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「基幹業務ソフトもモバイルへ」ノキアがエンタープライズ事業に本腰


 ノキア・ジャパン株式会社は5月12日、報道記者向けに説明会を開き、同社のエンタープライズ事業への取り組みや製品の機能などの説明を行った。


エンタープライズ・ソリューション事業部 カントリージェネラルマネージャー 柳下幹生氏

企業におけるモバイル化

2004年からのノキアの組織
 ノキアといえば米国やヨーロッパ、中国などGSM方式の携帯電話が利用されている地域で端末シェアNo.1の企業として有名だ。そんな同社が2004年初め、ワールドワイドで組織改革を行い「エンタープライズ・ソリューション事業部」を設立、ファイアウォールやVPNなどを中心としたセキュリティアプライアンス製品の販売に力を入れている。同事業部カントリージェネラルマネージャーの柳下幹生氏は「すでに約2,000人という携帯電話に引けをとらない人員をエンタープライズ事業につぎ込んでおり、(携帯電話事業の)次の大きな柱として投資を行っている」と強調する。

 携帯電話の最大手として同社がエンタープライズに推進するのは、やはりモバイルだ。同社は企業における業務モバイル化として、携帯端末からのメールの利用やスケジュール、住所録の共有といったグループウェアへのアクセスを第1段階、CRMやSFAなどのフロントエンドアプリケーションへのアクセスを第2段階、さらにその先には業務アプリケーションのモバイル対応を掲げている。柳下氏は「SAP R/3などの基幹業務パッケージを含めアプリケーション全体の40%はモバイル化が可能」としている。

 そこで課題となるのがセキュリティだ。同社ではDMZの部分に配置する製品としてファイアウォールやアンチウイルスなど多くのセキュリティアプライアンス製品を展開し実績を上げてきている。その中で、同社が現在注力する製品の一つがセキュアなVPNを実現する「Nokia Secure Access System(以下、NSAS)」だ。

 NSASはSSLを利用したVPNを行うためのアプライアンスだが、独自の機能によりセキュリティ効果を高めている。例えば、接続元の環境によりアクセス権限を自動的に変える「アドバンスドアクセス制御」は、「当社ならでは」(同事業部 シニアテクニカルマネージャー 安藤正之氏)のユニークな機能だ。具体的に説明すると、アクセス元のPCのセキュリティレベルをJavaアプレットを利用してログイン前に診断し、それによって社内リソースへのアクセス権限を変更するというもの。会社支給のPCでウイルス対策プログラムが動作し、かつパターン定義ファイルが最新になっている場合は社内リソースの読み込み・書き込みができるが、インターネットカフェなどに設置されているPCではメールの閲覧しかできないといった判別を自動的に行う。


 また、SSL-VPNはデータのやりとりをWebブラウザに依存するため、社内リソースの機密情報などにアクセスした場合、閲覧したデータがキャッシュやクッキーとしてPCのローカルディスクに残ってしまうといった問題がある。これに対し、NSASはセッション上に「仮想デスクトップ」を構築し、やりとりされるデータを暗号化、セッション終了時には仮想デスクトップの鍵情報やキャッシュなどのデータは消去されローカルディスク上に何も残さないといった機能も備える。「他社製品はActiveXなどでキャッシュデータを消すなどの対策がとられているが、クライアント側の設定によってはデータが残ってしまう場合もある。NSASの仮想デスクトップでやりとりされるデータはすべて暗号化されているため、万が一データが残ったとしても解読できない」(安藤氏)。

 安藤氏は「当社の製品はセキュリティを犠牲にしてまで機能を向上させることはない」と、セキュリティ対策が第一であることを強調する。それをクリアしてこそ同社のモバイル製品群が企業で受け入れられるからだ。同社では携帯電話から社内のメール、予定表、Office文章などを利用できる「Nokia Access Mobilizer」の日本語対応を予定しているほか、ボーダフォン・NTTドコモからの携帯端末投入の動きもあり、エンタープライズ市場から同社の得意分野であるモバイルの浸透を進める構えだ。



URL
  ノキア・ジャパン株式会社
  http://www.nokia.co.jp/

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( 朝夷 剛士 )
2004/05/12 20:39

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