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JIIMA今別府氏、「電子化文書による保存を許容すべき」

~ECOM 情報セキュリティ最新セミナー 講演

JIIMA 法務委員長 今別府 昭夫氏
 2月19日に開催された電子商取引推進協議会(ECOM)主催の「情報セキュリティ最新技術セミナー 第2回 文書・情報のデジタル化にともなう課題と対応技術」において、社団法人 日本画像情報マネジメント協会(以下、JIIMA) 法務委員長の今別府 昭夫氏が「デジタルデータの法的証拠能力についての課題と取り組みの現状(イメージデータを中心に)」と題した講演を行った。

 今別府氏によれば、電子文書(はじめからPC上で作成されたもの)・電子化文書(はじめは紙やマイクロフィルムで作られ、後に電子化したもの)の問題点としては、1)改ざんに弱い、2)経年劣化による消失、変化のおそれ、3)盗難や漏えいが大量かつ秘密裏に行える、4)ディスプレイ表示や印刷などを行わないと見られない(可視性・可読性にかける)、があるという。

 今別府氏は、これらを改善するためには、「1)では改ざんの事実を検証できること(真正性)、2)では復元可能な状態でデータを保存すること(保存性)、3)では権限を持った人だけが正しくアクセスできること(機密性)、4)ではいつでも見られるようにすること(見読性)、この4つが確保されている必要がある」とする。

 「電子文書に関しては、1998年の電子帳票保存法が制定されたことで、これらの点に関する必要要件が明確化され、また電子証明技術が実用化してきたことによって認められつつある。しかし、電子化文書はまだ許容されていなかった。電子化文書が紙文書と同一であることを保証する電子署名の技術や、改ざんされていないことを証明するタイムスタンプ技術など、必要な技術やサービスが確立していなかったことから対応が遅れてしまった」と今別府氏はこれまでの状況を説明する。しかし、今ではこの状況が変わってきているというのだ。

 「e-Japan重点計画-2003では、電子的な保存を認める方向で方針が立てられた。構造改革でもITの規制を改革するということで、民間文書の電子保存推進をするために法律の制定も視野に入れられている状況」(今別府氏)と、悪い方向に向かっているのではなく、状況は改善しつつあることを語った。実際に医療機関で利用されるレセプトに関してはすでに電子化が認められている。

 それでも、2004年に導入がはじまった電子申告では、申告自体はインターネット経由というデジタルな手段で行えるにもかかわらず、領収書や貸借対照表などは紙で保存、提出する必要があるなど、まだまだ十分とはいえない。「韓国などではすでにイメージデータで保管や提出が可能であるし、欧米でも進んできている。このままでは日本だけが取り残されてしまう」という危機感を表明した。幸い、つい先日行われたIT戦略本部会議で電子化文書の利用に関して定める「e文書法原案」を6月をめどに策定する予定で、「うまくすると年内には成立するかもしれない」状況だとのこと。


 また、法的証拠能力を強化するためには、技術的仕様の標準化、取り扱いと運用のガイドライン策定のほかに、電子署名で誰がつくったものかを明確化すること、タイムスタンプなどの第三者証明で改ざんされていないという証明をすることも重要だという。

 今別府氏は「電子署名は、電子署名法により“電子署名が入った電子文書は紙文書と同等”ということが認められた。JIIMAで認定している文書情報管理士の希望者にICカードを渡し、電子署名を可能にすることを予定しているほか、PKIの技術を利用したタイムスタンプサービスも1件10円以内の安価な価格で提供していく予定もある。また、ほかの人間に検討してもらった結果、こうした事業には民間企業ではなく中立性の高い公益法人が最適だろうということになった」と述べ、こうした取り組みに対して積極的に取り組んでいく姿勢を示した。

 最後に今別府氏は「証票類の電子化文書(イメージ化)による即時保存を許容すべきだと思っている」と述べ、講演を締めくくった。



URL
  ECOM情報セキュリティ最新技術セミナー
  http://www.ecom.or.jp/securitytechseminar/
  社団法人 日本画像情報マネジメント協会
  http://www.jiima.or.jp/


( 石井 一志 )
2004/02/20 10:07

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