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ガートナー・シュルテVP、「アプリケーション統合を成功させる3つのポイント」

アプリケーション統合&Webサービス 2004 基調講演

ガートナー バイスプレジデント兼ディスティングイッシュトアナリストのロイ・シュルテ氏
 ガートナージャパン株式会社主催の「アプリケーション統合&Webサービス 2004」が3月16・17日に開催されている。16日にはガートナー バイスプレジデント兼ディスティングイッシュトアナリストのロイ・シュルテ氏による「アプリケーション統合シナリオ」と題した基調講演が行われた。

 シュルテ氏はまず、「これまではERPやCRM、HRといったアプリケーション間をファイル転送やODBCでつなぐというアプリケーションを中心とした統合が行われていた。今後は、ESB(エンタープライズ・サービス・バス)などのインテグレーションレイヤを中核としたアプリケーション統合が主流になる」と指摘した。そして、「アプリケーション統合の設計者とISマネージャは、統合というものは従来型のアプリケーションシステムへの組み込みではなく、より広い意味を持つ新しいロジックであることを認識すべきだ」と述べた。


検討課題と実現手法を把握することが重要

 シュルテ氏は、企業がアプリケーション統合を実現するための検討事項として、課題を理解することと、実現するための手法を理解することが成功の要件とした。

 まず、アプリケーション統合の検討課題について、シュルテ氏は3つを挙げた。1つはデータの一貫性がとられているか。「複数のデータベースにデータが残っていては統合できているとはいえない」と指摘する。2つめはマルチステップ・プロセスを実現すること。シュルテ氏は、「アプリケーション間でイベントが正しく伝達でき、それぞれのシステムが論理的に依存関係が結ばれる必要がある」と説明する。3つめは、コンポジット・アプリケーション。「特にリアルタイムに処理が行われる場合、相互依存性が強くなる」ため重要な事項だ。

 このうち、ベンダーはコンポジット・アプリケーションだけに注目してアプリケーション統合を行おうとする点に触れ、「コンポジット・アプリケーションは非常に重要な課題ではあるが、他の2つも重要だ。データの一貫性がとれないままにコンポジット・アプリケーションを実現しても意味がないことは理解していただけるだろう」と、それぞれを理解したうえでの対処が必要であるとした。


「戦略・技術・マネジメント」の3つの視点で検討を

 では、アプリケーション統合を行うには、どのような対処法があるのだろうか。シュルテ氏は、「戦略・技術・マネジメント」の3つの視点で検討することが重要であるとした。

 まず、どういう方法でアプリケーション統合を行うかという戦略的な視点が必要になる。「シンプルな方法では、アプリケーションの全面刷新という方法が考えられる。これは特定のベンダーが提供するアプリケーション一式を導入することで、一貫性のあるシステムを構築するというものだ。これはデータの一貫性という点では非常に理想的ではあるが、実現性は非常に乏しい。というのも、必ずしも新規導入されたアプリケーションですべての業務が行えるとは限らないからだ。結果、特定部門のために既存のアプリケーションを利用できるようカスタマイズしなければいけなくなる。アプリケーション統合という問題が残るということだ」と、全面刷新の問題点を述べた。

 それ以外の方法は、「ラッピングとリエンジニアリングという戦略がある。これはサービス志向アーキテクチャ(SOA)に基づいたもの。共通のミドルウェアをバックボーンとして持つことで、各アプリケーションをゆるやかに統合することができる。しかし、これにも問題点はある。それはデータがレガシーアプリケーションに残るため、データの冗長性が発生したり、別途同期をとる必要が生じたりするおそれがある点だ。また、技術的な互換性の問題が発生することで、別途ゲートウェイが必要になることも考えられる」と現状の選択肢としては最適といえるが、すべての問題点を解決するわけではないと述べた。

 シュルテ氏は、これらを踏まえ、「アプリケーション統合の戦略を立てるときは、特定の方法に縛られることなく、必要に応じて特定の部門のアプリケーションを全面刷新したり、ある部分ではラッピングを行うなど、組み合わせて実施するのがよい」と述べた。

 技術の視点でみると、アプリケーション統合テクノロジーのハイプサイクルを理解することが重要とした。「多くのテクノロジーは、いくつかの段階をたどっている。まずテクノロジーの黎明期に一部の人の注目を集め、それが次第に認知され、そして過度の期待を込めて見られるようになっていく。しかし、そのテクノロジーに対して抱いていた期待が裏切られ、幻滅される時期に入っていく。そして、正しい使い方が認知される過程を経て安定期に入る。このハイプサイクルを見極めることが大切だ」と、実質的なメリットをもたらす技術の見極めが重要であることを強調した。

 その例として紹介したのがESBだ。ESBは、基盤ネットワークとインテグレーションエンジンの間に入るもの。ESB関連製品はIBMが2005年に出荷を発表したり、Microsoftがコードネーム「Indigo」により製品化しようとしている。

 マネジメントの視点については、「企業がアプリケーション統合に対してどのような考えを持つかが成功させるためのポイント」と、アプリケーション統合を実現するためにはマネジメントが重要であると強調した。「統合コンピテンシセンターを設置し、作成・管理から教育までを行う責任あるグループの有無が成功の鍵をにぎる」とした。


 最後に同氏は、「アプリケーション統合を実現するために大切なのは、冗長性・不統一を排除するのではなく、受け入れた上で対処方法を検討すること。統合で使える戦略のすべてを使うこと。組織内に中心となるグループを設置し実行すること」が、企業でのアプリケーション統合を成功させるためのポイントであると述べ、講演を終えた。



URL
  ガートナージャパン株式会社
  http://www.gartner.co.jp/
  アプリケーション統合&Webサービス2004
  http://www.gartner.co.jp/event/ai/index.html


( 福浦 一広 )
2004/03/16 19:16

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