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ガートナー飯島氏、「アプリケーションサーバーはスイート製品での競争に」

~アプリケーション統合&Webサービス 2004 基調講演

リサーチディレクターの飯島公彦氏
 ガートナージャパン株式会社主催の「アプリケーション統合&Webサービス 2004」が3月16・17日に開催された。17日にはガートナー リサーチディレクターの飯島公彦氏による「アプリケーション・プラットフォーム・シナリオ:戦いは、APサーバーからスイートへ」と題した基調講演が行われた。

 飯島氏はまず、アプリケーションプラットフォーム市場のトピックとして、「従来プラットフォームを提供していないベンダーが参入し始めている。たとえば、SAPはNetWeaverを投入したり、Red HatなどもLinuxだけではなくオープンソースでこの市場に参入しようとしている」と述べ、競争が激しくなりつつあることに触れた。「これまでのように単一レイヤだけで競争に勝ち抜くことはむずかしくなった」と、各社がそれぞれの得意分野から統合プラットフォームにシフトしていると説明した。そして、「アプリケーションサーバー単独ではなく、ポータルやインテグレーションブローカ、およびシステム運用・開発などの環境をひとつにしたアプリケーションプラットフォームスイート(以下、APS)が主流となる」と単体からスイートでの競争に移行しつつあると述べた。


ミッションクリティカル領域での利用に注目が集まる

 企業におけるアプリケーションサーバーの利用状況について、飯島氏は「企業においてJavaを使うのは当たり前になっている。そして、Javaをミッションクリティカル領域で積極的に使おうという動きが昨年あたりから顕著になってきた」と、J2EEがハイエンドの領域で利用され始めていることを紹介した。「特にメインフレームを使っている企業が、基幹系業務で使おうという流れが起きている」と、ハイエンドでの利用を想定した動きが活発になりつつあると説明した。

 これに応じて、ベンダーもエンタープライズでの利用に耐えうる品質をアピールすべく、QOSを差別化要素とした動きが活発になっている。これが、ベンダーのオープン系への移植促進にもつながっていると飯島氏は指摘している。しかし、こうした動きによって、J2EEの特徴でもある標準化がずれていることに触れ、「オープン系といっても、ベンダー独自拡張部分が広がっており、J2EEだからといって相互運用性が必ずしも保証されていない点に注意が必要だ」と述べた。

 こうした流れを踏まえ、「アプリケーションサーバーを選択する際、標準準拠を基準にするのか、それとも機能を優先するのかを判断する必要がある」とした。「標準準拠でいけば、オープンソースのJ2EEが一番だ。逆に機能性でみれば市販J2EEが圧倒的といえる」と、どちらを優先するかで企業担当者は悩むことになると述べた。これについて同氏は「標準化は本当に必要なのかを検討したほうがいい。特にミッションクリティカルな領域で使おうとするのであれば、標準化よりも機能優先で判断してもいいのではないか」と、ミッションクリティカル領域において標準化に固執することに否定的な見解を述べた。


リーダー不在のAPS市場で製品を選ぶには

 では、現状アプリケーションサーバーは企業においてどのように使われているのだろうか。ガートナーの調査によると、30%の企業がアプリケーションサーバーを単独で採用し、60%の企業がアプリケーションサーバーとインテグレーションブローカのように組み合わせて採用しているという。APSという形で採用しているのは10%でしかない。

 また、ベンダー側については、「APSに関して、現段階ではリーダーと呼べるベンダーは存在していない。ワールドワイドで見た場合、BEA、IBM、Oracle、Microsoftなどがリーダーとなる可能性が高い」と、APSではまだまだ主流となる製品が明確になっていないとした。

 飯島氏はこうした現状について、「現状は、アプリケーションサーバーが独立した形で販売され、製品ごとに評価されている。しかし、APSという製品形態の必要性は確実に高まっていくことになる。いわば“ベスト・オブ・スイート(統合製品ごとに評価)”をめぐる競争が始まるだろう。そして、“ベスト・オブ・スイート”の次の段階として、“ベスト・オブ・ブランド(ベンダーの実績により評価)”という段階に進むことになる」と、更なる統合化が図られると述べた。

 最後に飯島氏は、「現状は混沌としており、今後は選択肢がさらに増える。企業は自社に必要な製品を正しく選択する力が一層求められるだろう」と、今以上に目的を明確にして選択することの重要性を述べ、講演を締めくくった。



URL
  ガートナージャパン株式会社
  http://www.gartner.co.jp/
  アプリケーション統合&Webサービス2004
  http://www.gartner.co.jp/event/ai/index.html


( 福浦 一広 )
2004/03/17 20:07

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