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NRI西片氏「オープンソースの普及は公共機関での採用が鍵」

第7回NRIメディアフォーラム

 株式会社野村総合研究所(以下、NRI)は2月23日、報道関係者向けにオープンソースソフトウェア(OSS)の最近の動向と開発事例を紹介するメディアフォーラムを開催した。


オープンソースの普及の鍵は公共機関が握る

情報技術本部オープンソースソリューションセンター グループマネージャー 西片公一氏

各分野におけるソフトウェアの成熟度の位置づけ
 OSSはその代表とも言えるLinuxを中心にミドルウェア、サーバーアプリケーションなどの機能や信頼性が向上しつつあり、企業においてもシステムのエッジ部分から、場合によっては基幹業務に至るまで採用する例が増加している。同社情報技術本部オープンソースソリューションセンター グループマネージャーの西片公一氏によると、特にJ2EEを利用したミドルウェアおよびRDBMなどの分野においては、商用ソフトとの機能差が縮まっており、対コスト効果の観点から導入を検討しているユーザーが多い「今ホットな分野」とのこと。

 「ホットな分野」の裏を返せばまだ改良の余地があるともとれる。同社が用途別のアプリケーションにおいてOSSと商用製品の性能を比較したところ、WebサーバーやWebアプリケーションサーバーのような並列分散処理が可能な用途においては見劣りのない性能を出すものの、SMP機での利用やDBなど重要なトランザクションデータを保存するサーバーへの利用は適さないという。「プロセスベースでは速いが、スレッドベースでは遅い」(西片氏)

 ところで、企業用途においてOSSのOSといえばLinuxがその代名詞となりつつあるが、FreeBSDなどほかのOSの浸透が進まないのはなぜだろうか。同氏は「日本ではユーザー企業のベンダーやSIerに対する依存度が欧米に比べて高いから」と分析する。ベンダーとしてはOSSへの対応をしつつも、まだ積極的に採用するメリットを見い出せていないため、Linux以外のプラットホームへの関心がまだ薄いとのことだ。

 これに対して海外ではプログラマーなどの職種が生涯の職業として認められており経験を積んだスキルの高い人材が豊富なことや、英語を基本としたプログラム言語への障壁が低いことなどからIT部門の専門性が高く、ユーザー企業が自らリスクを承知の上で業務に合ったプラットホームを採用するケースが多いという。技術的に解消できる問題ではないことから、日本ではこのままLinuxベースのみの普及が進むというのが同社の考えだ。

 西片氏は「現状、官公庁や自治体などがコスト削減、ベンダー依存からの脱却を目的に積極的にOSSの採用を検討している。ここらでの事例が増えれば一般企業への採用にも拍車がかかるのではないか」と、公共機関での採用がOSSの普及の鍵を握っていると見解を示した。


コスト削減につながるも十分な検討が必要

情報技術本部オープンソースソリューションセンターグループ 上級テクニカルエンジニア 寺田雄一氏

オープンソースによるコスト削減パターン
 OSSを採用する理由として最も多く挙げられるのが「コストの削減につながるから」である。それは単に「OSが無料だから」だけではなく、OSSのさまざまな特徴が起因し結果としてTCOの削減につなげることができるからだ。

 同社情報技術本部オープンソースソリューションセンターグループ 上級テクニカルエンジニアの寺田雄一氏は「OS部分のコスト削減よりもオープンアーキテクチャのハードウェアを利用できることが導入費用の削減につながっている」と説明する。さらに「オープンソースミドルウェアを活用すればランニングコストを約1/2に抑えることも可能」だという。

 また寺田氏は、OSSの特徴であるソースが公開されていることに触れ、「ソースに手を加えることにより独自の要件に対しての拡張やチューニング、不具合の修正が可能。商用製品ではこれをカバーするアプリケーションの作成や、次のバージョンを待たなければならないことがある」と説明し、さらに「サポート期限という概念がなく、古いOSSでもユーザーやベンダーが独自にサポートすることも可能で選択肢が広がる」とメリットを強調する。

 一方で商用製品と比較してOSSが劣る点も忘れてはならない。導入の障壁として多く挙げられるのが「サポートの問題」だ。OSSには基本的に「問い合わせ対応」や「障害対応」がなく、英語をベースとするコミュニティなどからの情報を元に自力で解決するのが基本だ。寺田氏は「一部のOSSは商用製品並みの性能を持っているが、バグが多く企業用途での使用を推奨していない機能もある。商用製品と比べてマニュアルや研修が充実していないため設計担当者がOSSに精通しておらず、障害対応に苦慮した事例もある。さらにバージョンアップや修正パッチが提供された場合のテストなどの保守についても事前によく検討しておくべき」と述べ、安易な考えでの導入がトラブルにつながることを警告した。


OSSCが提供するサービス
 同社では「オープンソースソリューションセンター(OSSC)」を設け、ユーザーとコミュニティの間に立って企業におけるOSS導入の障壁を取り除き、オープンソース活用を推進するとしている。寺田氏は「OSSCは主に基幹業務システムを対象に評価・検証、設計、保守、マイグレーション支援などのサービス提供により、OSS導入における不安を解消する」と、アピールした。



URL
  株式会社野村総合研究所
  http://www.nri.co.jp/

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( 朝夷 剛士 )
2004/02/23 18:27

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