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JUAS角田氏「2003年度のIT投資は、対前年度比で上向き」

IPAとJUAS、ユーザ企業IT動向調査の結果を発表

 独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は、社団法人日本情報システム・ユーザー協会(以下、JUAS)へ委託して実施した「2003年度ユーザ企業IT動向調査」の結果を2月24日に発表した。

 JUASでは、本調査を過去8年間実施しており、今回の調査は2003年9月から12月にかけて、ユーザー企業872社のIT部門と、863社のIT利用部門に対してアンケート形式で行われた。またユーザー企業50社のIT部門長と、51社のIT利用部門長、11社のITパートナー企業にはインタビュー調査も行っている。


企業のIT投資額は3年ぶりに増加

社団法人日本情報システム・ユーザー協会 専務理事 細川 泰秀氏
 JUAS専務理事 細川 泰秀氏は、「製造業と非製造業で、ほぼ半々の20業種を調査対象としているが、今回の調査では銀行をはじめとした金融業で、IT予算額の伸びが目立った」と述べた。

 調査を担当したJUASの角田氏は、「2003年度のIT投資は、対前年度比で3年ぶりに上向きに転じた」ことを報告した。次年度については減るとの予測が多いが、「昨年度調査による2003年予測でも、減少の予想だったが増加している」とし、必ずしも連動はしないだろうとの見方を示した。またIT投資が増加した金融分野では、売上も良化しているが、同様に増加の目立つ通信分野では、売上そのものは下がっている特徴が見られた。

 IT投資の内訳について角田氏は、「全体としてはあくまで微増で、保守運用の費用を削減することで、新規投資を増加させた傾向が見られる」とした。その割合は2002年度で新規投資36%、保守運用費64%だったものが、42%と58%に差が縮まっており、特に「金融業は、新規投資の割合が多い」とした。同団体では、「将来的には5:5の割合に変化することを期待する」と述べている。

 細川氏は、保守運用費用の削減のための目立った施策として、「通信回線費用の削減、コスト管理の強化、アウトソース」などを挙げた。


企業のIT投資額が3年ぶりに増加に転じた 保守運用コストの削減施策

ERPパッケージ利用企業は44%まで増加

社団法人日本情報システム・ユーザー協会 角田氏

ERPパッケージのシェア
 IT投資対象別で見ると、ERPパッケージの利用企業は2000年度調査の13%から年々増加し、2003年度調査では44%に達した。シェアを見るとSAP R/3が21.7%でトップ。Oracleが13.4%で、国産製品もSSJ株式会社のSuper Streamが15.5%、富士通のGLOVIA-Cが7.2%など健闘している。また角田氏は、「全体の満足度を見ると、特に保守運用価格への満足度が低く、品質への満足度が高い」と述べた。またパッケージのカスタマイズ状況を見ると、自社用の作りこみが前年の50%から30%へ大幅に減少している。同氏はこの理由として、「標準パッケージに適用できる国内向けのアドオンが充実してきている」点を挙げた。

 また企業の基幹系システムの稼動期間については、「ゼロから開発している企業では平均11.2年使っており、今後も5.7年使うので、そのライフサイクルは17年になる」という。一方のパッケージでは実利用4.9年、今後は5.8年で約11年となる。同氏は「仮に、パッケージが9000万円、独自開発が1億円の導入費用費用で、その保守に20%かかるとするとどうなるか。長期間使用するのであれば、導入にあたってトータルコストを考えるべき」と述べた。

 ハードウェアではホストコンピュータへの投資が引き続き減少している。来年には減少の加速も予想されているが、「ゼロになることはないだろう」とのこと。一方サーバー、クライアントPCの増加傾向は鈍化し、「単価も下がり、台数ベースより金額での増加はさらに少ない」との結果になった。

 コスト削減では大きなファクターとみられるVoIPは、10%前後で採用されている。「決して高いとはいえないが、3割の企業で導入を検討しており、期待値は高い」という。

 企業でのSOHOやサテライトオフィスといった、テレワークの導入状況を見ると、全体の90%以上が実施していない。しかし「この分野でのみ、特に100人未満の中小企業では、小回りが利くためか、14%と実施が進んでいる」という。

 また保守運用業務をアウトソーシングしている企業は全体でも54%と半数を超えた。目的としてはコスト削減、人材不足の解消が上位を占める。アウトソース先は情報子会社が3割で、そのサービスレベルを契約時に明示する「SLA」については全体の2割程度でしか利用されていない結果となった


システム開発では、企業のRFP作成関与が満足度向上につながる

 システムの信頼性・安定性については、IT部門、利用部門ともに全体として向上したとの意見が目立つが、IT部門の23%が、「システムの複雑化、広範囲化、保守人材の不足などの理由で」低下したと回答している。

 システム開発については、8割の企業がベンダーに開発を委託している。依頼企業数は2社以上が70%となっている。ユーザーの満足度は25%と低いが、「RFP作成に関与している企業では、それなりに満足度が高い」ことから、原因として、要求仕様書(RFP)を「従業員数1000人以上の会社でも、その5割近くがベンダーに作成を委託している」点を挙げた。同協会では企業が要求仕様書を作成できない理由として、細川氏は「国産メインフレームベンダーによる囲い込みのため、これまで作ってこなかった」ことや、「IT部門の子会社化に伴う本社側での人材不足」などを理由とした。また「要求定義の項目を、ユーザーがどこまで書くべきかを示したものがない」と述べ、「要求仕様書作成については、3月末をめどに基本的な部分からガイドラインとして現在まとめている」という。

 システム開発の工期は、61%が「短縮している」とし、また品質も46%が「向上している」と答えている。価格も43%が「低下した」としているが、工期、品質での16%と比べ、まだ高いとする意見が33%と多い。

 開発の進捗状況については、規模が大きいほど、開発期間が遅延しない結果となった。これについては、「大きなベンダーでないと大規模開発は手がけられないためで、規模というよりマネジメントが確立しているかどうかに左右される面が大きい」という。

 このほか、IT投資評価や経営層のITへの関与についても、調査が行われている。



URL
  独立行政法人 情報処理推進機構
  http://www.ipa.go.jp/
  社団法人 日本情報システム・ユーザー協会
  http://www.juas.or.jp/


( 岩崎 宰守 )
2004/02/24 19:37

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