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IDC Japan中村氏「サーバー市場の台数増、売上減の傾向は2008年まで続く」

~DIRECTIONS 2004 講演

 5月13日、IDC Japan株式会社の主催で「DIRECTIONS 2004」が開催され、IDC Japanサーバーリサーチマネージャー 中村 正弘氏が「国内サーバー市場動向-高価値製品の創出と市場機会-」のテーマで講演を行った。


2003年のサーバー市場はオープンからオープンへの移行が顕著

IDC Japan株式会社 サーバーリサーチマネージャー 中村 正弘氏
 2002年から2003年のサーバー市場は、「既存システム買い替えに加え、新規需要も開拓され、確実に需要は回復した」という。だが「投資の抑制傾向は続いており、ROIの重視などその使い方には厳しい。業務処理需要がサーバー性能向上に追いついていないのも明らかな傾向で、2002年後半から市場は低価格製品にシフトしている」とした。

 このため「新規案件もほとんどはx86サーバーのため小口化しており、リプレースでも16Wayからより安い4Wayへ、x86でも4Wayから2Wayへの買い替えの動きが多い」とし、「出荷台数は増えたが、売上金額が減少している」とのことだ。IDCでは「2008年まで年平均で、金額で5%減、台数で4.6%増とこの傾向が続き、年10%コストパフォーマンスが上がると見ている」という。

 リプレースで目立つ傾向としては、「コストパフォーマンスの良い製品に簡単に移行でき、資産を移すコストも小さいため」に、オープンからオープンへ、特にRISCからLinuxへの移行が顕著だという。これらの2003年までの成長率を見ると、x86は回復しているがRISCとメインフレームは10~20%の減少となっている。一方で「メインフレームやオフコンなどのプロプライエタリからオープンへの移行は、2000年より減速している」という。

 こうしたことから同氏は「ユーザー企業は、メインフレームをやめるのでなく、投資の最適化を指向している」との見方を示した。「メインフレームからRISCへの個別アプリケーション移行による、90年代から続いた部分最適の動きは一巡している。現在残っているメインフレームは本当に基幹の部分で、オープン化のコスト、可用性の確保、カットオーバー時期などを考え合わせて、リスクが大きく移行が難しいとユーザーは見ている」とした。また「投資は既存システムより新規案件へ、との傾向もこれを後押ししているのではないか」と述べた。

 一方、「日立ではメインフレームのCPUにCMOSプロセッサを、ユニシスではx86を採用し、来年NECではItaniumを採用する動きもあると聞く」とし、プロプライエタリのシステムでも価格性能比が向上したために、「オープン系と比較したときに、はっきり移行による効果が出にくくなっている」とした。またこうした動きは国内に限らず欧米でも同様だという。

 IDCではサーバー市場における2004年の予測として「出荷金額でx86がメインフレームを、WindowsがUNIXを抜き、Linuxが出荷台数で10%を占めると見ている」とのことだ。


サーバー市場でのメインフレーム、x86、RISCの売上金額比率
Linux、Windows、UNIXの各OS別売上金額比率 2000~2008年の国内サーバー市場の売上金額と出荷台数の結果と予測

全体最適を指向したサーバー統合の動き

 IDCではスケールアップ型のサーバーを、8Way以上のIAまたはメインフレームと定義しており、「ベンダ固有のテクノロジーが用いられるため、いわゆる囲い込みができる」と位置づけた。

 続いて同氏は「他製品で代替不能、または困難で、移行も難しいもの、あるいはHP Alpha、Sun Cobaltに代表される、ファンが多く好きで使い続けるユーザーの存在するものが高価値な製品」とし、追加導入が可能なスケールアウトに対するスケールアップ型のサーバーがこれにあたるとした。

 IDCの調査では、スケールアウトの単価平均が下がる一方、スケールアップは上がっている。これについて同氏は「サーバー統合のトレンドが背景にある」とした。1980年代のクライアント/サーバーなどの集中型システムでは、CPU利用率は95%に達していたが、個別アプリケーションごとに最適化を進めた1990年代には、複数サーバーが分散し、運用面での弊害も起きたことを指摘。「2000年以降は、すでにある部分最適されたシステムを統合し、いかに全体のコスト、運用管理を最適化するかの見直しが進んでいる」とした。

 スケールアップ型のサーバーは、こうした考え方の下で導入されている。例えばIBMから先ごろ発表されたi5サーバーなども、複数のOSに対応するヘテロジニアスなサーバー統合を実現したプラットフォームといえる。

 またリソースを共有し、ひとつのツールで運用できる点では、スケールアウト型のブレードサーバーもサーバー統合への動きに合致している。同氏はそのメリットとして「スケールアップだとできない32ビットWindowsやUNIXといったOS環境もそのまま移行できる」点を挙げた。また「ブレードだと、シャーシを買えば囲い込みができ、ストレージや運用ツールといった周辺もそのベンダの製品を使わざるを得ない」とした。

 同氏は「製品をむやみに安く売らないためには、オープンでありながら、囲い込める製品をいかに開発できるかが重要なポイントになる」とし、「その際には異機種混在環境への対応がキーになる」と述べた。また最後に「一般に思われているほど、メインフレームは過去の遺物ではない」とも語った。



URL
  DIRECTIONS 2004
  http://www.idcjapan.co.jp/Seminar/040513_directions2004/


( 岩崎 宰守 )
2004/05/17 00:02

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