アップルコンピュータ株式会社は5月13日、同志社大学超並列計算機研究会と共同でHPC(High Performance Computing)分野に関するセミナーを開催した。サブタイトルに「Appleの挑戦」と題したこのセミナーでは、同社の製品がいかにして科学技術計算分野にかかわっているかの説明が行われた。
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米Apple Scientific Marketing Marian Urushima氏
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アップルといえばMacintoshでコンシューマ・クリエイティブ・教育分野で広く認知されており、最近ではiPodを中心とした音楽配信分野でも注目されている。そんな同社だが、米Apple Scientific MarketingのMarian Urushima氏は「ワールドワイドで3割の科学者がアップルの製品を利用している」と、同社がHPC分野に深くコミットしていることを強調する。
同社の製品がHPC分野でも利用されるようになったのは、MacintoshのOSがUNIXベースの「MacOS X」に移行したことが大きな要因だ。HPC分野で利用されるアプリケーションのほとんどはUNIX上で開発されたものだが、MacOS XにはX11やXcode、J2SEなどといったUNIXアプリケーションの開発・実行環境が標準で付属しているため、ほとんどのものが利用できる。同氏によるとMacOS Xに最適化されたアプリケーションは商用のものやオープンソースを含め10,000種類を超えたという。
また、Mac独自のなじみやすい操作性やグラフィック機能も受け入れられている原因となっているようで「演算などで得られたデータを直感的な形にビジュアル化する必要もあるため、Open GLをベースとした“Quartzエンジン”が活用される場面も多い」(同氏)という。もちろんWebブラウザやOfficeなどのMac用アプリケーションも利用することができるため、1台でUNIXアプリケーションを走らせレポートの作成も行うといったことができるのは、現在のMacならではといえる。同氏によると「最近の米国のカンファレンスなどではPowerBook G4を持ち歩く科学者を大勢見かけることができる」とのこと。
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アップルのサーバー・ストレージ製品
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Xgridの動作イメージ
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MacOS Xだけでなくハードウェアの高機能化も重要だ。同社は2003年には64ビットCPUである「PowerPC G5」を搭載した「PowerMac G5」、2004年には1Uラックマウントサイズの「XServe G5」、さらにストレージの「Xserve RAID」をリリースし、HPC分野で要求される環境が整いつつある。さらに2004年秋にはXserve RAIDをSAN環境で利用できる「Xsan」をリリースを予定しているほか、複数のMacをクラスターとして利用できる「Xgrid」のプレビュー版が同社のWebサイトで公開されている。アップルソリューションエキスパーツの菅原清文氏は「XgridはMacにインストールするだけで複雑な設定なしにクラスターが利用できる。現在Preview2を無償で配布しているので、複数のMacがある場合はぜひ試していただきたい」と述べ、合計20台以上のMacを使って20GHzを超える演算処理のデモを行った。
菅原氏によると「科学者でもコンピュータの操作に不慣れな人が意外に多い」とのこと。操作性に定評があり量販店などでも手に入れることができる“敷居の低いUNIX”として、今後ハイエンド市場でMacの利用が広がる可能性は高い。Urushima氏は「一つのOSでコンシューマから科学者までカバーできるのはMacならでは」としており、今後iPod以外でも幅広い分野から同社の製品に注目が集まる。なおMacOS Xの次期バージョンである「Tiger」は、6月28日~7月2日に米国で開催される「WWDC 2004」でプレビューが公開される。
■ URL
アップルコンピュータ株式会社
http://www.apple.co.jp/
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( 朝夷 剛士 )
2004/05/13 19:23
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