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日本IBM高野氏、「グリッドはビジネスニーズを解決する“解”」

~IBM FORUM 2004 講演

理事 基礎研究&エマージングビジネス グリッド・ビジネス事業部 グリッド・ビジネス事業部長 高野 孝之氏
 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)の主催にて、2月25日から27日まで開催された「IBM FORUM 2004」。27日には、日本IBMの理事 基礎研究&エマージングビジネス グリッド・ビジネス事業部 グリッド・ビジネス事業部長 高野 孝之氏が、「納得!グリッド・コンピューティングがもたらすビジネス変革」と題して講演を行った。

 高野氏によれば、グリッドコンピューティングとは「物理的に分散された全世界的な規模のCPU、ストレージ、アプリケーションといったPCリソースを、1つのミドルウェアをかませることにより、あたかも1台のコンピュータであるかのように扱うもの」だという。「もともとこのテクノロジは、科学技術分野で生まれ、育ったもの。より多くの計算資源を必要とする分野であるので、グリッドはインターネット上で仮想コンピュータを作る技術として発展してきた。身近な例では、ゲノムやタンパクの構造解析などがある。そしてその流れの延長線上に、これをビジネス分野でどうやって応用していくかということが、プロジェクトとして立ち上がってきた」(同氏)。

 「現在ビジネス分野におけるニーズからオペレーション環境を見るときには、異機種対応、分散、複雑さへの対応といった課題がある」と高野氏は述べる。そしてこれらを解決する“解”として、グリッドコンピューティングが注目されてきたのだというのだ。また高野氏は、グリッドコンピューティングが加速的に普及してきた背景として「高速で安価なネットワーク設備、業界標準のOGSA(Open Grid Service Architecture)やLinuxといったオープンなテクノロジの浸透、動的にリソースをプロビジョニングするミドルウェアが提供されてきたこと」の3つをあげた。


IBMの試みと、グリッドのメリット

 では、IBMはどういう試みをしてきたのだろうか。「2002年にIBMはグリッドの標準化団体であるGGF(Global Grid Forum)に対しOGSAを提唱し、以降はそれが標準仕様としてグリッドコンピューティングに欠かせないものになった。また2004年1月には、ベースとなる仕様をWebサービスのテクノロジで統合していくということをGGFに提言している。また、オープンソースコミュニティであるGlobusのツールキットに積極的に取り組み、Linux、UNIXにバンドルして出荷をすすめている。こうした業界としての標準化の取り組みを行っている」と解説する。

 OGSAとは、「あらゆるIP資源を、組織を超えて分散的に扱うための標準仕様」だが、IBMの製品はすべてOGSAに対応していくという。また、世界の主要ベンダ・ISVもOGSA対応のものをいろいろな形で検討しており、今後とも普及が進むだろう、とも述べた。

 続いて高野氏はグリッドのメリットに触れ、「いろいろな処理・ITリソースの最適化、処理そのものの高速化、回復性・高可用性の提供、新しいビジネスモデルの構築、企業間コラボレーションによる新たな価値の創造」の5つをあげた。そして、これらのメリットを生かし、大学など研究機関における研究開発、製造業におけるエンジニアリング、金融機関などのビジネス分析、ビジネスの全体最適化、政府・行政の5分野で取り組みが行われていると述べた。

 そして高野氏は、これらのグリッドのテクノロジをどうビジネスに変えるかという検討が進んでいる中、日本IBMがどう支援できるかということを説明した。「当社では、大学研究機関や国家での多くの実績から、ノウハウを学んできた。また、ビジネスパートナーとの連携により幅広いソリューションを提供している」(同氏)。そして最後に、「当社では商用グリッドについて、明確なビジョンとコミットメントがある。それは、グリッドコンピューティングの標準化を積極的に働きかけ、標準の仕様というものを市場で推進していくことだ」と述べ、講演を締めくくった。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  IBM FORUM 2004
  http://www-6.ibm.com/jp/event/forum2004/


( 石井 一志 )
2004/03/01 00:00

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