Enterprise Watch
最新ニュース

経産省吉村氏「日本型リスクマネジメントの限界を認識すべき」

~事故前提社会における企業のBCMセミナー

 BCIジャパンアライアンスと三井住友海上火災保険株式会社により3月9日に開催された、BCMセミナー「事故前提社会における企業のBCM(事業継続管理)~日本型BCMを提言する~」において、経済産業省 産業技術環境局 管理システム標準化推進室長の吉村 宇一郎 氏が、「JIS Q2001とBCM そして今後の展開」をテーマに講演を行った。


日本型リスクマネジメントを取り巻く動き

経済産業省 産業技術環境局 管理システム標準化推進室 室長 吉村 宇一郎 氏
 同氏はまず、これまでの日本型リスクマネジメントを「何か起こったら誰かがやってくれるとの考え方が先に立つ、事件事故の発生を受けた場当たり的な事後対応が中心で、対応部署や優先順位も不明確だった」とし、「企業を取り巻く環境は、こうした対応を許容するものではなくなっている」と述べ、「日本型対応の限界を認識し、環境変化のスピードに対応できるよう仕組みを変える必要がある」と語った。そして「対応していることが、外から見てもわかるようにすることが重要」とした。

 同氏は「投資や自然災害などの多様なリスクに対して、不確定を前提としながらも、統計的に影響の度合いを管理、測定する技術が進歩し、判断技術が確立した」と述べ、「経営者は、マネジメント技術と危機管理技術の違いを理解するべき」とした。そして「対応の目的を考えるにあたって、優先順位を付けていけば、必然的に切り捨てる部分が出てくる」ことに触れ、「社会にも、緊急事態なら積極的に切り捨てることも促す雰囲気も出てきた」と語った。

 マネジメントシステム構築では「担当の能力・適正に依存せず、一定以上のレベルを保持できる」ようにする。「これを逆に言えば多少の非効率は受容する」ということになる。このほか必要なこととして、発生後の緊急対応と復旧までの危機管理との違い、リスクの大きさによる担当部署と全社対応の実施体制の使い分け、リスク変動への常時評価、把握を挙げた。


リスクマネジメントシステム規格「JIS

JIS Q2001の概念図
 同氏はJIS Q2001規格策定までの経緯を述べた。きっかけは1995年の阪神淡路大震災だったという。これを受け「ひとつの危機管理スタンダードを作るべきとの声があった」ことから、2001年に現在のJIS Q2001が策定された。

 JIS Q2001は、ISO 14001の構成と整合性がとられており、22のリスクに関する用語が定義されている。そして「第3者による認証、審査登録は目的としていない」という。

 概念としては「実際のリスクから、事業への影響と対応を把握して、リスク対応方針から計画策定、実施、そしてパフォーマンスや有効性を評価する、Plan、Do、Check、Actionのサイクルからなる」とした。

 このほかJIS規格には、個人情報、情報技術のほか、苦情対応、製品品質、機械類、医療の各種リスクマネジメント規格が存在する。こうしたなかBCMについては「危機管理、復旧の計画策定に使われるツールとして位置付けられる」と述べた。

 リスクマネジメントシステムの今後について同氏は、「規格は世界各国が独自に策定しているが、国際規格であるISOには存在しない」とし、テロ対策で国際的にも注目されたことから「オーストラリアから提案される動きがある」という。JIS Q2001規格については、「JIS規格は5年で見直す規定になっており、2年後には国際的な動きを受けた改定もあり得る」とした。



URL
  事故前提社会における企業のBCMセミナー
  http://www.irric.co.jp/event/
  経済産業省
  http://www.meti.go.jp/


( 岩崎 宰守 )
2004/03/10 19:33

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.