「最初に申し上げたいのは、IntelはItanium 2をもって日本のエンタープライズ業界に革新を起こしかけている、あるいは起こしていると言うことです」と、米Intel エンタープライズ・マーケティング&プランニング事業部長のアジェイ・マルホトラ氏から大胆な発言が飛び出した。
■ クライアントPCでのオープン化をエンタープライズ分野でも
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米Intel エンタープライズ・マーケティング&プランニング事業部長 アジェイ・マルホトラ氏
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確かに過去15年を振り返ってみると、IntelがデスクトップやモバイルのPC分野で果たしてきた功績は大きい。CPUやメモリといったPCの心臓部のコストが大幅に下がったことで、PCそのものの価格が下がり、爆発的に普及した。また今日のブロードバンドの充実も、このPCの普及なくしてはあり得なかったと言えるだろう。「もはやPCは贅沢品ではなく、なくてはならない道具へと変化しています。この変化にIntelは大いに貢献してきました」とマルホトラ氏は語る。そしてまさに今、IntelはItanium 2をもって、エンタープライズの分野に積極的に参入しようとしているのである。
これまでエンタープライズの分野では、RISCアーキテクチャなど非Intelのアーキテクチャが主流であった。金融・航空業界や政府機関などの大規模なシステムで、サーバーコンピュータが必要な場合、それは大手システムベンダーの製品を購入することを意味していた。
こうした大手システムベンダー各社は、それぞれ独自の技術によってサーバーコンピュータを開発している。「この独自性によって高いコストがかかっていた分野に、まさにIntelはItanium 2という技術で風穴を空けていこうとしているのです」とマルホトラ氏。あくまでもオープンなアーキテクチャをもって、PCのときと同じようにエンタープライズ業界にも革新を起こそうとしているのである。
「これまで日本のエンタープライズ市場を支えてきたベンダーの方々も、次々とItanium 2搭載のサーバー製品を発表しています」とマルホトラ氏が自信を持って語るように、このインタビュー当日も、Intel主催のイベントにおいて、NEC、HP、日立、富士通がItanium 2搭載の製品を紹介している。
■ 企業は投資額に見合うだけの効果を得る必要がある
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日本のIT投資額は世界2位ながら、ITの競争力は12位となっている
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マルホトラ氏は現在の世界情勢と経済についても言及し、「9.11のテロや中東地域での戦争など世界情勢が大きく変化しています。そのため、5年前では考えられないほど、世界経済を取り巻く環境も変化している中で、各企業ではどのように売り上げを上げていくか、あるいはコストを下げていくかといったことに照準を合わせています」と語る。
そして日本でも、固有の経済状況から生まれた好景気と不況を経て、現在ようやく企業が支出を増やす兆しが見え始めている。世界経済フォーラムの統計によると、日本はITインフラに対する投資額が世界で第2位となっている一方、ITの競争力という面を見ると第12位と明らかにかい離している点をマルホトラ氏は取り上げ、その原因として国内企業がこれまで独自性が強く高価なものにばかり投資してきた結果であると分析した。
そして「厳しい状況であるからこそ、各企業は投資額に見合うだけの効果を得る必要があります。そのため大手ベンダーは、性能面、およびコスト面に優れたItanium 2のテクノロジーに着目したのです」とその競争優位性を強調した。また、Intel自身も、長年にわたって日本の市場を支え、そのニーズも熟知しているベンダーにItanium 2が受け入れられたことを「非常に喜ばしいこと」としている。多くの国内ベンダーがItanium 2を採用する事実を、マルホトラ氏は「Intelへの信頼性の証」であると述べた。
■ 管理性を向上する仮想化技術の実装
さらに今後は、リソースの管理性とバーチャライゼーション(仮想化)に着目したいとマルホトラ氏は語る。エンタープライズ環境では、なるべく柔軟にITインフラを管理したいとの要求が多い。コンピュータリソース、ストレージリソース、ネットワークリソースを、日々の業務にあわせて柔軟に割り当てたいとのニーズが存在している。
マルホトラ氏は「このような柔軟なリソースの管理には、バーチャライゼーションが最適です。次世代のItanium 2では、このバーチャライゼーションをハードウェアでサポートしたいと考えています」と、Silvervale Technologyと呼ばれる次世代のサーバープロセッサのテクノロジーについても言及した。
バーチャライゼーションは、特に全体の性能向上を図らなければならない、あるいは密度を高めていかなければならないときに威力を発揮する。このような機能は本来メインフレームでしか実現されていなかったが、Itanium 2でも実現させることが当面の課題であるとし、2005年投入される“Montecito”で実装する予定とした。
また現在Itanium 2はシングルコアであるが、今後はデュアルコア、あるいはマルチコアへと展開を図っていくとマルホトラ氏は語る。さらに現在のIntelプロセッサの多くはHT(Hyper Threading Technology)と呼ばれる技術により、1つのプロセッサ上で複数のスレッドを実行することができるが、デュアルコアあるいはマルチコアになった場合には、それぞれのコアごとに複数のスレッドを持つことができる。
マルホトラ氏は「マルチコア・マルチスレッドが実現すれば、その分ハードウェアの性能密度が向上します。そしてバーチャライゼーションによって、このリソースを的確に割り当てることができるようになれば、エンタープライズ市場での付加価値となるでしょう。おそらくこれが業界の向かう方向でもあると思います」と語り、Intelの今後の展望とエンタープライズ市場の向かうべき方向性を示唆した。
最後にマルホトラ氏は「良い製品を皆様にお届けする、問題があればサポートする、そしてこれらをオープンな環境で展開する。これらに対する信用に支えられた信頼感こそが、Intelのブランド力なのです」とIntelのブランドについて言及した。
「インテル入ってる(Intel Inside)というフレーズは日本発のマーケティング手法でしたが、まさにこのことが我々の競争優位であると言えます」とIntelの競争優位性はブランドにあることを強調していた。
■ URL
米Intel
http://www.intel.com/
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( 北原 静香 )
2004/06/15 00:00
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