日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)の主催にて、2月25日から27日まで開催された「IBM FORUM 2004」。27日には、日本IBMのLinux事業部 事業部長 水橋 久人氏が、「徹底検証!IBMのLinuxの底力 ~オープン・ソース環境の実現からビジネス・トランスフォーメーションまで~」と題して講演を行った。
■ Linuxシェア拡大の意義
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Linux事業部 事業部長 水橋 久人氏
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水橋氏によれば、Linuxは「2000年くらいまではちょっと使ってみようかなという段階」だったものが、今では「オンラインゲーム、役所の庁内ネットワークなどでも使われるようになった。IBMでもWebサーバーの大部分にLinuxが使われるようになっている」という。当初はそれこそファイルサーバーなど、影響の少ないところだけで使われ始めていたLinuxだが、現在は非常に身近なところでも見られるようになってきた。それでもまだWindowsベースのサーバーが圧倒的に多くはあるが、Linuxの伸長は今も続いており、今年は出荷台数ベースでついにUNIXサーバーを超えるという「非常に大きな意味のある」予測がなされている。
この、LinuxがUNIXを超えることがなぜ意味のあることなのか。それは、メーカー側はシェアの大きいところに対応させようという動きをするので、「今までHP-UXやSolarisをサポートしてきたメーカーが、Linuxもサポート対象に含めようとする」(水橋氏)からである。現に、水橋氏は週に1度くらいのペースで、ISVなどからLinux対応についての相談を受けるという。「UNIXからLinuxへの移行に関しては、ある程度容易にできるし、Linuxが伸びてきている動向から、ビジネスとしても悪くはないことだと思う」(同氏)。水橋氏はこれについて米国の例をあげ、Linuxへ移植されるソフトは、もともとソフト数が多く存在するWindowsからの移植の次に、UNIXからの移植が多くなってきているというデータを示した。
「Linuxだけが動くというのでは実際の業務に使えない。ERPパッケージ、メールのシステム、会計ソフト、といったビジネスアプリケーションのサポートが進むにつれ、使える状態になる。現状ではUNIXベースで使われていたものがLinuxにも対応するようになってきた。今後もLinuxサーバーが増えるいうことなら、それに引きずられてサポートされるパッケージも増えるだろう」(水橋氏)。
■ Linuxのメリットと、日本の取り組み
では、Linuxのメリットは何だろうか。「一般的には、コスト削減のためにLinuxを採用するという話が多い」と水橋氏。しかしそれだけではなく、性能、信頼性、スケーラビリティの面でもメリットが多いという点を水橋氏は強調する。セキュリティ維持はWindowsほど大変ではないし、安定性の面では2、3年間ノーダウンで使っているユーザーもあるというのだ。それから国家レベルでも、特定の国の、特定の会社の、特定の製品に頼ることは安全保障上好ましくないため、Linuxを含めたオープンソースを使うようになってきた。こうしたさまざまな理由で、Linuxの採用は進んでいる。
こうした中、日本でもオープンソースへの取り組みが行われており、水橋氏によれば「経済産業省ではデスクトップLinuxの検証、総務省ではセキュアOS研究会の報告が行われていて、ともに3月くらいにはその結果が出る」とのことで、こうした「自治体のオープンソース採用のガイドラインとなるようなもの」が出てくれば、採用が加速すると水橋氏は見ている。またOSDLジャパンでは、電子政府に必要な機能を洗い出して、LINUXがインプリメントできているかどうかという調査を行ったが、今のところ必要とされる機能、アプリケーションはすべてカバーできているという結果が出ているという。
「このような話を聞くと、Linuxですべてできてしまうのではないかと思われるかもしれないが、適材適所という物がある。Linuxを無理に全分野に使って失敗してしまい、ネガティブなイメージが広がってしまうと困る」と水橋氏は続ける。「銀行の勘定系など膨大なトランザクションがあるところを、今すぐLinuxに置き換える」ことではなく、より向いたところへの導入、たとえばエッジサーバーと呼ばれるネットワークの入り口部分へのブレードサーバーの導入、たくさんある部門サーバーを管理しやすい形で統合すること、複雑な計算が必要な環境にIAベースのクラスタを導入する、などに効果を発揮するとした。
■ Linux資産の充実が日本IBMの強み
米IBMでは1998年からLinuxへの対応をはじめているが、日本でも2000年にLinuxサポート・センターを開設。さらに2003年には、大型施設であるLinuxコンピテンシーセンターを日本IBMの箱崎事業所内にオープンさせた。この施設は、ユーザーからの、本当に今使っているデータベース、パッケージの組み合わせがLinuxで動くのかを見せて欲しい、という要望が増えたために設立されたという。
製品では、eServerシリーズのラインアップ、IAサーバーのxSeriesから、メインフレームのzSeriesまでのすべてがLinuxに対応。またハードだけでなく、WebSphere、DB2、Tivoli、Lotusの主要ミドルウェア4製品のLinux版、それを支えるサービス、ツールの提供など、日本IBMによるLinuxへの取り組みは幅広い。これらの開発などに、IBMはワールドワイドで「すでに13億ドルを投資している」(水橋氏)。
しかし、Linuxはオープンソースであるため、通常のビジネスと同じように展開するだけではやっていけない。こうしたLinuxのビジネスの特徴として、水橋氏は「オープンソースコミュニティの回りでビジネスをさせてもらっていること」をあげた。コミュニティを尊重したオペレーションが大事になるため、IBMは「OSDN、OADG、OSDLなど多くの団体にメンバー送り、連携してビジネスを行っている」(同氏)。さらにIBMでは、世界中に600人のメンバーがいるLinux Technology Centerを設け、共同でサポートを提供しているとも述べた。「実際にカーネル上のトラブルが起きたとき、当社ではFixを作って対処をするが、そのフィードバックをコミュニティやディストリビュータへ行う。コードを見てバグフィクスなどの対処をすることをレベル3のサポートと当社では呼んでいるが、これはWebSphereやDB2と同じ体制だ」と水橋氏は、IBMのLinuxへの取り組みが深いものであるということを強調した。
最後に水橋氏は、「(ある程度の)ミッションクリティカルな部分も含めてLinuxの導入は進み、事例も増えた。日本も含め、Linuxを使ったシステムはもう無視できないところへきている。こうした中、幅広いラインアップをもっているIBMでは、今後もLinuxビジネスをすすめ、事例を提供し、Linuxには問題はないではないか、という雰囲気を伝えていく」と述べ、講演を締めくくった。
■ URL
日本アイ・ビー・エム株式会社
http://www.ibm.com/jp/
IBM FORUM 2004
http://www-6.ibm.com/jp/event/forum2004/
( 石井 一志 )
2004/02/27 18:07
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