IDC Japanは4月28日、同社の調査結果に基づいた市場動向の概要を説明する「市場動向セミナー」を都内で開催した。その中でITサービス シニアマーケットアナリストの松本聡氏が「国内ASP動向 ~変貌するASP~」と題した講演を行った。
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ITサービス シニアマーケットアナリスト 松本聡氏
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ASP事業の利益推移
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ASPは当初利益をあげることができるベンダーがほとんどないという状況であったが、ブロードバンド化によるネットワーク環境の整備などの影響から2002年後半ごろからサービスの提供が活発になり、企業においても利用が広まっている。
ユーザーがASPを利用するメリットとして、必要なアプリケーションを低価格で利用できることが挙げられる。逆に提供する側は市場の変化を素早く察知して、必要とされるサービスを提供し拡充していかなければならない。このため、ASPビジネスで利益をあげるためには、運用コストの削減と同時にアプリケーション拡充とサービス単価の見直しによってユーザー数を増加させなくてはならない。
さらにASP型ビジネスを始めるには、アプリケーション開発のほか、インフラの整備、セキュリティの確保、セールスやサポートスタッフの準備など予想以上の大きな初期投資が必要となる。同氏は「ASP事業は初期投資や拡充が早期に必要となるため、利益を出すには比較的時間がかかる」と説明する。そこで自社のコアコンピタンス戦略を明確にし、ほかはインフラを提供することが専門のSISP(System Infrastructure Services Provider)などの「パートナーを利用することが求められる」(同氏)。
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業務別ITアウトソーシングの利用状況
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現在ASPが提供するサービスは多様化し、アプリケーションの提供だけにとどまらずビジネスプロセスのアウトソーシング(BPO)を請け負う業者もあり、企業においてもさまざまな用途で利用されている。しかし同氏によると、ユーザーは利用する部門や業務によってサービスプロバイダーに求める価値が異なるという。「例えば人事・給与および経理・財務などの基幹業務やグループウェアなどのコミュニケーションツールにおいては、企業によって求める機能の差が小さいため価格と安定性が求められる。反対にERPやCRMなど業務フローに密接にかかわる分野ではカスタマイズが必要となるため、サポートが重要視される」(同氏)。同社の調査によると、後者の方が導入へのハードルが高いため導入率が低いが、今後の伸びも期待できる。
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IDCのASP市場規模予測
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同社の調査・予測ではASP市場規模は2007年までに年平均33%という高い成長率で推移し2007年には420億円にもなり、市場規模が大きくなると同時に競争も激しくなることが予想される。同氏はサービスプロバイダー事業として成功するためには、「管理運用コストの削減、パートナー戦略を利用することによる売上の増加、市場環境に適したベストエフォートなアプリケーションの提供が必要」とした。さらに「単にアプリケーションの提供だけでなく、業務代行や支援サービスの付加(BPO化)、あるいはインフラやテクノロジーに特化したビジネス(SISP化)などへの取り組みが重要となる」と提言した。
■ URL
IDC Japan株式会社
http://www.idcjapan.co.jp/
( 朝夷 剛士 )
2004/04/28 22:32
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