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米Sun Microsystems プロセッサエンジニアリング担当バイスプレジデント マーク・トレンブレイ氏
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RFIDなどによりネットワーク接続デバイスは2012年に110億に達する
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サン・マイクロシステムズ株式会社は6月8日、プライベートイベント「Network Computing 2004 Summer」を開催し、米Sun Microsystems プロセッサエンジニアリング担当バイスプレジデントのマーク・トレンブレイ氏が「Sunのプロセッサ戦略“スループット・コンピューティングとCMT(チップレベル・マルチ・スレッディング)テクノロジー”」と題する基調講演を行った。
同氏はまず、「2012年にはRFIDの拡大などにより、110億もののデバイスがネットワークに接続される」との見通しを披露、「その間、ムーアの法則では8年後に25倍~40倍の性能向上が予想される」とした。
しかし「ローカルからC/S型を経た現在のシステムと、多くのデバイスにより、複雑化とともに爆発的な成長を遂げた世界では、新たなインフラが必要になるだろう」とした。そこでは「アクセスエッジでのサービスレベルが問題になるため、グローバルネットワーク全体を監視してのネットワークアクセレレーションが必要になる」との見方を示した。
そんななか「膨大な情報が集中、処理されるコア部分には、適切なハードウェア、ソフトウェアがなければ質の高いサービスを提供できない」と述べた同氏は、「スループットコンピューティングによりこれが解決できる」とした。
同社では1995年からJavaでのサービス提供を目指し、R&Dに多くの投資を行ってきた。「今後2~3年で15~30倍の性能向上をもたらすスループットコンピューティングはその結果生み出された」という。
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SPARCプロセッサのロードマップ
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CMTの技術により、1コアあたり4スレッド、1シリコンには8コア、32スレッドの並列処理を可能とする
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シングルスレッド処理能力と秒間トランザクション処理数の縦軸、データとネットワークを横軸にしたSPARCプロセッサファミリーの位置づけ
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米Sunでは6月2日に、富士通株式会社との提携強化を発表している。両社は1986年から提携を行っており、今回の内容は次期SPARC/Solarisサーバーの共同開発となっている。同氏はこれに受け、スループットコンピューティングの源とも言えるSPARCプロセッサの今後のロードマップを解説した。
同氏によれば、この提携によりSPARCは3つの製品ラインになるという。このうち富士通と開発を進めるのが「SPARC 64V」からの流れだ。UltraSPARC IIIからUltraSPARC IV、UltraSPARC IV+までで打ち止めとなるラインの「データベースやアプリケーションサーバー、OLAPエンジンなどのデータ処理を、より特化したスーパーセット」との位置づけ。なお両社では「2006年をめどに、この2つのラインを融合していく」という。
一方のUltraSPARC IIIi、UltraSPARC IIIi+は、「Webサーバー、検索、ネットワークアクセレレーションといったネットワークにフォーカス」したもの。シングルスレッドでの処理能力には重きを置かず、秒間トランザクション処理を重視している。
スループットコンピューティングを実現するCMT(チップレベル・マルチスレッディング)技術は、この流れの中で開発された。同氏はCPUの基本的なアーキテクチャとして「100の処理命令のうち、1つでもキャッシュミスがあれば、これをメインメモリから再読込する間に、処理の待ち時間が発生してサーバーはアイドル状態になる」とした。
CMTでは「こうしたスレッドストールを検出して、処理をコアあたり4つのスレッドに割り当てて効率化するもの」だという。これにより「稼動率は100%に限りなく近づき、シングルスレッドあたりの処理能力に依存しないため、消費電力も低く抑えられる」。
また「スレッド間での同期を行うため、各スレッドを処理で埋められなくとも、複数にコピーして処理を分散できる」とのこと。また「スレッドのうちひとつをネットワークトラフィックだけに割り当てられるため、キャッシュステートでの効率が向上する」という。さらに「ダイ上に20%のスペースを広げるだけで、8つのプロセッサコアとメモリコントローラを1シリコンに統合しており、エラー訂正が効率化されたことで信頼性も向上している」と述べた。
90nmプロセスで製造されるNiagaraでは、こうしたCMTの技術を導入することで「UltraSPARC IIIと比較して15倍の処理性能を実現している」という。さらに65nmでの実装が予定されるRockでは「データに加え、シングルスレッドでの浮動小数点演算のレベルも高い」とし、「処理能力は30倍になる」という。現在、同社の開発人員の3500名のうち、「90%はNiagara、Rockに力を注いでいる」とのことだ。
また将来的には「JavaアクセレレーションをCPUに組み込んでいく」という。同社では先ごろ、CPUとシステムの部門を同じバイスプレジデントが統括する形に組織を再編しており、これが「製品化への時間短縮につながるだろう。迅速に統合できる点は強みになる」とした。
■ URL
Network Computing 2004 Summer
http://jp.sun.com/company/events/nc2004/
( 岩崎 宰守 )
2004/06/09 13:23
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