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日本オラクル、2004年はLinuxとSMB分野に注力


 日本オラクル株式会社は2月27日、米国カリフォルニア州サンディエゴで1月26日から4日間にわたって開催された「Oracle AppsWorld 2004」の報告と、同社の事業戦略に関するセミナーを開催した。


日本オラクル株式会社 代表取締役社長 新宅 正明氏
 同社代表取締役社長の新宅 正明氏は、まず「Oracle 10gを投入する4月を機に、新たな戦略を展開していきたい」と語った。そして「国内ではまだまだメインフレームが数多く存在する。こうした既存環境との統合を視野に入れ、企業や官公庁・自治体でのエンタープライズアーキテクチャを実現するフレームワークとして、10gをベースにした「Oracle Infomation Architecture」を提供していく」と述べた。

 そして「2004年はLinuxに力を入れる。データベースのプラットフォームとして世界では10~15%を占めるほどになってきたが、日本ではまだ5~8%程度。これを10%以上にしたい」と述べ、「Miracleとも協業して中国をはじめアジア地域全体でもLinuxを展開していく」とした。

 また「Oracle Databaseは、マイクロソフトの環境で40数%と相対的にシェアが低い」とし、「今年の注力ポイントのひとつとして、「Standard Edition One」を中心にSMB分野を強化する」と述べた。このほかメンバーパートナーの拡大も行っていく。


日本オラクル株式会社 マーケティング本部 シニアディレクター 清水 照久氏
 同社マーケティング本部 シニアディレクター 清水 照久氏は、「Oracle AppsWorld 2004」の発表内容について改めて詳細を報告した。

 同氏は「これまでは、ビジネスプロセスごとに存在するシステム間で、それぞれのデータを交換・共有するためには、各々を1対1で結び付けねばならなかった」とし、さらに「経営戦略立案のためには、これを集約してデータウェアハウスで分析しなければならない。これにもかなりの工程を要することになる」と述べた。

 続いて米Gartnerが行った企業のIT投資調査を取り上げ、「その80%は保守費用だが、残り20%のうちの6割、全体の12%がシステム間連携のインテグレーションに費やされている」点を挙げた。そして「顧客のかかえる問題として、複数のアプリケーションに分断され、孤立したデータの活用が挙げられる」とし、「経営でのリスクを低減するなど戦略に生かすための必要なインフラとして、指数関数的に増えるこうした情報の質をいかに上げるかに注目し、データソースを一元化することで情報のリアルタイムな把握を可能にするのがOIA」と述べた。


20のシステム間でのデータ交換・共有では、190ものプログラムが必要になる グリッドコンピューティングのインフラを基盤にしたOracle Information Architecture

 同社の「E Business Suite」を利用した場合、「ERPやSCMといったデータトランザクションとデータウェアハウスが同じ層に存在し、マスターデータはひとつのため、「データの鮮度がリアルタイムに保たれ、経営戦略にそのまま使える」という。

 またすでにSiebelのCRMやSAP R/3などを導入している環境向けには、「Webサービスや、Oracle 10g Application Serverの持つプロセスコネクトのファンクションにより、一度データをInterface Repositoryに置きかえる。これによりAPIによらず、インテグレーションの工数を低減するアプリケーション連携を行う仕組みを実現している」という。「これはE Business Suite 11iのメインファンクションといえる」とのこと。

 そして「Customer Data Hub」は、データの参照と更新を行う「Oracle Customer Online」、データのモデリングを行う「Oracle Customer Model」、決まりに従ってデータを整理するクレンジングを行う「Oracle Data Librarian」からなり、「E Business Suite以外のアプリケーションにもデータの鮮度が保てるメリットを提供する」ものとなる。まず提供されるData HubはCustomerの名の通り顧客情報に特化したものだが、「将来的には他分野にも提供する」とのこと。

 最後に「Oracle AppsWorld 2004」について同氏は「今後は「Oracle World」に統合する」ことを発表した。


従来のシステム間連携では、それぞれでデータをマッピングする必要があった E Business Suite 11iでは、アプリケーションが連携するシステム構築が容易になる Customer Data Hubでは、複数アプリケーション間でシームレスな顧客情報の連携が可能になる

日本オラクル株式会社 アドバンスド・ソリューション本部 ディレクター 林 徹氏
 アドバンスド・ソリューション本部 ディレクター 林 徹氏によれば、同社では「1年半先の市場を予測し、市場調査からデモ開発、実験、要件定義、開発といったサイクルで、主にOracle Databaseを基にした新規事業についての展開を絶えず行っている」という。その成果は、「その分野の業務知識がさほどなくとも、アプリケーションの開発が行えるようなテンプレートにまとめている」とのこと。開発期間の短縮にもつながるという。

 2004年には、アドビシステムズと提携した出版業向けのクロスメディアパブリッシングソリューション、パナソニックデジタルネットワークサーブと提携した一般企業向けのWebサイトコンテンツ管理システム、TRON環境向けの「T-Engine for Oracle Lite」、ビットワレットとの協業による電子マネー「edy」の決済インフラなどのほか、以下のさまざまな分野で、新規事業の開発を行っていくとのことだ。


日立のミューチップを用いた宅配便業務でのリアルタイムトレーサビリティシステム。情報登録にはPDAと「Oracle Lite」を用い、地図と組み合わせて荷物の集配状況をリアルタイムで把握できる 企業の基幹システムに、PDAと「Oracle Lite」でアクセスできるシステムをNTTドコモと提携して開発。例えば証券会社では、新商品売り込みの際に顧客情報をセンターのデータベースからダウンロード。結果もPDAから登録できる。「センターからの電話で内容を消去する仕組みで情報漏えいを防止している」 位置情報取得システムは「これまで地図データに多くの金額を要するため進展しなかったが、これが改善された」という。ジャパンエナジーの事例では「ガソリンスタンドの位置情報を端緒に、各店舗のガソリン価格、基幹系と連動して経理や売上、給油の状況などを取得できる」

オンラインゲームでは、「無料のトライアル期間でユーザー数を確保しようとした時、この規模にシステムを合わせると採算が回らない」ため、複数ゲームをグリッドで管理する構想を持っている。また、すでに認証やユーザー情報を格納するデータベースとしての採用例がある 医療の現場では、レントゲンから診断を行う“読影”を行える医師が、部位ごとに限られているという。レントゲンの標準フォーマット「DICOM」の画像と、その診断結果をデータベースを介してネットワークでやり取りするソリューションも開発されている 財務諸表の標準仕様であるXBRLの入出力システム。Oracle Databaseは標準でXMLの入出力に対応しており、データの対応を定義するだけで基幹システムのリレーショナルデータベースからXBRL出力が可能だ


URL
  日本オラクル株式会社
  http://www.oracle.co.jp/


( 岩崎 宰守 )
2004/02/27 18:00

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