5月13日、IDC Japan株式会社の主催で「DIRECTIONS 2004」が開催され、米IDC グローバルエンタープライズサーバーソリューションズ グローバルバイスプレジデントのバーノン・ターナー氏が「オペレーティング環境の複合化:Linux、Unix、Windows」のテーマで講演を行った。
■ クライアントOS環境としてのLinux
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米IDC グローバルエンタープライズサーバーソリューションズ グローバルバイスプレジデント バーノン・ターナー氏
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OS別のクライアント市場。Windowsが9割以上を占め、Linuxは苦戦
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クライアントOS環境としてのLinuxはサーバーほど採用が進んでいない。この原因として同氏は「PalmやPocket PCとの同期ができないほか、OpenOffice、StarSuiteは業務の一部しかカバーできないなど、アプリケーションの不足によるところがもっとも大きい」とした。
デスクトップLinuxの拡大では「Linuxを真っ先に採用し、独自にシステムを構築するような先進的なユーザー企業がけん引役となる」と述べた。「こうした企業では、DB2、Oracleといったデータベース、BEAやIBMのアプリケーションサーバー、CAのシステム管理製品などでLinuxが用いられており、展開の土台はある」とした。
またアジア諸国では「国内でのアプリケーション開発を育成するなど、新しい現地産業につなげるために、Microsoftから離れる動きがある」ことにも触れた。Microsoftではタイ政府と共同で、機能を取り除いたWindows XPと、また「以前のWorksに近い」Officeを低価格で提供した。これについては、「Linuxに対応して初めて市場展開した事例」との考えを示した。
Microsoftについては、「3年間の契約サイクルでアップグレードのなかった際の不満など、ライセンスへの反発や誤解に対する説得で苦労している。またセキュリティへの対策も適正に進められているものの、この懸念を短期的に是正するのは難しいだろう」とし、「その間にLinuxが拡大する可能性もあり得る」とした。
またLinuxに関して、企業IT部門ではベンダの生き残りが懸念されているという。「ディストリビューターとしてはRed Hatの人気が高いが、その売上は1億3,000~4,000万規模にとどまる。NovellがSUSEを買収したことで10億ドル規模のLinuxベンダが誕生した。500億ドル規模のMicrosoftやIBMには及ばないが、これで北米でもLinuxの信用が高まる可能性がある」とした。
だが同氏は、「ユーザーの間では“Windowsデスクトップが維持できないのに、Linuxでは悪夢のような状況を作り出しかねない”との声もある。また家庭でも使ってきたプラットフォームを、機能追加もなく置き換えることは考えにくい」との見方も示した。
IDCでは、Linuxデスクトップは2007年まで課題を解決できないと見ているという。クライアントでのMicrosoftのシェアは92~93%を推移し、「LinuxはMac、DOS、OS/2からシェアを奪うしかない」とした。そして「結局アプリケーション開発が進まないことが最も大きい」と述べた。
■ サーバー市場ではUNIXからLinuxへの移行が進む
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OS別のサーバー市場。LinuxとWindowsが増加し、UNIX、NetWareが微減
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サーバーOSでは、Linuxの市場は確実に伸びている。同氏は「LinuxにはTCOの神話があり、誰もが低コストと考えている。しかしIDCの調査では、WindowsはLinuxに匹敵し、はっきり勝利するほど、大きな違いがあるわけではない」と語った。
そして企業でのLinux採用については、「よりよいサポート、ライフサイクルの長さを望めば、より高いコストを生む」とし、「ISVにとっては導入コストの低さで新規採用を増やし、OSとオープンソースアプリケーションのサポート提供で高いマージンを獲得できるため魅力となっている」とした。
ただLinuxは「Kernelの成熟と、ISVのサポートがギャップを埋めつつあり、すでにUNIXとの比較では差がないといえる」とし、また「自分で開発したマーケット分析ポートフォリオなどのアプリケーションを、ローコストのLinuxクラスタに移行できる」とした。Linuxのリリースサイクルが鈍化したことでは、「一般には環境の安定を意味し、より導入しやすく、サポートしやすい環境になったといえる」とした。
そして「LinuxはサーバーOSとして確立され、インフラやアプリケーションのデプロイメント環境でも近い存在として、移行が容易なUNIXのシェアを確実に奪っている」とした。
サーバー市場でのMicrosoftは「包括的な機能と導入の容易さで差別化し、長期ライセンス締結を目指しているが、まだ普及していない」とした。しかし「MicrosoftはOSをコンポーネント化し、最終的には稼働率の向上につながるユーティリティを目指しており、例えばブレードサーバー向けなどとして発売することもできるだろう」との考えを述べた。
また市場はOSからインフラソフトへ傾きつつあることとあわせ、「Virtual PCなどはあまり知られていないが、ライセンス条件を最適化し、IBMのキャパシティオンデマンドのような構成をとることでより優位に立つことも考えられる」と述べた。
■ URL
DIRECTIONS 2004
http://www.idcjapan.co.jp/Seminar/040513_directions2004/
( 岩崎 宰守 )
2004/05/17 00:01
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