都内ホテルにて3月10日に開催されたイベント「CNET Japanフォーラム 次世代のIT戦略を考える~Linux、Webサービス、ユーティリティコンピューティング テクノロジーの限界と可能性」で、ガートナー ジャパン株式会社 エンタープライズ・インフラストラクチャ担当 主席アナリストの亦賀 忠明氏が「複雑化しすぎたオープンアーキテクチャ これからの方向性」と題するアナリストセッションを行った。
■ 技術主導から企業経営の視点に立った課題解決型のITへ
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ガートナー ジャパン株式会社 エンタープライズ・インフラストラクチャ担当 主席アナリスト 亦賀 忠明氏
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同氏はITの課題として「各ベンダーでも模索しているが、いま複雑性を解決する究極の答えはない」とし、「現在はインテグレーションでこれを解消している」とした。そうした現場では、「過度な属人化、労働集約によるシステム構築のスタイルが、この何十年変わっていない。またコスト圧力により単価も落ちていることも課題になっている」と述べた。そして「複雑さを現場で解消するのも限界になりつつある」との考えを述べた。
IT技術の複雑化が進み、ガートナーにも「個々の要素技術についての質問も多い」という。しかし同氏は「いま議論すべきなのは、ITによりどんな課題を解決できるか」と述べ、「企業経営の視点に立ち、テクノロジー主導ではなく課題解決の観点で考えることが重要」と語った。そして「これまでは知識習得に追われて、こうしたことを考えるゆとりがなかった。米国の動きを待つだけでなく、国内から次の方向性を考えるステージに来ている」とした。
もうひとつの課題として同氏が象徴的に挙げたのが“IT Does not Matter”。本来革新の産業であったはずのITでも、保守化が進みつつあることを示す言葉といえる。しかし同氏は「ITを単なるツールでなく、経営の武器として活用しているユーザーがいることを認識すべき」とした。
■ 統合スタックによる高付加価値サービスが問われる時代に
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ベンダー各社の掲げるインフラストラクチャ
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ポスト・オープン時代にはサービスの「量×質×スピード」が問われる
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オープンソースソフトウェア(OSS)の産業モデルも進展しつつあるなか、同氏はベンダーのなかでもIBMに注目しているという。「IBMは、この10年間のWintel支配の流れを変えるべく、OSSを戦略サイクルに取り込み、コミュニティとも共生関係を築いている」と述べ、「ビジネスモデルとしては、パワーユーザーでないと実装が難しいOSSを、完成品として製品提供している」とした。
一方で同氏は、複雑化したオープンアーキテクチャについて「最適化や管理、制御が限界に来ている」と述べ、「各社ともにインフラストラクチャとして掲げるアプローチが、現場ではなくベンダーの側で、ある程度完成したスタックを提供するモデルになっている」とした。
こうしたアプローチは、「各パートのテクノロジーでなく、上位の課題を解決するインフラとして提供されている」とした同氏は、「今後ベンダー間の競争は統合されたスタック全体の提供に移るだろう」と語った。
そして同氏は「マイクロソフトのWindows Server Systemも、こうした統合化へのアプローチのひとつ」との見方を示し、「今年中の提供が予定される“Yukon”など、まだ未完成の部分はあるが、今後は一体型システムのサプライヤーとしてフレームワークの連携を強めていくだろう」とした。
こうした動きのなか、ポスト・オープンの時代となる今後10年について同氏は、「サービス指向アーキテクチャ(SOA)によるグリッドやWebサービスといった技術は、分けて考えるべきではなく同じベクトルのもの」とし、「こうした技術を基盤に、アプリケーションを組み合わせて提供されるサービスの付加価値と、その開発コストの低減が問われる時代になる」と述べた。
■ URL
CNET Japanフォーラム 次世代のIT戦略を考える
http://japan.cnet.com/info/forum3/
ガートナー ジャパン株式会社
http://www.gartner.co.jp/
( 岩崎 宰守 )
2004/03/11 10:15
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