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仏Dassault CEO「PLMの価値は新たな価値の創造にある」

~2004 JAPAN CATIA FORUM 記者発表

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)とダッソー・システムズ株式会社は、東京ベイホテル東急にて7月8、9日の2日間、アジア地域最大のPLM(Product Lifecycle Management)ユーザー向けイベント「2004 JAPAN CATIA FORUM」を開催している。あわせて行われた記者発表では、仏Dassault Systemes 社長兼CEO ベルナール・シャーレス氏が、同社のPLMソリューション事業について述べた。


仏Dassault Systemes 社長兼CEO ベルナール・シャーレス氏

3DモデリングをベースにしたPLMソリューション。自動車用ヘッドランプの複雑な構造も設計できる

製造工程における最適化シミュレーションの例
 同社のPLMソリューションは、3Dモデリングの手法を用い、プロダクト、プロセス、リソース(PPR)を関連付けて、製品の開発段階から生産工程までのライフサイクル全体を一元管理する製造業向けの製品。

 ナレッジの活用により、設計段階で不具合を未然に防止することで、その後の工数を削減し、設計の生産性向上とともに開発サイクルも短期化する。また製品の製造工程においても最適化シミュレーションを行うことで、効率化と品質向上といったメリットがある。

 シャーレス氏は、「PLMの価値はコスト削減だけでなく、事業競争力を向上される点にある」とした。同社のPLMソリューションを導入することで、2Dでは難しかった高度な加工を要する複雑な形状の設計をサポートし、「これまでアクセスできなかった市場への参入手段にもなる」と例を挙げた。

 このようにビジネス環境の変化に対応して、「企業が新たな製品を生み出す際のライフサイクル全体を、PLMにより加速し、支援する」と語った。また「製品の設計から製造に費やすエネルギーを最小化して、リサイクルなどの環境問題にも対応できる」とした。

 これまでは、自動車・航空分野の大手企業での採用例が多かったとのことだが、生産時のラインやマシンの干渉がシミュレーションにより事前に把握できるといった「モデリングだけではないPLMのメリットが理解され、中小の自動車部品メーカーや設備メーカー、そして造船業界でも採用が増えている」とした。

 さらにおもちゃや家庭用品といった消費財にまで採用が拡大しつつあるという。同氏は「グローバル経済の元で、中小製造業でも新しい開発方法や製品の新しい利用の仕方を模索しなければならない。また将来的にはローカルにとどまらず、国境を越えたさまざまなパートナーシップ、を展開する必要があるだろう。そのときPLMの採用が不可欠になる」とし、「これからはさまざまな業種とビジネスに対応していく。設計される製品も多様化することで、PLMは価値創造の中核になるだろう」と語った。


提携に際してシャーレス氏と握手するラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷 浩志氏

米IBM PLM Solutions ゼネラル・マネージャー スコット・ホプキンズ氏
 記者発表では、仏Dassault Systemesとラティス・テクノロジー株式会社との提携も発表された。ラティス・テクノロジーは、XMLをベースに、3Dデータを記述するオープン標準のテクノロジー「XVL(eXtensible Virtual world description Language)」を開発したベンダー。ラティス・テクノロジーではDassaultのツールから3Dデータの属性情報をXVLにマッピングする技術を開発したという。

 このXVLによる3D XMLの技術は、今回の提携により世界で7万を超えるカスタマーを抱えるダッソーの製品に組み込まれる。データを大幅に軽量化できるため、インターネットを介した業務コラボレーションが可能になるという。

 仏Dassaultのグローバルパートナーである米IBM PLM Solutions ゼネラル・マネージャー スコット・ホプキンズ氏は、同社が製造業のCEOに対して行った調査を示し、「その2/3が、差別化された製品が成長のキーになるとしており、イノベーションが問題なのは明らかだ」とした。そして「PLMを選択することが、企業の差別化要因になる」とのガートナーの言葉を紹介、「向こう2~5年のメインストリームになる」との見方を示した。

 日本の市場については、「現在でも世界で2位だが、最も急成長しているマーケット」とした。そして7月8日にプレスリリースされた日産ディーゼルでの車両構成管理システムの導入例を紹介、車両レイアウト作成時間が9割も削減されたことを挙げ、「単にコストの節約ではなく、9割も削減すればビジネス面にも大きな影響がある」とした。

 IBMでは23年前から仏Dassaultとの関係を続けており、WebSphereとも統合したシステムを提供している。同氏は2003年にガートナーが行ったCADソフトウェアの市場シェアから「IBMとダッソーはリーダーシップのポジションを占め、他社の先を行っている」と表現した。またハード、ソフトをパッケージにした中小企業向けのオファリングなどもすでに提供している。



URL
  JAPAN CATIA FORUM 2004
  http://www.jcforum.com/
  仏Dassault Systemes
  http://www.3ds.com/
  米IBM
  http://www.ibm.com/
  ラティス・テクノロジー株式会社
  http://www.lattice.co.jp/
  プレスリリース(ラティスとの提携、英文)
  http://www.3ds.com/jp/press/ipf.asp?object_name=Lattice_Technology_July04_PR
  プレスリリース(日産ディーゼル採用)
  http://www.ibm.com/news/jp/2004/07/07081.html

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( 岩崎 宰守 )
2004/07/08 18:09

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