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代表取締役社長執行役員の大歳卓麻氏
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日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は2月26日、2003年度(1~12月)の連結決算を発表した。
これによると、売上高は前年比5.4%減の1兆4979億8200万円となった。このうち、国内の売上高は前年比1.9%減の1兆4327億9700万円、輸出高は47.1%減の651億8300万円となった。
昨年1月に、日立製作所にハードディスクドライブ事業を事業移管、昨年9月に野洲事業所で製造していたSLC(高密度多層プリント基板)を京セラへ売却するなど、OEMを中心とした製造部門の事業再編が大きく響いており、これらを除くと、「国内の売上高は前年比横ばい程度」(日本IBM・大歳卓麻社長)という。
また、営業利益は12.1%減の1470億7100万円、経常利益は10.0%減の1498億9500万円、当期純利益は事業再編に伴う特別損失の影響で16.6%減の792億7600万円となった。
結果としては、2年連続の減収減益となり、好調な決算内容となった米国とは対照的になったが、大歳社長は、「為替の問題や、製造部門の再編という事情を考えれば、米国とはそれほど変わらない結果だと判断している。むしろ、サービス事業の売り上げ拡大という意味では日本が先行している」とした。
サービス事業に関しては、前年に比べて6%増と堅調な伸びを維持。「全社売上高の6割を超えており、米IBMよりも進展している」(大歳社長)とした。
企業の再編によるシステム統合やシステム再構築の案件が多く、トヨタの19カ国25拠点を結んだ生産管理システムや、明治生命および安田生命の合併に伴うシステム統合、東京三菱銀行のエンタープライズアーキテクチャ方式による導入実績などの大型案件が相次いだ。
アウトソーシング事業に関しても、地銀のシステム共同化によるアウトソーシング受注や、eビジネス関連のホスティング事業によって、2桁の成長を遂げる堅調な伸び。とくに、ホスティング事業は、売上高で30%以上の伸びとなった。ここではレガシーシステムからの乗り換えや、システム統合などを背景に受注が増加している。また、AMS(アプリケーション・マネージド・サービス)も、製造、金融分野などを中心に20%以上の売り上げ増となっている。
ソフトウェア事業に関しては、メインフレーム関連が減少し、前年比6%減。だが、ミドルウェア製品に関しては2桁増の高い伸びを見せている。なかでも、Tivoliがオートノミック機能の追加により好調な伸びを見せているほか、eビジネス関連の基盤ソフトとなるWebSphereアプリケーションサーバーがOEMを中心に大幅な伸びを見せたという。また、DB2ではソニーのデジタル家電のデータ制御や、トヨタのグローパル生産管理システムで採用されるなどの大型案件の受注があったという。
ハードウェア部門では、サーバーおよびストレージが前年比5%減のマイナス成長。
メインフレームのzSeriesは、コストパフォーマンスの向上による低価格化の影響で減収。しかし、処理能力換算では50%増の伸びになっているほか、zSeriesで投入したLinux搭載機が好調に推移。Linuxに限定したプロセッサ数は前年比2倍の出荷量になったという。
iSeriesも減収となったものの他社のメインフレームからの置き換えが進展していると評価。UNIXサーバーのpSeriesは2桁の成長、IAサーバーのxSeriesも増収となっている。
pSeriesはハイエンドモデルが好調であるのに加えて、エントリーモデルのpSeries 615も好調な売れ行きとなっている。xSeriesは、低価格のブレードセンターが好調で、IDCの調査によると、この分野では第1四半期から第3四半期までは国内シェアは第一位。オンラインゲーム分野で採用されており、ソニーコミュニケーションネットワークがxSeriesで、セガとコーエーがそれぞれブレードセンターでオンラインゲームのサービスを提供するためのシステムを構築している。
