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富士通、2003年度決算は増収増益で黒字転換


 富士通株式会社は、2003年度の連結決算を発表した。売上高は前年比3.2%増の4兆7668億円、営業利益は前年比49.7%増の1503億円、経常利益は同301.9%増の497億円、当期純利益は前年のマイナス1220億円の赤字から一転して、497億円の黒字となった。

 営業利益は黒川博昭社長の公約通り、1500億円を突破し、営業利益率は3.2%に到達。また、過去2年間に渡る業績悪化と巨額の構造改革費用の支出という事態から、財務体質の大幅な悪化を招いたが、本業の回復、コストダウンへの取り組み、経費削減効果などが最終黒字になったと同社では説明している。

 四半期ごとの売上高成長率も徐々に上昇しており、通期売上高が前年実績を上回ったのは3年ぶりとなる。


 セグメント別では、ソフトウェア・サービスの売上高は2兆942億円で前年比3.4%増。地域別では国内が1兆5808億円(前年比4.9%増)、海外は5134億円(同1.1%減)となった。また、事業別内訳はソリューション/SIが3.1%増の9700億円、インフラサービスが3.6%増の1兆1242億円となった。

 国内では、製造業およびe-Japan計画による公共、医療分野が好調であったほか、海外においても英国税庁、英ナショナルヘルスサービスといった政府系の大型アウトソーシング案件の連続受注が支えるなど好調。数値の上では、海外は減収となっているが、これは欧州地区における事業再編の影響などが要因となっている。

 しかし、営業利益は前年比377億円減となる1387億円。ソリューション/SI事業で価格競争が激しくなったこと、一部プロジェクトで採算性が悪化したこと、新規市場開拓のための費用やLinux分野への先行投資負担が拡大したことなどが原因となった。

 プラットフォームは、売上高が前年比0.2%減の1兆6081億円。営業利益は282億円増加の292億円。

 地域別内訳としては、国内の売上高は、0.8%減の1兆1504億円、海外は1.2%増の4577億円となった。製品別では、サーバー関連が4.5%減の3656億円、モバイル・IPネットワークが9.2%増の2072億円、伝送システムが7.0%減の1674億円、パソコンおよび携帯電話が3.9%増の6809億円、HDD関連が15.9%増の1870億円となった。

 売上高が微減となった要因は、第1四半期において前年同期比17.6%と大幅な落ち込みになったことが影響。しかし、年度末に向けて需要が回復基調に転じ、なかでも第3世代携帯電話、パソコン、HDDの売り上げが増加している。

 パソコンに関しては市場価格の下落が進み、その影響を受けたものの、これを台数増でカバーした格好。パソコンの出荷台数は、前年比15%増の654万台。そのうち、国内は5%増の258万台に留まったものの、欧州は24%増の368万5000台と大きく成長した。デスクトップとノートパソコンの比率は46対54と、前年に比べてノートパソコンの構成比が1ポイント増加した。

 また、サーバーは、国内では前年割れとなったものの、海外向けUNIXサーバーなどが好調に推移している。

 携帯電話は、前年比横ばいの337万台。今年度は19%増の400万台の出荷を見込んでいる。

 電子デバイスは、売上高が前年比18.7%増の7343億円。営業利益は591億円増加の275億円と、前年の赤字から黒字化した。これによって、ソフト・サービス、プラットフォーム、電子デバイスの主要3部門が3年ぶりにすべて黒字化した。

 半導体は、AV機器や携帯電話などのデジタル家電向けが好調であるほか、数値上は1.7%減となっているフラッシュメモリも、米AMDと合弁で設立した新会社への移管分を含むと、前年比66%増という大幅な売り上げ増となる。そのほか、PDP、LCDについても前年比50%増という高い成長率を達成しているという。

 主要3分野において、明るい兆しが見えていることを示す決算内容ともいえ、黒川社長体制での拡大戦略への転換が期待されるところだ。


小倉正道取締役専務
 今回の収支のなかでは、ファナックの株式売却益などで1346億円、東京・蒲田に開設した富士通ソリューションスクエアの土地および建物の流動化によって136億円の売却益など、合計で2948億円の特別利益を計上。一方、特別損失として、北米を中心としたグローバルな事業構造再編をはじめとする事業構造改善費用など、合計で1875億円を計上している。

 とくに、国内のソフトウェア・サービスビジネスの見直しでは、2004年から2006年にかけて、回収不能見込みとなる額として683億円を特別損失に計上しているが、これに関して小倉正道取締役専務は、「現在開発中のすべてのプロジェクトにおて、未実施分の作業も含めて将来の回収の可能性を全面的に精査した結果、社会システムに関わるものなど、契約期間が2-3年に渡るプロジェクトにおいて、契約内容を精査すると開発成果のみが規定されている場合も多かった。これらの契約では、将来において回収ができないプロジェクトも多く存在することが確認された。ここ1-2年はIT不況の溝が深く、無理をして受注を獲得していたものもあった。これが今年から来年にかけて対応を迫られることにつながった」としている。

 つまり、採算性を無視した案件獲得が見られ、これが収益にも影響したというわけだ。

 今後の営業の強化とともに、再度こうした案件が出る可能についても指摘する質問もあったが、これに対しては、「今年2月にビジネスリスクマネジメント室を設置し、大規模商談については、全件審査を行い、他の商談についても随時第三者からチェックを受ける体制を整えた。また、社内的には、工事進行基準の導入を前提として、損失の即時認識の厳格なルール化と、協力会社を含んだプロジェクト管理の徹底的な可視化を図りたい。これまでのようなことはないはず」としている。

 なお、2004年度の見通しは、売上高は前年比3.8%増の4兆9500億円、営業利益は前年比33.0%増の2000億円、経常利益は2.4倍となる1200億円、当期純利益は前年比40.8%増の700億円を見込む。また、パソコンの出荷計画は、前年比9%増の711万台。そのうち、国内は7%増の275万台、欧州は10%増の405万台。北米は10%増の16万台、アジアは15%増の15万台としており、とくに欧州での事業拡大が鍵になると見られる。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/
  2003年度(平成15年度) 連結および単独決算概要
  http://pr.fujitsu.com/jp/ir/finance/2003/


( 大河原 克行 )
2004/04/27 20:10

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