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米PeopleSoft、J.D. Edwardsとの合併に伴う新事業戦略を発表


 米PeopleSoftと英J.D. Edwardsは、2003年9月に合併し、“PeopleSoft”の名称を引き継いだ新組織として生まれ変わった。日本ピープルソフト株式会社では6月3日、これに伴う同社の新たな製品ラインアップと、その市場セグメントについてのプレス向け説明会を行った。


業種・規模別に分かれた新たな3つの製品ラインアップ

米PeopleSoft 日本アジアパシフィック プロダクト&インダストリ ソリューション ディレクター レイ・クロス氏
 米PeopleSoft 日本アジアパシフィック プロダクト&インダストリ ソリューション ディレクターで、太平洋地域プロダクト・マーケティングの統括者であるレイ・クロス氏は、まず両社の合併の理由について「業種別・企業規模別に、多様な選択肢を用意するため」とした。

 これにより同社では、、旧PeopleSoft 8である「PeopleSoft Enterprise」、旧J.D. Edwards 5の「PeopleSoft EnterpriseOne」、旧WorldSoftwareの「PeopleSoft World」と3つの製品ラインアップを抱えることになった。

 同氏によれば、20を超える同社の業種別製品は、「人の集約型である銀行・保険・公共・交通・航空・電気通信といったサービス産業と、製造・流通を中心とした産業の2つのカテゴリーに大別される」という。同社では、このサービス産業向けとしてEnterpriseを、製造・流通業向けにはEnterpriseOneを提供する。

 この理由として「Enterpriseはベストブリードソフトウェアで、CRMや財務といった主要な機能を個別に導入できる」特徴を挙げ、コアに各機能を統合していく業界の特性にあっているとした。一方のEnterpriseOneは、「シングルデータベースによる単一スイートとして、マーケティングからサプライチェーン、受注や販売の管理といった一連の流れを緊密に統合できるよう設計されている」とした。

 またEnterpriseOneについては、「ひとつのスイートにより迅速な導入が可能になるため、中堅企業のニーズにもあっている」とした。そしてWorldは、さらに小規模な企業向けとなっており、同社ではIBMと共同で、ハード、ソフト、導入までをセットにしたオファリング「World Express」を開発している。これは「10万ドル以下、15日間での導入が可能」とのことだ。

 「短期導入をテンプレートにより実現しているSAP、Oracleと比べても、もっとも短期間に導入できる。またテンプレートでは顧客の要件に対応できず、カスタマイズ開発せざるを得ない場合もある」と優位を強調するとともに、3つのラインアップがそれぞれ違う市場を対象にしているとした。


J.D. Edwardsとの合併によるメリット

 通常は複数の製品ラインを抱えると、開発やサポートなどにより多くのコストを割かねばならないと考えがちだが、「開発と一口にいっても、顧客の機能要件に対するリサーチと要件整理、ソフトウェアの設計、そして実際にプログラムを書き、テスト、アーリーアダプターへの提供によるフィードバックなど、さまざまな段階がある」とした。

 このうち3製品それぞれに行う必要があるのは「設計後にプログラムを書くこと」だけで、これは一連のプロセスのうち10~15%のリソースしか占めていないとのことだ。また同社のソフトウェアはコンポーネント型のため、コードを共通化できる部分もあるという。同氏は「PeopleSoftにはサービス部門、J.D. Edwardsには製造物流とそれぞれに強みがあった」と合併のメリットを述べた。

 またJ.D. EdwardsではCRMやSCM、PeopleSoftではアセットマネジメントの機能強化を予定していたが、これら不足の機能を互いがすでに持っていたことも、合併の大きな要因になったという。「一から開発していたら、市場に認められるまで4年かかる製品を12カ月で導入できるなど、いいシナジー効果を発揮できている」とした。既存顧客に対しては、「3つの製品について、合併直後に今後18カ月のロードマップを提示した」という。今後は「両方のファミリーから強みを抽出して、統合を図っている」とのことだ。

 統合による開発部門の整理統合では、約1.6~2億ドルのコストも削減した。一方で同社では製品開発に8億ドルを投資し、今後は1,000人体制で「TCOのうちでも大きな割合を占める導入、運用、サポートにかかわる人件費を70%削減することを目指す」という。


オープン標準に基づいたソフトウェアの強み

製品を問わず、人・データ・プロセスをポータルベースでつなぐ「AppConnect」

多様な環境に対応するため、既存ITインフラの再利用も可能だ
 同社製品の強みについて同氏は、先の短期導入に加えてコンポーネントによる柔軟性・拡張性を挙げた。同社のプロダクトはオープン標準の技術に基づいており、3製品ともに共通のインターフェイスでポータル、ビジネス統合、分析の機能を提供する「AppConnect」を介して、ビジネスプロセスの機能を利用できる。このため「グループ企業内でEnterpriseとWorldを導入しても問題ない」という。

 またWebブラウザから全機能が利用できるため、ユーザー教育をさほど行わずに実際に利用することができるという。またクライアントのメンテナンスコストも削減できる。同氏によれば、これに導入の短期化をはじめとしたメリットにより、低いTCOを実現しているという。米調査会社META Groupによれば、SAPと比較して51%、Oracleとの比較でも25%TCOが低いとのこと。また同調査では顧客満足度についてもOracleと比較して46%高いとの結果が出ている。

 また同社の製品はWindows、Linux、各種UNIXからOS/400までのOS、DB2、Oracle、SQL Serverといったデータベース、WebLogic、WebSphereといったアプリケーションサーバー、また各種Webブラウザなど、多様な環境での動作をサポートする。既存ITインフラを再利用する選択が可能な点は、「国内企業にとっても大きなメリットになるだろう」とした。日本国内では、J.D. Edwardsが1990年から、PeopleSoftは1996年から事業を展開していた。

 また同氏は「われわれの顧客である限り、サポートは無期限で行う」とした。これは特別なチャージなしに提供されるという。同氏は「競合他社のサポートは平均で2~4年」としたが、最近BEAでは7年、Microsoftでは10年とするなど、エンタープライズソフトベンダーの間にサポート期間を延長する動きが見られる。同社が無期限に提供するのは技術サポートのみで、修正アップデートは4年、アップデート期限は5年、税制を含む法制度への対応は6年となるが、“無期限”というのは特徴的といえる。



URL
  日本ピープルソフト株式会社
  http://www.peoplesoft.co.jp/


( 岩崎 宰守 )
2004/06/04 08:39

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