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「ITのユーティリティ化でパッケージソフトはなくなる」と、サンブリッジ マイナー社長が大胆予想

次世代のIT戦略を考える ビジョナリーセッション

 3月10日に開催された「CNET Japanフォーラム 次世代のIT戦略を考える」(主催:シーネットネットワークスジャパン株式会社)において、株式会社サンブリッジ代表取締役社長のアレン・マイナー氏が「ユーティリティモデルの成功と課題」と題した講演を行い、米salesforce.comを例にITのユーティリティ化についての将来性を語った。


株式会社サンブリッジ代表取締役社長 アレン・マイナー氏
 ITを電気や水道のようにいつでも手軽に利用でき、大きな初期投資を必要とせず使った分だけ料金を払えばいい「ユーティリティコンピューティング」が、次世代のITインフラとして注目を浴びている。マイナー氏によると、現状ではまだ研究段階といわれるユーティリティモデルを、企業が業務に利用できるサービスとしていち早く提供を始め、同氏も投資家としてかかわった「salesforce.com」が、1999年の設立以来、現在までに9,000社、130,000ユーザーを集め成長を続けているという。

 同社は今日の企業経営で必須とされる、基幹業務やデータベースなどさまざまなアプリケーションを動かすサーバーなどのコンピューティング環境を、従量課金制で提供している。現在ではこのコンピューティング環境をユーザーがほぼ無制限にカスタマイズができ、自前のアプリケーションを導入したり、XMLを用いてほかのシステムと連携させることも可能だ。「例えば最近の乗り物として有名なSegwayは、販売をamazonで行っているがユーザー登録の処理をsalesforce.com内で行っており、顧客管理はOracleのデータベースを使っている」(マイナー氏)。

 ユーティリティモデルの大きなメリットは、従来に比べて非常に短期間で初期投資をほとんど必要なく信頼性の高いシステムを導入できる点だ。マイナー氏が「必要ならば今日中にユーザーが望むシステムをすぐ用意できるという、まさにオンデマンドを実現している」と語るように、システム導入の敷居が従来に比べて非常に低くなる。これにより中小規模の企業から、従来はSAPやオラクルを選択していたと思われる大企業まで利用が進んでいるとのことだ。マイナー氏は「今後salesforce.comのようなユーティリティサービスが浸透していくと、やがてERPやデータベースのパッケージソフトを利用するユーザーはいなくなるだろう」と、ソフトウェアの利用モデルが変化していくことを予想している。


salesforce.comが提供するサービスとユーザーのメリット salesforce.comを利用することでユーザーができること

 このようなユーティリティモデルを顧客に提供するためには、信頼性の高いミッションクリティカルな環境を用意しなければならず、高価で複雑なアーキテクチャの設備が必要となる。またその一方で、ユーザーに対しては手軽に利用できる環境を用意しなければならない。マイナー氏は「電気を供給する原子力発電所がどのような仕組みなのかをユーザーが意識する必要がないのと同じ。salesforce.comのユーザーインターフェイスは、Yahoo!が提供する“My Yahoo!”のように非常に単純で、自由なカスタマイズが可能」と説明する。


salesforce.comのこれまで
 同社はこのビジネスモデルを実現するために、設立時に約50億円の資金調達を行い、2001年には自社のみで資金繰りが可能となり、2003年には黒字化を達成したという。マイナー氏は「日本はどんなにすばらしいビジネスモデルがあっても資金の調達が困難」とベンチャーが育たない日本の課題を指摘する。さらに「salesforce.comのようなビジネスを立ち上げるには膨大な資金が必要となるが、日本でも今後ITのユーティリティ化が進むことは間違いない」とした上で、「日本でsalesforce.comのようなビジネスはまだ本格的に立ち上がっていない。ぜひ日本生まれのユーティリティモデルビジネスに私も携わりたい」と述べ、講演を締めくくった。



URL
  salesforce.com
  http://www.salesforce.com/


( 朝夷 剛士 )
2004/03/11 11:12

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