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大阪ガスの給湯器用リモコンに活かされたWebサービス技術

~IBM Software World 2004 講演

日本アイ・ビー・エム株式会社 ICPコンサルティングITスペシャリスト テクノロジーエバンジェリスト 米持 幸寿氏

Webサービスの散在を防ぐ「エンタープライズ・サービスバス」の概念
 5月18・19の両日、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)主催によるイベント「IBM Software World 2004」が東京国際フォーラムで開催され、19日には日本アイ・ビー・エム株式会社 ICPコンサルティングITスペシャリストで、テクノロジーエバンジェリストの米持 幸寿氏と、株式会社オージス総研 ITアーキテクト 橋本 誠氏により、「Webサービスの最新動向と今後の方向性 ユーザー事例にみるJAX-RPCの適用性」のテーマで講演が行われた。

 米持氏は「Webサービスの根底は、SOA(サービスオリエンテッドアーキテクチャ)である」とした。「SOAの概念は1960年代からあり、CORBA、DCOM、EJBなどはこれにあたる」と述べ、Webサービスが「HTTPとXML、インターネットを使ってSOAを実現するもの」との見方を提示した。

 「モジュール単位でつなぎ合わせてシステムを構築するWebサービスでは、個々のサービスが可視化され、変化に対応して柔軟に形を変えられるようになる」ため、合併統合やアウトソースなど、流動的にビジネスする時代の要求にあったものといえる。

 一方で「サービスをつないでいくと、何がどこにあるか、どのプロトコルで接続するかが把握できないスパゲッティ状態になる」とした同氏は、これを解消する考え方として「すべてのサービスを中心となるHubを中継する“エンタープライズ・サービスバス”」を紹介した。

 次に同氏はWebサービスのメリットとして異機種混在での利用に触れ、「業界標準のベンダーを選べば、他社のシステムを組み合わせて使える」とした。同社のWebSphereでは、IBMとマイクロソフトがWebサービスの標準仕様として共同で策定した「BPEL4WS」を、いち早くサポートしている。


株式会社オージス総研 ITアーキテクト 橋本 誠氏

大阪ガスの給湯器用リモコン「CHリモコン」

CHリモコンでガス利用状況をリアルタイム表示するWebサービスのシステム構成
 次に登壇した橋本氏の所属する株式会社オージス総研は、大阪ガス100%出資の情報システム子会社。同氏は、疎結合によりシステム間連携が簡単に行える点、ファイアウォールを超えたサービス提供が可能で、携帯電話やPDAでもイントラネットへアクセスできる点、またオープン標準の技術により相互接続が比較的簡単で、インターフェイスがWSDLにより厳密に定義でき、実装とも分離されていることからWebサービスの技術には早くから期待していたという。

 同社では2002年に、Linuxザウルスと社内スケジューラを.NETを介して連携するシステムを開発、その後同氏の本業であるJ2EEフレームワーク開発を通じ、その稼働環境となったWebSphere Application Server(以下、WAS)5ベータ版の評価を通じ、今回の事例につながったという。

 その事例とは、大阪ガスの給湯器用リモコン「CHリモコン」のアプリケーションとして、さまざまな情報提供を行うというもの。現在はまだリリースされていないものの、大阪ガス開催のイベントでデモンストレーションが行われたほか、200~400世帯規模の大型マンションで、すでに採用が決まっているとのことだ。

 CHリモコンは、Linuxベースの組み込み機器で、WebブラウザとしてNetFrontを搭載している。ここに顧客ごとのリアルタイムなガスの利用状況、また台所に設置されることから料理のレシピなども表示するという。

 この利用料金の表示で、Webサービスが用いられている。実装ではJ2EEの標準技術であるJAX-RPC(JSR101)、デプロイメント(JSR109)が用いられており、サービスのインターフェイスはWSDLを利用してイントラネット内に公開されている。「こうした標準実装を使うことでアプリケーションサーバーを選ばず、最小限の作業で稼働できる」という。クライアントからの通信では「ベンダー依存がなく、ポートも動的」なDynamic Proxyが利用されている。

 顧客ごとの使用量や料金といった情報は、同社内のメインフレームで一括管理されている。Webサービスならばこうしたレガシーアプリケーションをラッピングできるというわけだ。またセキュリティが考慮され、WS-Securityによるベーシック認証も用いられているほか、「将来的な他アプリケーションの公開を踏まえ、暗号化、電子署名の検証もしている」とのことだ。

 実際のサービス開発は1月から始められ、3月末にはテストが行われた。レスポンスに関しては「インターネット越しのWebサービスによるオーバーヘッドはなく、まったく問題ない」という。なお、このWebサービスは通常のPCからも閲覧することが可能だ。

 今後は「現在はひとつのWebサービスが、今後増加したときにどう管理し、再利用していくかが課題になる」という。また「メインフレームをオープン系に移行した際に、影響を受けないのが理想」とした。

 さらに同社では、従来と違うSOAコンセプトを取り入れた開発プロセスを定着させるべく、さまざまな議論を行っているという。同氏は「ビジネスレベルのモニタリング、いわゆるBAMにより業務フローの最適化を行ったり、モデリングにより上流でクラス図やユースケース図、アクティビティを定義し、これをマッピングして実装に移す手順を明確化、自動化できるソリューションを近い将来提供したい」と語った。



URL
  IBM Software World 2004
  http://www-6.ibm.com/jp/software/isw/
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  株式会社オージス総研
  http://www.ogis-ri.co.jp/
  大阪ガス株式会社
  http://www.osakagas.co.jp/


( 岩崎 宰守 )
2004/05/20 00:00

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