Enterprise Watch
最新ニュース

日本IBM大歳社長、「ビジネスと顧客の価値を高めるのがオンデマンド」

IBM FORUM 2004 基調講演

 2月25日から27日まで開催されている「IBM FORUM 2004」(主催:日本アイ・ビー・エム株式会社)において2月25日、同社代表取締役社長の大歳卓麻氏による「実現!オンデマンド時代のビジネス改革」と題した基調講演が行われた。


日本IBM 代表取締役社長 大歳卓麻氏
 同社は1997年に社内における業務プロセスの電子化による効率アップを図る「eビジネス」を、2002年には社内からサプライチェーン、顧客までのビジネスプロセスを可視化し、市場の変化に敏感に反応して行動に移せる企業体を目指す「eビジネス・オンデマンド」を提唱し、ITを活用しての企業の競争力強化を推進している。

 ところが大歳氏によると、日本においてのITに対する投資は業務の効率化や経費削減を目的としたものが多いのに対して、(1)製品・サービスの高付加価値化(2)新規顧客の開拓、顧客満足度の向上(3)IT投資に対しての効果の検証に向けた投資が相対的に低いという課題を指摘する。


 大歳氏は「製品を出せば売れるという時代は終わり、市場のニーズは多様となって常に変化している。それらを敏感に察知し、個々のニーズに合わせて柔軟に製品・サービスを提供できる“スピード”と“適応力”がなければ生き残ることはできない」とオンデマンドの重要性を強調する。

 従来は市場の変化が現在ほど速くなかったため、企業は変化の予測が可能であったことから「いかに効率的に商品を作るか」を重視して、予測したまとまった分量をあらかじめ作っておいて売っていた。しかし、予測が困難になると市場の変化を感知し必要なモノを必要な分だけ用意して売らなければならないというのだ。

 そうした適応力のある企業に変化するにはどうしたらいいか。大歳氏は「市場との接点からの情報を組織・チーム全体が共有すること」と語る。さらに「市場のニーズが多様になると既存の国ごと、事業部ごとといったプロセスだけでは対応することができなくなる。そこで社内の業務プロセスも市場に合わせ、顧客や事象ごとに最適な形に変化しなければならない」と述べる。「また経営者においては、事業構造を見極め構成するコンポーネントを把握し、資源の集中や外部委託などの素早い決定が求められる」(大歳氏)

 それらは同社においても実践され、営業現場からの情報の可視化、顧客ごとの担当配置、それに向けた組織図の撤廃を行ったと大歳氏は明かす。さらに同社は各従業員のライフスタイルに合わせて雇用条件の見直しも行ったという。大歳氏は「100%仕事に打ち込み、それに見合った報酬を望む人もいれば、60~80%くらいを仕事に残りは家族のために時間を使いたいという人もいる。進化し続ける会社になるには、従業員の能力を最大限に発揮できる環境を作らなければならない」と、会社のあるべき姿を語った。

 ビジネスのオンデマンド化には組織の変化だけでなくITの利用も不可欠だ。大歳氏は「オンデマンドビジネスにおけるITのオペレーティング環境として、複雑な管理の手間とコストを削減する“自動化”、リソースの統合管理と利用効率の向上に向けた“仮想化”、社内・社外で分散する情報をまとめる“統合化”のソリューションが必要となる」とし、「企業をまたいでそれらを実現するにはオープンな形で提供しなくてはならない」と同社がモノやサービスの自社完結型での提供から変化していることを強調した。

 大歳氏は「常に変化している世の中で企業が進化していくためには、経営効率の追求だけでなく顧客や従業員らに対しての価値を高めていかなくてはならない。ビジネスプロセスと人の能力を最大限に発揮できる企業文化を支える道具として、ITをビジネス全体に最適な形で運用することが重要」とし、講演を締めくくった。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  IBM FORUM 2004
  http://www-6.ibm.com/jp/event/forum2004/


( 朝夷 剛士 )
2004/02/26 00:00

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.