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「基幹業務システムの利用が広まるも満足度は低い」JUAS調査

the Microsoft Conference 2004 キーノートセッション

社団法人 日本情報システム・ユーザー協会専務理事 細川泰秀氏

企業のIT投資意欲
 マイクロソフト株式会社が主催する「the Microsoft Conference 2004」のキーノートセッションにおいて6月2日、社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(以下、JUAS)専務理事の細川泰秀氏が「これからのITを考える」と題した講演を行い、JUASが独自に行ったIT投資に関する調査結果の報告を行った。

 JUASでは毎年、ユーザー企業を対象にIT動向の調査を行っており、2003年で9回目を数える。今回の調査では特に「システムの信頼性、安定性の確保」「IT予算構造の転換」「新しい経営目標のためのIT投資」の3つを重点テーマに、従業員数500名規模を中心とした、延べ1,800社のユーザー企業のIT部門長や利用部門担当者などに対して行われた。

 まずIT予算の平均金額(新規+保守運用)について、2002年度と比較して2003年度は全業種平均で10%増、特に金融業では27%と大幅な増加がみられ、これを除くと3%の伸長となった。また2004年度の予測としては、新規では「増加」がやや上回ったのに対し、保守運用費は「減少」との回答が大幅に上回っており、「これほどはっきりと数字に現れたのは初めて」(細川氏)とのこと。なお、2003年度でIT予算の内、新規が占める割合は平均で42%。多くのIT管理者が「新規と保守運用が1:1」を理想としているが、「企業によっては新規に60%以上といったところもある」という。


スケジュールの乱れが不完全なシステムを生む

基幹業務システムの満足度

世界と日本の開発における遅延発生の比較
 基幹業務システムの導入状況については、人事・総務/財務会計を中心に80%以上がすでに導入済みと回答し、中でもパッケージの導入比率が、2000年で13%であったのに対し、2003年には44%と年々着実に増加しているという。しかしシステムの満足度はどの部門も低く、細川氏は「パッケージの利用率は今後さらに増加するが、利用部門が活用しきれていないのが現状」と分析する。

 パッケージの利用比率が増えているのは、独自開発と比較して「構築期間が短い」「初期導入コストが少ない」といった優位性があるからだ。しかし利用年数や保守運用費を含めたTCOではどうだろうか。独自開発は初期費用が大きいためできるだけ長期間利用したいという意向もあり、現在までの利用年数と今後の予定を合わせると平均で17年の利用を見込んでいる。これに対しパッケージは平均11年とかなりの開きが出る。さらに保守運用費は独自開発が5年間で導入費の30~55%であったのに対し、パッケージは5年間で100%と導入費とほぼ同額の保守運用費がかかっている。導入費に差を換算すると独自開発とパッケージの保守運用費はあまり変わらないようだ。

 システムの満足度が低い理由は何だろうか。細川氏は、評価の低いシステムが生まれる要素として(1)導入時の要件定義が不十分、(2)開発・導入の遅延、(3)評価基準の甘さを指摘する。特に遅延の多さについては日本固有の問題のようで、半数以上のプロジェクトで何らかの遅延が発生しているとのこと。遅延理由の多くは業者と利用者側のコミュニケーション不足によるものであり、スケジュールの乱れが不完全なシステムが生まれる原因となる。細川氏は、ある経営者が「要件定義の期間を守らない場合はシステム開発を実施しない」と宣言してプロジェクトを開始させたことを例に挙げ、「それくらい厳しい姿勢で臨む必要がある」と強調した。



URL
  社団法人 日本情報システム・ユーザー協会
  http://www.juas.or.jp/

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  ・ JUAS角田氏「2003年度のIT投資は、対前年度比で上向き」(2004/02/24)


( 朝夷 剛士 )
2004/06/02 20:31

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