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バルマーCEO「Microsoftにとって、セキュリティはNo.1の優先課題」

~NetWorld+Interop 2004 Tokyo 基調講演

 6月28日から7月2日まで幕張メッセで開催されているイベント「NetWorld+Interop 2004 Tokyo」(N+I)において6月30日、「ITライフサイクル: セキュリティ強化と管理性の向上を目指して~」と題して、米Microsoft CEOのスティーブ・バルマー氏が基調講演を行った。


米Microsoft CEO スティーブ・バルマー氏

ITライフサイクル全般をカバーして、より少ない人的・金銭的コストで多くを達成する
 「ITの可能性をどうしたら引き出せるかを、ここにいる全員が意識しなければならない」と語り始めたバルマー氏。企業の設備投資のうち50%はITに費やされており、「景気低迷により予算が圧迫されれば、真っ先に影響を受けるのはIT」とした。そして現在、企業では限られた予算のなかで、「ITインフラには信頼性や高い精度など多くの機能が要求されている」と述べた。

 そしてMicrosoftでは「少ない資源でより多くのことを達成し、ビジネスの可能性を最大限にするため、製品の開発から導入展開、エンドユーザーが利用するまでのITライフサイクル全般をカバーしている」とした。なかでも「コアのプラットフォーム開発と相互運用性に力を入れている」という。同氏は例としてXMLへの対応を挙げ、「標準技術をサポートすることが相互運用性の面では重要だ」とした。

 次に「セキュリティが原因でビジネスを中断させてはならない」としたバルマー氏は、「ITの信頼性を納得してもらい、少ない資源で多くを実現するためには、セキュリティと管理を結びつけて考える必要がある」とした。

 Microsoftでは“Trustworthy Computing(信頼できるコンピューティング)”を掲げた2年前から「セキュリティへのアプローチを変えた」。バルマー氏は「Microsoftにとって、セキュリティはNo.1の優先課題になっている」と述べた。


自動更新の機能自体はこれまでと変わらないが、「サービスパック適用直後に画面に出して、ユーザーに存在を知ってもらう」
 その成果となる「Windows XP SP2 セキュリティ強化機能搭載」の出荷候補版であるRC2の配布を6月21日よりダウンロード提供しており、正式版は8月頃に提供予定となっている。講演中には「Windows XP SP2 セキュリティ強化機能搭載」のデモも行われた。

 新機能であるセキュリティセンターでは、ファイアウォールやアンチウイルスを無効化しているとアラートを表示する。またXP SP2搭載の機能強化された「Windows Firewall」では、「アプリケーションを登録すれば必要なポートを自動検出するため、これまでのようにどのポートを使っているか探す必要はない」という。

 またドメイン参加クライアントに対して、これまでのICFでは有効/無効のみを設定できたが、Windows Firewallでは「14項目から詳細を設定でき、またノートPCユーザーを想定して、PCごとに異なるポリシーを適用することもできる」という。

 同じくXP SP2搭載のIE 6.0 SP2では、新たにポップアップブロックの機能を備えているが、「ActiveXの自動ダウンロードも同様に抑制できる」という。

 更新プログラムの導入・展開を管理するツールとして、SMS、SUSを紹介した。「ポリシーに応じてパッチやサービスパックを適用でき、ネットワークの規模が大きいときには分散配布できる」とした。

 また従来のWindows Updateを、これまでのようにOSコンポーネントだけでなく、OfficeやExchange Serverなどに対して横断的に適用できる「Microsoft Update」に強化するという。「インストーラの種類を2つまでに削減し、サイズも縮小した」。このほかMicrosoftでは1月よりセキュリティ更新プログラムの定期配布も行っている。


Trustworthy Computingによる開発プロセスの向上で、脆弱性の数も減少している
 また「ソースコードから潜在的な脅威を排除する」ために、開発チームへの脅威モデルなどの教育、バッファーオーバーフローの可能性をコードから排除するツールの利用などを行うことで、「Windows Server 2003のリリース後180日間に提供された「緊急」または「重要」なセキュリティ更新プログラムが9つに減少した」という。これはWindows 2000 Serverと比べ1/4の数字だ。またExchange 2000 Server SP3では7から1に、SQL Server 2000 SP3では13から3になるなど、開発プロセスの品質向上が実現している。

 しかし「ソフトウェアが脆弱性を持たないことを目指すのが原則だが、すべてなくすことは不可能」とした。また「もしセキュリティ面での完璧なバージョンがあっても、多くのユーザーは検証もなしに新しいOSへは移行しない」とし、システムの抵抗力を維持するためには、「クライアントを隔離してネットワークを保護できる必要がある」とした。

 Microsoftではこれを実現するセキュリティソリューションとして、ISA(Internet Security and Acceleration)Server 2004のベータを1月にリリースしており、製品は2004年中に発売の予定だ。

 デモを行ったマイクロソフト株式会社 Windows Server製品部グループ シニアプロダクトマネージャーの井口倫子氏によれば、「ISA Server 2004では、DMZ、境界領域、透過型ファイアウォールなど、7種類のテンプレートポリシーによる容易な導入と管理が可能」とのこと。テスト済みルールをXMLでエクスポートすることで、検証環境から本番環境への移行も容易となっている。

 アクセス制御では、左側のウィンドウからHTTPやPOP、SMTPといったプロトコルをドラッグアンドドロップするだけでポリシーに追加でき、VPNなどユーザーの接続別に適用できる。完成したポリシーはコピーアンドペーストして追加修正することで、ユーザーの権限に応じたポリシー作成が行える。

 さらにWindows Server 2003と連携して、クライアントPCのパッチ適用状態やアンチウイルス、Windows Firewallの設定を確認し、制限されたアクセス権だけを付与してネットワークから隔離する、いわゆる「検疫LAN」のシステムも実現している。一時的な検疫LAN内で強制的にポリシー合致レベルに上げることもできるほか、これを受け付けないユーザーの強制切断も可能になっている。


ISA Server 2004の開始画面。ネットワークの定義や監視、ファイアウォールやVPNアクセスのポリシー構成が行える ファイアウォールの設定には7種類のテンプレートが用意されている ユーザーロールや接続先により、利用プロトコルを制限できるポリシー設定画面

 こうした技術面での方策のほかに、同氏は「不適切なアクセスを生まないためには、技術面とともに教育や社会的も重要になる」とし、MicrosoftがIT管理者などを対象に実施しているトレーニング、また海外で主要ISPと共同で行っている広告キャンペーンにも触れた。

 さらに「ハッキングは子どもの遊びでは済まされない。現実に生活やビジネスに中断を引き起こすものだ」と厳しい態度を見せ、「ITインフラのセキュリティを改善する努力として、政府ともコラボレーションを進めている」とした。

 同氏は「Microsoftの製品は、もっとも普及しているために攻撃にさらされる」とし、「適切な措置でユーザーを助けるために、手を尽くしてこの問題に取り組んでいる」と語った。

 「Microsoftには、ほかのどの会社よりイノベーションに満ちている」とした同氏。「これまで述べてきた信頼と、より広範なパートナーシップによりアプリケーション、ハードウェアの幅広い選択肢により、より少ない資源で多くのことを達成できる環境を提供する」とした。さらに「これからのIT産業には、企業が可能性を広げ、ビジネスパワーを増して成功することを支援する大きなチャンスがある」と述べて講演を終えた。



URL
  NetWorld+Interop 2004 Tokyo
  http://www.interop.jp/
  米Microsoft
  http://www.microsoft.com/

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( 岩崎 宰守 )
2004/06/30 20:20

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