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日本IBM米持氏「2,000枚の画面のために、2,000回コードを書いてはダメ」

~IBM Software World 2004 講演

 5月18・19の両日、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)主催によるイベント「IBM Software World 2004」が東京国際フォーラムで開催され、19日には日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業 テクノロジーエバンジェリストの米持 幸寿氏により、「いまこそ学ぶ、J2EEテクノロジの真意 -IT技術者が知っておくべき基本」と題して講演が行われた。


日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業 テクノロジーエバンジェリスト 米持 幸寿氏
 講演では「J2EEがなぜこのような仕様になっているのか」、また「技術者はどのように使いこなさなければいけないのか」といったJ2EEの基礎が解説された。「Javaはこういう仕様なので、こう使いなさいと書かれた教科書は多いですが、なぜそうなったのかということが書かれているものは少ないです。きちんと理解していなければ、Javaの何が優れているのかがわからず、Java以外の方法に浮気したりしてしまうのです」と米持氏は語る。

 そもそも、「なぜJavaなのか?」というもっとも基本的な疑問には、

1.ベンダーが変わっても同じアプリケーションが動作するため、アプリケーションが長期間運用できる

2.JVMが動作するコンピュータであれば同じアプリケーションが動作するため、さまざまなアーキテクチャのコンピュータが動作する環境でも利用可能である

3.特定の企業にコントロールされない業界標準の仕様である

4.厳格なオブジェクト指向言語であるため、プログラマーの「勝手」や「勘違い」によるプログラミングを禁止できる

といった4つのメリットが列挙された。


 このメリットの1~3は非常に密接に関係している。J2EEの仕様は、多くの企業や団体によって標準化が進められていため、データベースやアプリケーションサーバーなどを、異なるベンダーのものに変更しても、J2EEに対応していれば開発したアプリケーションの動作が保証される。またアプリケーションを実行させるJVMが動作する環境があれば、どのようなアーキテクチャのコンピュータであっても動作可能である。そしてこれらのメリットは、特定のベンダーによって勝手に仕様が変更されたり、サポートが打ち切られたりという心配をせずに利用できることでもある。

 4番目のメリットに関して言えば、ルールを厳格にすることで、身勝手な振る舞いをするアプリケーションの開発を防止したり、他人にメンテナンスできないコードの記述を防止できる。これは企業内で複数の技術者によって開発する場合に重大な問題である。

 次にサーブレットの登場から始まるJ2EEの仕様と発展の歴史に触れた後、MVC(Model View Control)モデルの確立について解説が行われた。その中で「J2EEのアプリケーションは企業において、たくさんの技術者によって開発されます。画面を作成する人、画面制御のコードを書く人、ビジネスロジックを書く人とそれぞれが得意な分野を担当することになります。そのためには、UIとロジックを分離できるMVCモデルが大きな意味をもつのです」と語った。

 さらにMVCモデルの最大の利点として、アプリケーションの再利用が容易になることについて触れ、「2,000枚の画面を持つアプリケーションを開発するために、画面を制御するコードを2,000回書くようでは駄目なんです。同じような動作をするなら、2,000でなく1つの制御コードですませるのがMVCモデルのメリットです。2,000枚+2,000のコードと比較すれば、コストが削減できる上に、メンテナンス性も向上します」と強調。

 また多様なアプリケーションを作成するためには共通部品を再利用することも必要であり、アプリケーションの共通部分を目的ごとに切り出すことができれば、フレームワーク化することが可能であるとしている。

 さらにJ2EEにおいて分散トランザクションをサポートする技術としてEJBがあり、企業の基幹業務の全体生産性を向上する上で欠かすことのできない技術であることを強調。その上で「EJBというと、重いし、難しそうだし、使いにくいんじゃないかというイメージがあります。しかし、実際に使ってみるとそんなに難しくないことはわかります。一度使ってみたら、EJBなしに開発できないと思うでしょう」と述べた。

 最後に米持氏はJ2EEの存在意義として、企業システムに必要なすべてのプログラミングモデルを各社が均一に提供する点、コンポーネントモデルや分散モデルを踏襲することで基幹業務のシステム化が可能になる点を挙げた。開発上の役割を意識したアーキテクチャによって、開発での作業を分担でき、J2EEによって「設計・開発・テスト・運用・保守といったシステムのサイクルのすべてを効率化する」と述べた。



URL
  IBM Software World 2004
  http://www-6.ibm.com/jp/software/isw/
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/


( 北原 静香 )
2004/05/21 00:08

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