日本シーベル株式会社は3月12日、金融業界でのCRM事例を紹介するイベント「Siebel Financial Summit Tokyo 2004」を開催し、米Siebel Systems, Inc.が、国内企業18社を含むアジア太平洋地域のリテールバンク(個人金融)のうち、総資産での上位100社を対象に行った顧客サービス実態調査結果を発表した。
調査は同社から委託された第3者機関によって行われた。調査員が見込み客を装ってやり取りする手法で、電話、メールの各チャネルを通じ、クレジットカードや定期預金に関する問い合わせが行われた。
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米Siebel Systems,Inc.アジア太平洋地域担当 カスタマーストラテジー・ディレクター ダン・ボグナー氏
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取材に応じた同社アジア太平洋地域担当 カスタマーストラテジー・ディレクター ダン・ボグナー氏は、「ITにより、リード(商機)を管理して、他の部署にも情報を提供、顧客に対して商談機会へのフォローアップが行える体制を作り、各チャネルからの顧客情報を一貫して管理することが、売上増につながる」とし「これは金融に限らず、例えば通信などの他業界でも同様だろう」と述べた。
電話やメールの問い合わせは、通常コンタクトセンターで処理されることが多い。こうしたセンターでも顧客情報を共有するほか、問い合わせを受けて能動的に商品情報を提供し、リードにつなげるていく、アウトソーシングでの運営、離職率の高さなどがネックとなる。しかし「それは顧客には見えない部分であり、店頭と同様のサービスレベルを維持することは必須になるだろう」と述べた。
調査結果からは、依然多くの国内企業で問い合わせを商談機会として認識していないことが伺えるという。まず電話による問い合わせへの対応では、「国内企業の88%が顧客の連絡先についての質問を行っていた」と述べ「これは地域全体の47%と比べて高い数字」だという。しかし「99%のケースで電話とメールの問い合わせが個別に処理されていた」と問題点を指摘した。
年齢や年収、配偶者の有無といった顧客情報を積極的に把握しようとした企業はゼロで、顧客ニーズを受けての商品提案が行われていないことも指摘。「ITにより自動化することが可能な」関連商品のクロスセルの試みについても71%の企業で行われていなかった。こうしたことから「ITの導入される余地も大きいだろう」との見方を示した。
メールでの問い合わせは、「一方向のため電話よりは重要度が低い」としながらも、「重要な商談機会であることに変わりはない」という。60%の企業で2日以内に返信が行われているものの、「テンプレートでの返信や、質問内容には答えず店頭や電話での問い合わせを勧めるだけの例も多かった」とした。また「40%の企業では、既存顧客のみしかメール問い合わせが行えなかった」ことにも触れた。
同氏はリテールバンクの現状について「M&Aなどグローバルでの競争激化により、価格面で大きな圧力がかかっている」とし、「サービス面での差別化をセールスにつなげる方策を採るべきだ」と述べた。
同氏は、特に日本では「個人情報の取り扱いなど、プライバシーに対する意識は、アジアのなかでも高い」としながらも、「CRMのソリューションでは、顧客情報を一元化することでニーズに即した価値を提供することが基本。そうした意味ではアウトバウンドとインバウンドの情報のバランスが重要になる」と語った。
■ URL
日本シーベル株式会社
http://www.siebel.com/jp/
Siebel Financial Summit Tokyo 2004
http://www.siebel.com/jp/events/reg_financial.shtm
( 岩崎 宰守 )
2004/03/11 12:08
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