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相談役名誉会長の大塚実氏
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大塚商会の創業者であり、今年3月に同社相談役名誉会長に退いた大塚実氏の功績を称える「大塚実さんを囲む会」が、5月17日、業界関係者有志によって開かれた。
2部構成で開催された同会は、第1部で、「大塚実氏、40余年の経営哲学を語る」と題して、IT専門紙「BCN」の奥田喜久男社長と1時間30分にわたり対談。マスコミの取材や公的な活動をできる限り控えていたという大塚氏が、創業期からの現在までの経営ノウハウなどを披露する異例の場となった。
大塚氏は、オイルショック、バブル崩壊という環境変化を乗り越え、業績を拡大してきた経緯や、大塚実氏ならではの人心掌握術、評価制度などを披露。さらに、実子である大塚裕司現社長を、中学生時代から将来の経営者として育てることを決意し、さまざまな経験をさせてきたことなどを明らかにした。
また、「私自身、大塚商会を設立してから、ほとんど営業をやったことがない」という驚くべき事実にも触れ、「当社が対象としている顧客が中小企業だということもあり、トップセールスをやるよりも、いかに営業マンが安心して、満足を提供できる仕組みをつくるかに力を注いだ」として、都内であれば「電話をすれば、そば屋よりも早く駆けつける」といわれるサポート・保守体制を構築した例などを引き合いに出した。
さらに、「経営には病的なほど心配性であることが必要」として、「大丈夫という言葉は、やたらに使うものではない。また、戦術、戦略には、ベストというものはない。常にベターであり、さらにいいものがあるという発想でいなればならない」という大塚流の経営手法も披露した。
大塚氏自らの心配性の一端として、例をあげたのが、昨年2月に移転した新本社ビル。「最新の工法を使い、100年持つことを前提に建設した。関東大震災よりも大きな大地震が来ても崩れない。そして、大地震が満潮時に起こった場合にも高潮が入り込まない設計とした」と、まさに病的な心配性であることを示すエピソードを披露した。
また、時間に遅れることが最も嫌なこととする大塚氏は、「会合には5分前には到着するようにするのが鉄則。そのためには15分前には着くような段取りをすべき。完全に守るというのではあれば30分前には現地の近くにいなくてはならない。私は、だいたい30分ぐらい前に着いて、近くの横道で車を止めて待っている。自社の支店や現場への訪問の際もそうだ。自分が待っても、人を待たせてはいけない。これは大塚商会のいい伝統として引き継いでもらいたい」とした。
大塚商会本社3階の大会議室には、200人を越える業界関係者が訪れ、大塚実氏の経営哲学を学ぼうと、多くの人が真剣に耳を傾けていた。
第2部は、同社本社近くのホテルメトロポリタンエドモンドに場所を移して懇親会が行われ、さらに多くの関係者が訪れた。
懇親会の最後に挨拶に立った大塚実氏は、「私は小心者で、どうしても人や会社に気を遣いすぎる傾向があるので、残された時間は、まったく気を遣わず、十分に楽しみたい。大好きな旅行もしたい。ですから、業界の公的な仕事などには誘わないでください」と語り、会場内の笑いと喝采を浴びていた。
なお、参加者には、大塚実氏の半生をまとめた非売品の書籍「風雪を越えて~大塚実のあゆみ」が配布された。
大塚実氏は、1922年(大正11年)栃木県益子町出身の81歳。理研光学(現・リコー)を経て、1961年(昭和38年)大塚商会を創業。コピー機、FAXをはじめとするOA機器の販売、コンピュータシステム、パソコンの販売などで事業を拡大し、2000年に東証一部に上場。2001年には、社長の座を大塚裕司氏に譲り、自らは代表取締役会長に就任。今年3月に相談役名誉会長に就任した。社団法人日本コンピュータシステム販売店協会会長を務めたほか、2002年には平成14年度情報化促進貢献者として経済産業省大臣賞を受賞している。
■ URL
株式会社大塚商会
http://www.otsuka-shokai.co.jp/
( 大河原 克行 )
2004/05/19 10:08
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