松下電器産業株式会社は4月28日、2003年度の連結決算を発表した。売上高は前年比1%増の7兆4,797億円、営業利益は前年比54%増の1,955億円、当期純利益は前年のマイナス195億円の赤字から一転して、421億円の黒字となった。
単独での売上高は前年比4%減の4兆814億円。この内訳は国内で10%減の2兆4,406億円、輸出は1兆6,407億円で8%増加している。経常利益は同31%増の1,052億円、当期純利益は594億円で同106%増となった。
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松下電器産業株式会社 常務取締役 川上 徹也氏
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同社常務取締役の川上 徹也氏は、製品販売動向について「ポイントはV商品」とし、「CRTテレビやビデオといったアナログ商品を除けば、他社のシェア平均伸び率89に対して101と一人勝ちの状態」とし、「DVDやDVカメラでも一時シェアを落としたが、2004年発売の新製品で回復している」とした。また営業利益については「構造改革による合理化効果や集中購買で低価格化をカバーした」と語った。
各ドメイン企業の構造改革費用は、「当初500億円の目標だったが、利益の増加で項目が増えたこともあり920億円に増加した」という。また「構造改革については2004年度で、一応のめどがつくと考えている」とのこと。棚卸資産については減少を続けているが、「シッピング途上の在庫含め課題も残っている」とした。
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松下電器産業株式会社 代表取締役社長 中村 邦夫氏
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これに受けた同社代表取締役社長 中村 邦夫氏は、「2月公表を上回る実績で、特に営業利益はITバブルのピークだった2000年を上回った。また全事業セグメントで増益となった」と評価した。
また2004年度には、すでに発表されている松下電工との連結グループ化より「売上規模で8兆8,000億円、営業利益2,800億円を目指す」とした。
この内訳は旧電器産業で約7兆5,000億円と前年並みの売上げながら、前年比18%、350億円の増となる2,300億円の営業利益を目指すという。同氏は「原材料の値上がりやイラク情勢などの地政学リスク、米大統領選後の景気動向など、経済環境は不透明」としながらも、「V商品として、厳選された71品目の投入で、トータル1兆5000億円の売上を目指すほか、DVDレコーダーで成功した世界同時垂直立ち上げの分野を拡大していく」と述べた。またアテネオリンピックを控え、「テレビやDVDレコーダーで新製品の早期投入などの販売増進を図る」とした。
電工との連結化については「ルーツは同じなので協業計画も即実行に移せると見ている。成果がすばやく現れると確信している」と述べた。そして「顧客から見てわかりやすい協業のあり方として“住空間快適ソリューション”のコンセプトで、最適体制を早急に構築し、シナジー効果を発揮していきたい」とした。
また2000年の社長就任直後から策定し、2001年から実行に移した3年間の中期計画“創世21”について、「売上目標9兆円、営業利益率5%の数字はきわめてイージーだったと反省している」と述べた。そして「ITバブルの弾けた2001年に松下の古い体質が露呈し、不本意な赤字を記録、これを機に、破壊と創造というキワモノ的なスローガンとともに21世紀型経営体制に移行できた」とし、また2004年からの3年間は、「2010年までにグローバルNo.1企業と利益率10%を実現するべく、まずは中期計画“躍進21”達成にまい進する」と語った。
中国市場については「松下成長のエンジン」との位置づけを示した。中国は「再輸出による製造拠点の側面のほか、沿海部を中心に国内需要が急成長している」とし、プラズマTVの出荷台数では、「国内64万台に対し、中国60万台、アメリカ、ヨーロッパもそれぞれ60万台」との例を述べた。また「日本円で年収1,500万以上の、生活水準を考えれば億万長者といえる富裕層が4,000万人に達している」ことにも触れ、「需要の二極分化が進んでおり、特性を見極めて2006年に売上1,000億円を目指す」とした。
半導体事業については、「汎用はやらず重点分野にしぼって展開している」とし、130から90ナノプロセスへの以降で、チップのコストが50%削減、消費電力も下がる、ボードも小型化できる。デジタルテレビの同一プラットフォーム化もこれで実現した」と述べ、「90から65ナノプロセスへの移行スピードを加速するため、中期の方針通り1,300億の設備投資を決定した」と語った。
デジタルスチルカメラについては、「市場がグローバルで急拡大しており、最低でも出荷台数で5,500万台が見込まれる。2006年には8000万に達する」とし、「製品が二極分化し、一眼レフなどの高級なものが売れ始めているのが特徴」と述べた。また「市場はキーデバイスを持っている日本メーカーの独走だろう」とし、「光学手ぶれ防止、420mm望遠を5cmに収める非球面レンズの2つの独自技術により、グローバルで10%シェアを実現したい」とした。
■ URL
松下電器産業株式会社
http://www.matsushita.co.jp/
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( 岩崎 宰守 )
2004/04/28 21:20
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