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米Microsoftフェルプス氏「特許に基づくクロスライセンス契約で技術革新を促していく」


 マイクロソフト株式会社は5月21日、国内大手IT企業各社とのクロスライセンス締結交渉のため来日している米Microsoft 知的財産権担当コーポレート バイスプレジデント兼副ゼネラルカウンシルのマーシャル・フェルプス氏による、同社の知的財産(IP)戦略に関するプレス向け説明会を開催した。

 フェルプス氏は、28年間米IBMに勤務し、知的財産権/ライセンス担当バイス プレジデントを務めた後、2003年6月に米Microsoftへ入社して特許、著作権、トレードシークレットなどの知的財産グループ全体を統括している。


米Microsoft 知的財産権担当コーポレート バイスプレジデント兼副ゼネラルカウンシル マーシャル・フェルプス氏
 米Microsoftは現在は約3,500件の特許を取得し、約7,000件を申請中だという。同氏は「国内日本の大きな企業と比較するはないが、ビジネスの範囲がOSとソフトウェアに限定されるため、分野は集中している」とした。

 そして「研究開発に年間70億ドルを投資している企業は、他にないだろう」と述べ、これがIPポートフォリオの源泉になっているとした。現在でもこれを背景に、Cisco、IBM、HP、SGI、Xerox、SAP、Siemens、富士通といった企業とクロスライセンス契約を結んでいるが、同氏は幅広く多様な数千ものクロスライセンス契約を持つ企業としてIBMやベル研究所の名を上げ、「今後は毎年3,000程度の特許申請を行い、3~4年のうちにIPポートフォリオを確立したい」と語った。

 米Microsoftでは2003年12月3日にフォント表示技術であるClearType、FATファイルシステム、XMLスキーマに関する新しいライセンスプログラムを発表、あわせてOEMライセンス契約から特許権費主張に関するNAP(Non-Assertion of Patenes)条項を削除した。

 同氏は、「NAP条項が書かれた1993年当時に、Microsoftは特許を保有しておらず、特許を保有する他ベンダーとの関係において意味を持っていた」とした。しかしMicrosoftが数多くの特許を保有する現在においては、「NAP条項は陳腐化している」とし、「2月にこの条項を削除して、クロスライセンス契約に基づくビジネスへと、新たなモデルを模索している」と語った。同氏は「日本企業の間でも知的財産の重要性が認識され始めている」と述べており、今回の来日もその一環といえる。またライセンスプログラムについては、「今後も5つ程度の発表を予定している」とした。

 同氏はMicrosoftのクロスライセンス契約について「非常に透明度を高く、各企業を公正に、一貫した形で行う」と語り、「IT業界の特徴として発明が基本にあるため、互いの技術を利用できるクロスライセンス契約は関係者にとって良い方向のはず。IT企業が責任を持ってそれぞれを共有できる環境を望んでいる」と述べた。

 またユーザーにとっても「最新技術による製品を手にできるだけでなく、製品間の互換性の問題でもメリットがある」とした。同氏はMicrosoftが現在進めようとしているNAP削除し、その代わりとしてクロスライセンス締結する戦略の転換について「Microsoftではオープンなビジネスを標榜している。高品質のIPポートフォリオを維持してゆき、IBM、HP、富士通といった世界的な企業と協力することで技術進歩を促すことで顧客の将来を保護するもの」と明言した。

 こうした動きについては「Microsoftは成熟した企業としての役割を果たそうとしている」との見方を示した。同氏は、「これまでは、企業としてあまりにも急速に大きくなったがために問題が起きていた」とし、「その大きさを自覚すれば、世界と直面する方法は今までと変わらざるを得ない」と述べた。


Microsoft Asia Ltd. エグゼクティブ オフィサー 法務・政策統括本部長 平野 高志氏
 「こうした考えにバルマー、ゲイツが同意、賛同しなければ、私がMicrosoftに入社することはなかっただろう」と述べた同氏は、IBM在職中にも、米政府や司法省、またEUや日本当局との問題があったとし、「まるで映画の続きを見ているようだ」と述べた。そして「IBMで経験した多くのことはMicrosoftの現在に関係している、そこで大きな貢献ができると思っている」と語った。

 Microsoft Asia Ltd. エグゼクティブ オフィサー 法務・政策統括本部長で、国内の法務県連を統括する平野 高志氏は、国内独自のIPに関する取り組みを語った。「IPは後ろに技術があるから価値がある」とした同氏は、独自の研究開発を進めている点に続き、大学との連携、標準化団体への参画を挙げた。また「IPをどう強化すれば国内企業が国際競争力を持てるかについての特別な研究を支援する」とした。また政策でも重要な役割を果たすべく、国内主要企業と定期的な意見交換を行っているとのことだ。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/

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( 岩崎 宰守 )
2004/05/21 14:09

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