マイクロソフト株式会社は4月8日、深刻化しつつある迷惑メールの削減に向けた同社の取り組みについての説明会を開催した。
俗に「スパム」とも呼ばれる迷惑メールを受信する量はここ最近特に増加傾向にあり、同社が提携している米Brightmailの調査によると、3月の時点でインターネット上に流通するメールの63%が迷惑メールにあたるという。また、同社が運営するHotmailに限ってみるとその数は76%に上昇する。MSN事業部マーケティンググループサブスクリプションサービスプロダクトプランナーの丸岩幸恵氏は、「Hotmailでも2003年11月に発表したSmartScreenテクノロジーを用いたフィルタリングなどによる対策を行っている。しかし、新しい技術を導入すると一時的に50%程度まで低下するが、迷惑メール業者もそれに対する工夫をしたメールを送信してくるため、やがて元に戻ってしまう」と、いたちごっことなってしまっている現状を説明する。
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MSN事業部マーケティンググループサブスクリプションサービスプロダクトプランナー 丸岩幸恵氏
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迷惑メールの現状
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同社ではHotmailのフィルタリングだけでなく、米国にて専門の対策チームを結成して全社的な戦略や技術を企画したり、あるいはYahoo!やAOLなどとアライアンスを組むなどして、抜本的な対策に向けた準備を行っている。
■ DNSサーバーを利用して正規のメールか否かを照合
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メール発信IDの流れ
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サーバー プラットフォーム ビジネス本部 IWインフラストラクチャ製品グループ マネージャ 中川 哲氏
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そんな中、同社が提唱するのがメールの受信側だけでなく送信側との連携によって迷惑メールを削減しようとする試みだ。同社では「CSRI(Coordinated Spam Reduction Initiative)」と呼んでおり、実用化すればメールの送信元が偽装されていないものであるかをユーザーが受信する前に識別することができるという。
中でも「メール発信ID(Caller ID for E-mail」と呼ばれる技術は、すでに一部のHotmailユーザーが利用を始めているなど実用化に最も近い。これは、あらかじめメール送信者がDNSサーバーにメールポリシードキュメントとして送信メールサーバーのドメイン名とIPアドレスを公開しておき、受信メールサーバーがメッセージごとに記述されている情報とDNSサーバーのドキュメントと照合することで、送信元のメールアドレスを偽る「偽装メール」かどうか判断するというもの。ドキュメントはTXTレコードにXML形式で記述されるため、「既存のメールシステムでも対応でき、将来的に拡張も可能。また、受信者はメールソフトなどに特別な設定を行う必要もない」(サーバー プラットフォーム ビジネス本部 IWインフラストラクチャ製品グループ マネージャ 中川 哲氏)。
このメール発信IDは、5月以降にフィードバックを受け付けるほか、策定した仕様を公開する予定で、今後同社より提供予定の「Exchange Edge Service」にも搭載されるとのこと。
また、日本ベリサインのような第三者機関を介在させ大量送信メールに対して認証システムを設けたり、受信サーバーのSMTPレスポンスに一定の間隔を置くことで一度に大量のメールを受信できなくするしくみなども披露された。ただし、これらはいずれも草案レベルで、具体的な策定が行われていないため実現するかどうか、まだわからないとのことだ。
仮に迷惑メールを抑える技術が生まれたとしても、それを利用するために同社の製品を導入しなければならないとなると問題の解決にはならない。中村氏は「既存の標準技術や規格を最大限に尊重し、受信者には複雑な設定などを行わせないことを前提とした対策を講じる」と、取り組みの目的が同社の製品を広めることではなく、あくまで迷惑メールの削減であることを強調した。
■ URL
マイクロソフト株式会社
http://www.microsoft.com/japan/
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( 朝夷 剛士 )
2004/04/08 19:29
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