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「Asianuxでアジアンスタンダードを実現する」ミラクル・リナックスの戦略


ミラクル・リナックス マーケティング部長 児玉 崇氏
 日本オラクル株式会社は5月28日、プレス、アナリスト向けのアップデイトセミナーを開催した。この中で同社のパートナーであるミラクル・リナックス株式会社のマーケティング部長 児玉 崇氏が再三にわたって強調したのは、「アジア市場へのフォーカス」だ。

 現在、各国の政府機関はLinuxをはじめとするオープンソースに対して、大きな興味を示している。これはアジアでも同じで、特定ベンダに依存することへの危機感や、地場産業の振興、といったことから、オープンソースを支援する国は多い。また、企業へのLinuxの浸透度に関しては今さら触れるまでもなく、非常に進んできている。

 一方、市場規模の観点から見た場合、世界のGDPの50%強が欧米で占められ、アジアの割合は20%程度に過ぎない。しかし、「中国は毎年8%強の成長を遂げており、やがては日本と同じ割合になるだろう」(児玉氏)ということを考慮に入れた場合、日・中・韓で1つの巨大マーケットを構成するようになる、と同氏は主張する。

 しかし、こうしたアジアにおけるLinux市場を見た場合、核となる「統一ディストリビューションがない」(児玉氏)というのが現状だ。そこでミラクル・リナックスでは、中国の最大手ディストリビュータであり、デスクトップLinuxに強いRed Flag Softwareと提携。アジアのリクエストを満足させられる、政府の要望をインプリメントできる、そんなディストリビューションを目指し、Asianuxのプロジェクトをスタートさせた。

 このAsianuxの特徴は、アジアにおける機能要件を満たしたものを開発し、共通した製品を各国で利用できる「Common(共通)」、アジア各国の企業がノウハウを持ち寄る「Collaboration(協調)」、完成されたものを官公庁プロジェクトやオープンソースコミュニティへ広く還元するという「Contribution(貢献)」の「3C」だと述べた児玉氏は、Asianuxを「オープンソースであるがゆえにできるプロジェクトだ」と評価する。なぜなら、「クローズドソースのソフトウェアでは、著作権、開発物の(厳密な)帰属や、レベニューシェアをどうする、といった問題が必ず出てきてしまう。しかし、GPL配下にあるオープンソースであれば、そういったことに縛られる必要がなくなる」というのだ。


グローバルスタンダードからアジアンスタンダードへ

 また、Asianuxでは開発のみならず、製品の検証や2次サポートも北京にあるLinux Joint Development Centerで行われるが、実際の販売や1次サポートは各国のディストリビュータに任せられ、各社がそれぞれの製品としてAsianuxを販売する形をとる。ここで面白いのが、各国のビジネススキームや価格はお互いに干渉しない、と決められていること。それぞれの国の価値、文化にあわせて、その国にあった販売方法で販売が行われることになっている。

 日本では、ミラクル・リナックスが「MIRACLE LINUX 3.0」として6月末から販売するが、「品質や日本独自の商習慣、機能への要望が強い」(児玉氏)日本市場を考慮し、「顧客満足度の向上」を基本戦略として、日本のユーザーにあったものを提供していくという。特に品質に関しては「(Asianuxは)日本語で動く部分は日本人が開発・テストを担当し、中国語部分は中国人がそれを行う。その文化で育ったネイティブの人間が作業を行うことで品質は向上できる」と述べ、Asianuxの長所を強調した。

 続けて「グローバルスタンダードがすべていいとは限らない。アジアの一員として、日本人として、アジアンスタンダードを作っていく」と述べた児玉氏は、「業務システムだけでなく、自動販売機、ATM、POSといったものをLinuxに変えようという動きが出てきている。我々の知らないところでもLinuxが使われるような時代が来ているということだ」と述べ、説明を締めくくった。



URL
  ミラクル・リナックス株式会社
  http://www.miraclelinux.com/

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( 石井 一志 )
2004/05/28 18:25

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