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米BEAディッゼンCTO「XML、Webサービスの拡大でベンダーは問われなくなる」

~BEA eWorld Japan 2004 基調講演

 BEAシステムズ株式会社が6月17日・18日に開催しているプライベートイベント「BEA eWorld Japan 2004」において、米BEA Systems CTOのスコット・ディッゼン氏が「BEAの技術戦略と標準技術動向」をテーマに基調講演を行った。


米BEA Systems CTO スコット・ディッゼン氏
 同氏はまず「SOA(サービスオリエンテッドアーキテクチャ)を実現するインフラとして、Webサービスが6年前に登場してから、エンタープライズコンピューティングは劇的な変化を遂げた」とした。同社では現在、ビジネス上の変化に対応できるITインフラの構想として“Liquid Computing”を提唱している。

 この柱となるのは、Enterprise Compatibility(異機種混在環境での互換性)、Breakthrough Productivity(開発生産性)、Active Adaptability(動的な適用性)の3つだ。

 このうち互換性では「データ集合やメッセージ変換はもちろん、アプリケーションが互いにオーケストレーションできることが不可欠」とした。そして「ワークフローで自在にアプリケーションを接続することで、開発生産性や適用性も向上する」とした。こうしたビジネスプロセスのワークフロー生成に関する標準技術が、BEAがIBM、Microsoftとともに提唱したBPEL(Business Process Execution Language)だ。

 このBPELはXMLとWebサービスの開発とオーケストレーションを定めたもので、Java、.NETといったプラットフォームに依存しない。OASISでもすでに標準技術として取り上げられているもの。これをJava環境向けに実装するものとして、IBMとBEAが4月に取りまとめたのがBPELJとなる。

 BEAの開発環境「Workshop」ではBPELJをサポートしており、Webサービスを組み合わせてワークフローとして、ビジネスプロセスを記述できる。同氏は「ドラッグアンドドロップでオーサリングが行えるなどVisual Basic並みの使い勝手を実現しており、システムの管理者レベルでも使いこなせるだろう」とした。


3つの柱からなるLiquid Computing構想 BPELJはBEA WebLogic Workshopでサポートされている

動的適用性を実現するWeb
アプリケーションプラットフォームのシステム
 動的適用性に関しては、「20年前は、プロプライエタリな技術に基づいた、SQLを中心に密結合したシステムだった。こうしたレガシー技術による既存資産もラッピングされて、Webアプリケーションによりホストされるようになる」とした。

 そしてこれを実現する標準技術であるXMLについて「その長さ、遅さから批判を受けてきた。HTMLも同様だが、これらが疎結合である点にこそ価値がある」と述べ、「XML、Webサービスが中心として拡大していけば、XMLの内容を変換する固有のアダプタはネットワークエッジに追いやられ、プロプライエタリな技術は縮小していく」と語った。

 そして「すべてのソフトを1社から購入するのではなく、複数ベンダーのプロダクトを組みあわせたベストブリードが現実解となり、ベンダーの名前は問われなくなっていくだろう」と語った。


 複数のWebサービスと、ポータル・WebアプリケーションといったUIを接続するハブとして同社が構想しているのが「QuickSilver」。「サービスの動的なバインディングに使われる」とした同氏は「プログラムを組まなくともルーティングやスイッチング、ユーザー追加のプロビジョニングを動的に行えるものになる」とし、「このビジョンは、今後共同して標準化を進めていく」と述べた。

 標準技術への準拠が、互換性のために重要とした同氏は「WSDL 1.1やSOAP 1.1については相互接続性の問題はほとんどなくなっている。WSセキュリティやQoSへの対応などに関しても、この1~2年のうちに実現されるだろう」とした。同社のBEA WebLogicプラットフォームでも、下図黄色の次世代標準について「次期バージョンでサポートする」とした。


複数WebサービスとUIをつなぐQuickSilver Webサービスの標準技術

 Beehiveは、J2EEベースのアプリケーションフレームワークで、J2EE開発環境を補完する位置づけ。XMLBeansやStrutsの拡張であるPage Flow for Java、JWSなどの技術をサポートする。

 オープンソースのソフトウェアプロジェクトとして進められており、Apacheファウンデーションに対してBEAから提供され、Tomcatにそのままデプロイされるという。

 Beehiveをオープンソースとしたことについて同氏は「技術を開示することは大きな成長因子になる」とし、「WebLogicへの顧客からの投資を保護するための方策のひとつ」と述べた。


Beehiveでサポートされるコンポーネント Beehiveを取り巻くSOA関連技術

 最後に他ベンダーとの比較について同氏は、「マルチベンダーをサポートするJava、また企業向けであることから、IBMは最大の競合相手」とした。しかし「WebSphereの課題は複雑性だ。次のリリースではインストールに82枚のCDを必要とする。われわれのWebLogicはすべてを1CDに収めている」とした。

 またMicrosoftについては「シンプルでイージーなビジョンは似通っているといえるが、.NETはWindowsと関係が深すぎる」とし、「実際の現場では、UNIX、Linux、メインフレームの混在するクロスベンダー環境がほとんど。横断的であることが重要になる」とした。



URL
  米BEA Systems
  http://www.beasys.com/
  BEA eWorld Japan 2004
  http://www.eworld.jp/


( 岩崎 宰守 )
2004/06/18 00:00

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