ストレージの売上高は減少しているが、容量は2桁増。他社からのリプレース案件では最大2000万円を値引くという積極的なキャンペーン展開も行っており、これだけで30件以上の案件を獲得したという。
パソコン事業に関しては、プリンタを含めて前年比10%減になった。低価格化の影響を強く受けたのが原因で、ThinkPadの累計2000万台出荷(2003年10月)を増収で飾ることはできなかった。だが、同社独自のピークシフトの機能が評価を受け、東京電力が1万7000台の導入を行うなどの大型案件の実績も出ている。
また、中古パソコンのRefreshed PCにも触れ、「中古パソコンという新たな市場を創出できた」と自己評価した。
大歳社長は、「オープン」、「統合化」、「仮想化」、「オートノミック」の4つがトレンドだと前置きして、オープンではLinuxの積極採用により50%を超える伸び率となったこと、Linuxサーバーで国内トップシェアを獲得したこと、世界最大のLinuxサーバーシステムを納入したことなどを具体的な成果としてあげた。また、グリッドコンピューティングへの積極的な取り組みによって、法政大学や日本総研、関西電力など20件にのぼるグリッドに関する案件を獲得。「グリッドを商用分野でも利用するようになってきた。この動きはますます加速するだろう」とした。オートノミックコンピューティングでは、東芝とブレードサーバーで協業し、人手を介さずに自動的に負荷分散するシステムの提供を開始したことを、昨年の大きな取り組みのひとつにあげた。
パートナービジネスに関しては、SIer向けの製品販売が8割を超える伸び。晴海に開設したeServerコンピテンシー・センター、渋谷に開設したソフトウェア・コンピテンシーセンターは合計で8000人を超える利用となっており、今年5月には大阪にも同様のセンターを開設し、今後もパートナー支援を加速させる考え。
一方、昨年度の大きな成果のひとつだといえるWebや電話を通じたダイレクト販売は、前年比で2桁増の伸びを達成、全社売り上げの1割を占めたという。調査会社の調べによると、オンライン販売ではデルに次いで第2位の規模に達しているという。
2004年の施策としては、オンデマンドが現実になる「オンデマンド・イズ・リアル」の年としたほか、「BTO(ビジネス・トランスフォーメーション・アウトソーシング)元年」と位置づけ、これらへの取り組みを強化する考えを示した。
大歳社長によると、「お客さまと話をすると、多くの経営者がオンデマンド経営を目指した改革をすすめていることがわかる。また、IT業界全体がオンデマンドに類する言葉を使い始めたり、製品やサービスが出始めている。さらに、サーバーやオートノミックに関する製品や技術が標準化するとともに、これを活用し具体的成長を遂げる企業が出てきた。こうした3つの動きを捉えれば、今年はオンデマンドが現実になる年だといえる。今後2-3年で一般化し、5年後には当たり前になるだろう」という。
また、BTOに関しては、「今年が元年だ」とし、「業務プロセスそのものを、全世界のベストプラクティスによって提案し、人事、CRM、購買といった部分に対して、効率的に柔軟なシステムとしてアウトソーシングできるようになっている。三井生命からは、10年間に渡って360億円のアウトソーシングを受注したが、金融の基幹となる次世代ビジネスセンターを、IBMがアウトソーシングで請け負うことで、三井生命は自らのコアビジネスに投資を集中できるようになる。また、この提携では、ユーザーとITベンダーという関係ではなく、企業変革のパートナーとしての合弁会社を設立して取り組む世界でも初めての例になる」とした。
日本IBMでは、今年1月1日付けで、BTO事業部門を社長直轄で設置。「日本IBMにおいて、BTOを新たな成長に柱にしたい」と語っており、BTO分野で他社に先行することで、日本IBMの優位性をさらに発揮したい考えだ。
■ URL
日本アイ・ビー・エム株式会社
http://www.ibm.com/jp/
ニュースリリース
http://www.ibm.com/news/jp/2004/02/02261.html
( 大河原 克行 )
2004/02/26 19:33
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