グリッドコンピューティングの国際標準化団体「Enterprise Grid Alliance(以下、EGA)」は7月5日、アジア太平洋地域でのグリッド普及促進を目指したEGA日本運営委員会の設立を発表した。
EGA日本運営委員会は、EMCジャパン株式会社、サン・マイクロシステムズ株式会社、日本オラクル株式会社、日本電気株式会社、日本ネットワーク・アプライアンス株式会社、日本ヒューレット・パッカード株式会社の6社が中心となって運営される。EGAは4月にアメリカ発足したグリッドコンピューティングの標準化団体。

|
EGA日本運営委員会 議長 鈴木俊宏氏
|

|
5月28日にカリフォルニアで開催された「EGAテクニカルWGキックオフ」
|
同委員会議長を務める日本オラクルの鈴木俊宏氏は、「EGAは標準を策定するよりも、実装やソリューション開発に焦点を当てている」と、グリッドの標準仕様「Open Grid Services Architecture」を策定するIBM主導のグリッド標準化団体「Global Grid Forum」との違いを述べ、「グリッドを企業内に適用するにあたって、現在の標準化コンポーネントを組み合わせが実現を目指す」とした。
またGGF以外にも、Webサービス標準化団体のOASISや、ストレージ標準化団体SNIA、ネットワーク管理標準化団体DMTF、Linuxのビジネス利用を推進するOSDLといった組織の名を挙げ、「各関係団体とは協調関係を築いていきたい」とした。続いて同氏はEGAのベンダー中立性を強調し、「企業規模にかかわらず1社が1票を持ち、成果物はロイヤリティフリーで利用できる」とした。
企業向けグリッドの実現にあたっては、単一企業でERPやCRM、BIといった商用アプリケーションを利用するフェーズ1、複数企業間でポートフォリオ分析シミュレーションなど技術系アプリケーションを利用するフェーズ2、ユーティリティコンピューティングを前提にしたフェーズ3に分け、「ひとつのフェーズを1~1年半で実現していきたい」とした。
実際の活動では、「リファレンスモデルに基づいて相互運用性のテストを行うなど、オープングリッドへの移行を加速させる」とした。このリファレンスモデルモデルについては、現在ワーキンググループ(WG)で策定中とのこと。
5月28日にはカリフォルニアでEGAテクニカルWGキックオフが開催され、リファレンスモデルWGのほか、コンポーネントプロビジョニングWG、データプロビジョニングWG、課金検討を行うユーティリティアカウントWG、グリッドセキュリティWGの5つが設立された。
日本での運営委員会設立については、「ブレードサーバーの浸透、ストレージの進歩、ネットワークのギガビット化など、それぞれのコンポーネントは出揃いつつある」との現状を踏まえ、「これらをうまくまとめ上げるソフトウェア、強調動作が特にグリッドでは求められる」とした。そして「こうした動きには地域格差がない」ことを理由に挙げた。
グリッド技術については「先駆的利用から初期採用のハイプカーブと、実利用に関する技術採用曲線が拮抗している状況」との見方を示し、「標準化の長いスパンを待たず、採用が始まっている」と述べた。
経済産業省が主導し、NEC、日立、富士通が参加するオープン標準に準拠したグリッドミドルウェア開発の動きなど、「ある意味では日本でも主導している部分がある」とした同氏は、日本運営委員会が本部内でも理事会に直結した組織として設立され、大きな役割を持つことに触れ、「EGA本部とのパイプ役を果たし、使える標準仕様を展開していきたい」とした。
|
|
「グリッド技術は採用曲線の立ち上がりが早い」(鈴木氏)
|
EGA内での日本運営委員会の位置づけ
|
■ URL
Enterprise Grid Alliance(英語)
http://www.gridalliance.org/
プレスリリース(日本HP)
http://www1.jpn.hp.com/info/newsroom/pr/fy2004/fy04-135.html
プレスリリース(サン)
http://jp.sun.com/Press/release/2004/0705.html
プレスリリース(NEC)
http://www.nec.co.jp/press/ja/0407/0502.html
■ 関連記事
・ 企業向けグリッドコンピューティングを推進する「Enterprise Grid Alliance」が発足(2004/04/21)
( 岩崎 宰守 )
2004/07/05 14:31
|