2月17日に開催された「Network Computing 2004 Spring」(主催:サン・マイクロシステムズ)において、米Sun Microsystems、Director of Grid ComputingのWolfgang Gentzsch(ウォルフガング・ゲンチ)氏による「Sunのグリッド・コンピューティング戦略“Grid Everywhere”」と題した基調講演が行われた。
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米Sun Microsystems Director of Grid ComputingのWolfgang Gentzsch(ウォルフガング・ゲンチ)氏
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Sunのグリッド製品のロードマップ
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ゲンチ氏によると「もともとグリッドとは電気を表す言葉。サンでは電気のようにどこのコンピューティングパワーかを意識せず、オンデマンドで利用でき、使った分だけ課金される環境の実現をグリッドによって目指している」と言うように、サンにおいてグリッドとは「ユーティリティコンピューティング環境の実現のための技術」と定義されているとのことだ。
現在グリッドが適用される範囲として、部門内のコンピュータを対象とする「クラスタグリッド」、クラスタグリッドがつながって企業など組織全体が対象となる「エンタープライズグリッド」、組織の枠を超えてのリソース共有が実現できる「グローバルグリッド」の3つのレベルが存在する。同社では1999年にクラスタグリッドを、2002年にはエンタープライズグリッドを実現し、現在約8,000以上のグリッドシステムが稼働しているという。
サンのグリッド技術において中核となるのが、クラスタグリッドの構築と運用を行うソフトウェア「Sun ONE Grid Engine」だ。Sun ONE Grid EngineはSolarisとLinuxに対応し、ネットワーク上にあるCPU、メモリ、アプリケーションなどのリソースを自動的に検索して必要な時に必要なユーザーへリソースを割り当てる「グリッドの基本となる」(ゲンチ氏)機能を持つ。なお現在、Sun ONE Grid Engine5.3が同社のWebサイトにて無償でダウンロードすることができるが、第2四半期には新バージョン6.0がリリースされる予定だ。
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エンタープライズグリッドのイメージ
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さらにクラスタグリッドの連結・制御を行い、エンタープライズグリッドを実現するのが「Sun ONE Grid Engine Enterprise Edition」だ。Sun ONE Grid Engine Enterprise Editionは、Sun ONE Grid Engineに部門間でのリソースの割当てを制御するポリシーモジュールが追加されている。このモジュールを使用すると、自動的に実行されるポリシーに基づいて、部門間のリソースをコントロールし、分配・共有を行うことが可能となる。
グリッドを実現するためにはコントロールするソフトウェアだけでなく、リソースとなるハードやソフトの対応も必要だ。ゲンチ氏によると、Solarisにおいてすでにグリッドリソースになる機能を提供しているが、将来的には同社から発売されるハードウェアに「リソースディスカバリーエンジン」を搭載する予定とのこと。「これによりサンのハードウェアはネットワーク上のグリッドマスターを自動的に検索し、接続やプロビジョニングを行うことができるようになる」(ゲンチ氏)という。
グローバルグリッドについては、現在のところ商用サービス化は実現していないが、実験レベルでは各所で行われているという。ゲンチ氏はイングランド中部にて、60マイル離れた3つの大学をグリッドで結びリソースの共有が行われている「ホワイトローズグリッド」を例にとり、実用レベルまで達していることをアピールした。ゲンチ氏によると、グローバルグリッドを利用した商用のWebサービスは、IT企業経営者も高い関心を示しており「半年から1年後には実現しそうだ」とコメントした。
最後にゲンチ氏は、「20世紀はエンジンの発明によって移動手段が劇的に変化したように、21世紀はグリッド技術が世界に大きなインパクトを与えるだろう」と述べ、講演を締めくくった。
■ URL
サン・マイクロシステムズ株式会社
http://jp.sun.com/
グリッドコンピューティングについて
http://jp.sun.com/grid/
( 朝夷 剛士 )
2004/02/18 00:01
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