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米Microsoftアヤラ氏、「優先すべきは顧客の“バリュー”」


米Microsoft 中小規模法人およびパートナーグループ担当上級副社長 オーランド・アヤラ氏
 マイクロソフト株式会社は4月1日、米Microsoftの中小規模法人およびパートナーグループ(SMS&P)担当上級副社長のオーランド・アヤラ氏が来日したことを受け、プレス向けのラウンドテーブルを開催した。この中で再三アヤラ氏が強調したことは、「顧客の価値(バリュー)を最大限重視する」という同社の方針だ。

 アヤラ氏によれば、SMB(中小規模企業向けビジネス)は「もっとも大きな成長分野と見ており、また多くの企業が進出しようとしている」ところだという。同社では、従業員が1,000人以下の中小企業を全世界で4,000社と見積もっており、この分野で成功を収められるよう、4つの大きな施策を行っている、とアヤラ氏は説明した。


Microsoftが行う、SMB向け4つの施策

 その1つ目は、SMB向け製品の研究開発への投資だ。アヤラ氏は、Microsoftが実に20億ドル(年間)を研究開発に投資していると述べたあと、これに匹敵する投資を行うところはないだろう、と胸を張る。この研究投資で生まれた製品の例として同氏は、全世界で15万本を売り上げたというWindows Small Business Server 2003(SBS 2003)をあげ、「当社の製品の中でも成功したものの1つ」だとし、同製品が成功した理由として「カスタマーニーズに合致したシンプルな製品に仕上げたため」だと述べ、専門知識を持っていなくともすぐにセットアップができる点など、顧客にとって価値のある製品に仕上がったことが評価されている、とした。

 2つ目としては、パートナーとの非常に健全な関係を築き上げたことだという。全世界で65万社のパートナー、3万社以上の認定パートナーを持つとのことだが、「これらパートナーのトレーニング、マーケティングなどに15億ドルを投入、“エコシステム”を築き上げたことが強み」とアヤラ氏は語り、この分野でも競合他社をリードしていると強調した。

 3つ目には、総合的なソリューションの提供を行っていることをあげた。ソフトだけ、ハードだけではなく、ソリューション全体として顧客に提供することが非常に重要だという。「Microsoftはその一環として(こうした市場への)資金調達への道を開こうとしており、まだはじまったばかりだが、低金利でテクノロジーを導入する仕組みを作っている」とアヤラ氏が話した通り、日本法人でも金融機関やリース会社と提携して、SMBへの融資推進などを行っている。また、「専門家の育成により、顧客がソリューションを利用する上での手伝いもしたい」と、人材育成にも力を入れているとした。

 最後の施策は、“カスタマーコネクション”への投資だという。同社はSMB向けのWebポータルサイトで、SMBの担当者が自ら、ビジネスのテンプレートを調べたり、導入したいソリューションやその専門家を探したりできるようにする取り組みを行っていく。アヤラ氏は「Webを通じてバリューを提供する。ここでは顧客とパートナーをつなげる役割を果たす」とこの施策の役割を述べた。

 そしてアヤラ氏はこれらをまとめて「企業、個人がポテンシャルを発揮できるようにしなければならないと考えており、それを何年も実践してきた」と述べ、4つの施策によりこの手助けをすると強調していた。


セキュリティ対策は、環境全体で考えるべき

 続けて同氏は、Windowsプラットフォームはウイルス対策などセキュリティへの投資が必要なため、結局高くついてしまうのではないか、という問いに対し「当社では、Get the Factキャンペーンというものを行い、客観的な第三者のデータで、当社製品のセキュリティレベルはほかのプラットフォームよりも高いことを示している。しかし、Windowsのように世界で広く展開されているOSはなく、ターゲットになりやすい。確かにこれは問題だと考えている」と述べた後、「ソフトウェアだけでなく、その顧客の環境全体をどうやって守るかが問題。顧客がなるべくお金をかけなくても済むように当社で投資をし、きちんとした方法を提供したい」と回答した。


Microsoft製品には、価値のあるものは取り込んでいく

 また、同社の製品が市場でかなりのシェアを占め、さらにさまざまな機能を取り込んでしまっているために、顧客の選択の機会をなくしてしまっているのではないかという点に関しては、「いずれにせよ、顧客がどうしたいのかを考えることが大事。以前NC(Network Computer)が話題になったことがあったが、うまくいかなかった。これは業界中心の議論だったからだ。多くのベンダが顧客を忘れてしまっている」(アヤラ氏)と顧客第一主義を再度強調した後で「当社がきちんとしたものを提供しなければ、ほかの製品を買うということでいい。すべてが当社製品になるということはありえない」という姿勢を披露。

 しかし、「(Microsoftが新たな分野の製品を手がける、手がけないという)1つの線を定義することは難しい。以前のWindows 98や2000で無線LANを使おうと思うととても大変なことだったが、(OSにその管理機能を盛り込むことで)今(XP)では楽になっている。このように、当社として顧客にバリューを提供することができるなら、やるべきだと思っている」ともアヤラ氏は主張した。

 同氏によれば、ERPなど業務アプリケーション分野へ本格的な参入を試みていることもこれと同じだ、という。「顧客はERPやSCM(サプライチェーンマネジメント)にこれ以上投資したくないと思っている。当社なら競合他社と比べて数分の一の価格で、良い製品を提供できる。浮いた費用はカスタマイズなどに回すことができるが、これは当社の役割ではなく、ISVの担当分野だ」と、同社が同分野へ取り組むことで、顧客とパートナーにとって価値を出せる、と述べている。

 これに関しては、「Microsoftが手がける分野を広げていることでパートナーの収益分野を侵し、せっかくのエコシステムが崩れてしまわないか」という指摘があったが、アヤラ氏は「カスタマーニーズに基づき、当社が現在何を開発しているのか、今後どういうソリューションをリリースしていくのか、というロードマップをあらかじめ提示し、(それがパートナーのビジネスと重なる場合には)パートナーが位置付けを変更できるようにする」と回答。加えてパートナー側でも、ユニークな価値を出していけることが大事だとし、そのために同社が用意している認定パートナーの取り組みを説明。ユーザー側から探している案件の得意なパートナーを見つける仕組みを用意するなど、協力もしていくと述べた。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/

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( 石井 一志 )
2004/04/02 00:00

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