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BCIジャパン篠原氏「危機発生時の対応で企業の本質が問われる」

~事故前提社会における企業のBCMセミナー

 株式会社アズジェント、株式会社インターリスク総研、三機工業株式会社、日本ヒューレット・パッカード株式会社、BTジャパン株式会社、米ストロール、英セバーンの7社は、Business Continuity Institute(BCI)ジャパンアライアンスを設立。最初の活動として、三井住友海上火災保険株式会社との共催でBusiness Continuity Management(BCM:事業継続管理)セミナー「事故前提社会における企業のBCM(事業継続管理)~日本型BCMを提言する~」を3月9日に開催した。


企業における事業継続計画の必要性

BCI日本支部代表、株式会社インターリスク総研 上席コンサルタント 篠原 雅道氏

事業継続計画により、事故発生の悪循環を断ち切る
 BCI日本支部代表、株式会社インターリスク総研 上席コンサルタント 篠原 雅道氏は、「BCM(事業継続管理)の構築について~日本型BCMの考察~」をテーマに講演した。

 同氏は、まずBCIについて説明。BCMにおけるガイドライン策定などを目的に1994年イギリスで設立され、「世界42カ国、1,500人の会員を持つ会員制組織」と述べた。アジアでは香港、シンガポール、タイに拠点があったものの、これまで国内にはなく、2003年12月にインターリスク総研が日本支部として認定を受けたことを契機に、BCMジャパンアライアンスが設立された。その活動としては「企業や官公庁、大学などの研究機関へ、BCMに関する情報発信や規格化、標準化を行っている」という。

 そして同氏は、イギリスで行われたBCMに関する調査結果を発表した。これによると事業継続計画を導入している企業は全体の47%。売上20億円以上の企業では69%となっており、その内容は「通信、ITの能力喪失がともに60%を超えている」という。以下には災害や事業拠点の喪失が続く。また「計画が実際に機能するかを評価検証している企業は全体の1/3」とのこと。同氏はこれについて「国内の感覚では高いと感じられるかもしれないが、ヨーロッパの感覚では低い」とした。

 同氏は、事故発生を前提とした事業継続計画の必要性について、国内で起こった工場の火災事故を例を語った。このとき「事故を起こした企業では、事故後4日で他工場への生産振り替えによる事業再開を公表した。にもかかわらず結局生産再開を断念した」ことを述べた。そして「企業には社会に対して製品を供給する責任がある」とし、「いち早く業務を再開させることが競争で有利に働く」と語った。そしてもし、「事業の継続や拡大が困難になれば、利益率は、企業価値が低下していく。これは企業が倒産しかねない風評リスクや製品ブランド力の低下につながる」と述べた。

 同氏は「危機発生時に、いかなる対応を行うかで企業の本質が問われる」と述べ、「BCMは、こうした悪循環を断ち切るマネジメント手法」とした。


緊急度の最も高い業務を最優先に再開

リスクの発生要因は、災害だけでなく関連企業からも考えられる
 BCMについて同氏は、「事業のコアとなる業務を、目標とされた時間内に再開できるよう計画準備すること」と定義。「企業の財務状態を第一に、ブランドイメージ、シェア喪失、顧客との関係悪化なども考慮して、失えば企業の存続にかかわる、緊急度の最も高い業務を最優先に再開させるのが根底の考え方」とした。

 「国内では復旧とひとくくりにされがちだが」としながら、事故発生後の対応には「やみくもに仮説拠点に人や設備を移すのでなく、あらかじめ有効復旧できるよう事業内容を緊急性に応じて管理する必要がある」とし、早期再開が必要な業務のみを仮設の事務所などで再開したあと、すべての業務を再開し、その後もとの場所に戻る時系列に沿った復旧時の対策を含めた計画が必要になる」と語った。

 そして「自社の機能停止だけでなく、原材料メーカーや電力などのユーティリティ供給、物流など、関連会社の中断も影響を及ぼすことを念頭に、状況に応じて計画策定を行うべき」と語った。また事故発生のシナリオとして、「その要因が自然災害なのか、人為的、技術的なものかで対応も変わる」とした。そして「特に日本型BCMでは、地震やITリスクが中心になるだろう」との見解を示した。

 実際の計画策定にあたっては、「重要な業務継続のボトルネックとなる、キーパーソンや物流、金銭やシステム・データを特定し、それぞれに優先順位をつける「ビジネスインパクト分析」を行う」とした。また「目標復旧時間は短いに越したことはない。すべてのラインを二重化するなど、その場合にはコストを要する」とし、「分析に基づいて、事業内容から停止を許容できる時間を
見合った計画を策定すべき」とした。

 そしてこの分析結果により「リスクに対する弱点を分析できることで、被災の可能性を低減する予防の観点からの計画を策定できる」とし、さらに「策定した計画による訓練や教育を行うことで、迅速な実施が可能になる。さらに問題点を改善していくことも重要だ」とした。そしてこの計画については、「さまざまな観点から複合的に策定する必要があるため、業態業種ごとに違うものになるだろう」と語った。



URL
  事故前提社会における企業のBCMセミナー
  http://www.irric.co.jp/event/


( 岩崎 宰守 )
2004/03/10 00:00

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