5月18・19の両日、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)主催によるイベント「IBM Software World 2004」が東京国際フォーラムで開催され、19日には京セラコミュニケーションシステム株式会社(以下、KCCS)ITアウトソーシング事業本部 アウトソーシング事業部 アウトソーシング部 部長の谷口 直樹氏により「Notes/Dominoマイグレーション成功の秘訣 ~弊社顧客事例から知り得た実践的プロセス~」のテーマで講演が行われた。
KCCSは、京セラ株式会社情報システム事業部が独立した子会社として1995年に設立され、2001年にKDDIエンジニアリング株式会社と合併している。講演では、同社が扱った大手製造業の事例として、Notes/DominoからJ2EE環境へのマイグレーションについて語られた。
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京セラコミュニケーションシステム株式会社 ITアウトソーシング事業本部 アウトソーシング事業部 アウトソーシング部 部長 谷口 直樹氏
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紹介された事例はNotes/Domino 4.6からの移行だが「単純なバージョンサポート終了だけが目的ではない」という。同氏は「IT抜きで経営は成り立たなくなり、情報共有のスピード化は、企業間競争を勝ち抜くテーマになっている」とした。そして「さまざまな生い立ちを持つシステムに対して、統合的にアクセスできる基盤作りが求められた」と述べた。
一方で情報システムの発展に伴い、「集中した情報に対して携帯電話でどこからでもアクセスできるようになり、ユーザー利用状況の把握とアクセス管理、また情報漏えい対策が必要になった」という。さらにこれまでは部門ごとに最適化され、それぞれでサーバー管理されていたシステムを全社規模で最適化し、「部門をまたがるプロジェクトなどでのコミュニケーション向上と、管理コストを削減する」ことも目指された。
このほか、ポータルにSSO認証を組み合わせたアカウント統合による利便性向上と、組織変更への対応や複数システム構築時のコスト削減、さらに2万ユーザーからなるクライアント環境の管理コストも課題に挙げられた。
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移行は現状分析から移行環境の計画・設計、実際のデータ移行の順で行われた
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Notes資産を掲示板系/ワークフロー/メール/個別アプリの4つに分類、それぞれの方法で移行された
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具体的な移行の手順。設計データを解析し、設定とスキーマの定義を経てJSPを生成する
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実際のシステム移行にあたっては、1)Notes/Domino 6/6.5へのバージョンアップ、2)Notes/Domino 6/6.5のWebシステム、3)J2EEベースのWebシステム、以上3つのパターンが想定されたという。1)ではもっとも短期かつ低い移行コストとなるが、「全社最適の目的にあわない」とされた。また「将来的にグループ全体で10万人規模の共通基盤とする」ことも視野に入れられたことから、拡張性に優れ、将来的なシステム連携でも有利なJ2EEへの移行が選択された。
実際にはサーバーを段階移行する必要が生じたことから、過渡期の運用ステップとして、メールの共存、アドレス帳やアプリケーションの連携する混在環境も検討されたほか、Notes環境用のパッケージアプリケーションに対応するため、Notes/Domino 6.5へバージョンアップされた環境が一部残された。
これらの要件をクリアしてもなお、新システム移行時に壁となるのが、既存資産の移行の必要性だ。特にNotesではユーザーが容易にデータベースを作成できる点がメリットだが、移行の際にはこれが足かせになる。今回の例では、データベースの仕分け、棚卸の後でも、移行の数は1,000以上になった。短期間・低コストで移行を行うためにも、「この移行をどれだけ自動化できるか」が具体的な移行作業で大きなウエイトを占めたという。
このうち800は、「掲示板や文書データベースなど参照がメインのもの」で、これらはJ2EE対応のパッケージグループウェアへ移行された。移行の手順としては「単純なXMLのエクスポート/インポート」で済み、添付ファイルや埋め込みオブジェクトもそのまま移行が可能だという。
残り200のうち大部分を占めるワークフローの移行では、「要件を満たすワークフローエンジンを用い、再構築した」という。ここではNotesからアプリケーションの設計情報をXMLデータ出力して解析し、移行ツールで各種設定をしてJSPを生成する手順がとられた。
またNotesのメール環境はインターネットメールへとそのまま移行されたほか、Webメール環境もあわせて提供した。個別仕様のその他業務系アプリケーションについては、IBMの「ノーツ移行ツール」で自動変換してJava環境へ移行し、その後カスタマイズが行われた。
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移行元となるNotesの掲示板画面
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XMLの設計情報データを介してNotes掲示板をグループウェアに移行
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掲示板データの入出力のみで、グループウェアのインターフェイスを生かすことも可能
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同氏はこの移行について「工数とコストを減らすため、パッケージを有効に使うことがポイントになっている」とした。利用されたのは同社の開発した「GreenOffice/GreenWare」というグループウェア、ワークフローエンジンとのこと。また「Notesのデータ解析は弊社の得意とする部分」とのことで、こうした移行サービスを提供しているほか、Lotus Workplaceとの連携サービスも提供予定とのことだ。
最後に移行の効果は現在算定中としながらも、「月額数千万円単位でコストを削減できている」との声が寄せられているとのことだ。
■ URL
IBM Software World 2004
http://www-6.ibm.com/jp/software/isw/
京セラコミュニケーションシステム株式会社
http://www.kccs.co.jp/
( 岩崎 宰守 )
2004/05/21 00:09
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