/02/17 00:00

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