7月7日から9日まで東京ビックサイトにて「第6回データセキュリティEXPO」(主催、リードエグジビジョンジャパン株式会社)が開催された。7月9日には、米IDCのワールドワイドストレージリサーチ グループバイスプレジデント、ジョン・マッカーサー氏が「ストレージ市場最新動向~課題と成長分野~」と題したキーノートセッションを行った。
■ ITの課題と、統合によるメリットは?
まずマッカーサー氏が述べたのは、ITにおける“統合”のインパクトについてだ。同氏によれば、米国では多くの企業が、サーバー、ストレージなどのITインフラの統合を行おうとしているか、少なくとも検討はしているという。これをけん引しているのが、ビジネスユニット単位ではなく全社規模でITを統合しようとする“ITの中央化”で、これは大きな企業ほど必要と感じており、分散による痛みを感じていないせいか、中小ではそれほど進んではいない。しかし、「今後は幅広く展開していく中でそうしたところでも統合化は進んでいくだろう」と、現状と今後の見込みに関して述べた。
次に統合の“ゴール”、すなわち課題とそれが解決された姿、について同氏は説明する。マッカーサー氏は「隔離されたサーバーやアプリケーションシステムではサービスレベルは低くなりがちだが、統合化すれば、迅速な運用、レスポンスが提供できる」と述べた。また「売り上げの成長が低速化している今、オペレーションの効率化を追求する、既存の人材を有効に活用するなど、運営上のコストを削減することが必要だ。さらに資本投資を下げることも重要。決済額の少ない部門レベルで小さな支出をそれぞれ行ったとしても、合計するとかなりの金額になるし、(分離したシステムが多数あると)管理も大変」と、現状での問題を指摘した同氏は、統合と仮想化による柔軟なコンピューティングリソースの活用で、これらも解決できるとする。
■ IT統合の4つの段階
では、実際の統合化にはどういったものがあるのだろうか。マッカーサー氏があげたのは全部で4つ。1つ目はデータセンターの統合だという。現在の日本ではまだ複数のデータセンターを持つ企業は限られており、あまり重視されていないが、欧米では実運用環境以外にも、テスト用、バックアップ用などに複数のデータセンターを用意している場合が多く、多数のセンターを運営するコスト面の負担を軽くするため、取り上げられることが多いという。
また2つ目は物理的な統合で、システムの数を減らして高性能システムで集約するものだ。そして残りの2つは、データベースの集約化とアプリケーションのグループ化などを行うデータ統合と、エンドトゥエンドでSAPやオラクルなどの基幹アプリケーションを統合し、共有化されたレポジトリを展開する、アプリケーションの統合がこれにあたる。
同氏はこれらを説明した後、「これらの統合の鍵となるのが、仮想化されたシステム、ユーティリティコンピューティングだ。まだまだ先の話だという感はあるかもしれないが、これは重要なことで、メインフレームからIAまで共通していえる」と、統合を実現する“仮想化”の重要性を語った後、現在では何の統合が一番重要視されているかに触れた。
■ 階層型ストレージでストレージ統合を効果的に実行
「そろそろデータセンターの統合は一巡したし、物理的な統合も大幅には増えていない。データやアプリケーションの統合はまだプライオリティはまだ低い」と述べたマッカーサー氏は、「ストレージの統合、それが伸びている」と、ストレージ統合の重要性を強調する。
このストレージ統合とは、厳密に言えば物理統合とデータやアプリケーションの統合の間にある段階で、データ・アプリケーション統合を行うための前提条件だという。「こうしたストレージ統合を引っ張っているものの1つは、コンテンツがどんどん増えてきていること。かつてはアナログだったものを電子化して保持するようになっているし、データの保存期間が以前よりも延びている。また、(先に述べた人員の活用やコストの削減といった)運用面もけん引要素だし、今話題となっている階層型のストレージのような、技術的な変化もその要素の1つだ」(同氏)。
マッカーサー氏は続けてこの階層型ストレージを説明。「医療カルテ、メール、金融取引に関する取引記録、こうしたFIXデータの保存には容量がたくさんいるが、膨大であるが故に低コストである必要もあり、かといって信頼性は落とせない。一方、(最新の)バックアップデータ(を保持するニアライン部分)は迅速なバックアップ、迅速なリストアをサポートするストレージインフラが必要だが、次のバックアップまで保持すればよく、何年、何カ月も持っていることはない。また、テープも決してなくならない。長期的なアーカイブには向いている」と、各データの性質に応じて必要とされる要件をあげ、なぜ階層ごとのストレージの使い分けをしなくてはならないか、という点に触れた。
さらに階層型ストレージでは「データの動きは双方向である」点に注意を呼びかける。各階層間の動きは一方通行ではなく、ハイパフォーマンスの高価なストレージからローコストのストレージへ移すことも、その逆も必要になるとし、テープからレストアしたり、固定のレポジトリからハイパフォーマンスのサーチエンジンに戻したり、といった対応能力があるかどうかも重要だ、とマッカーサー氏は解説した。
そして、こうして相互依存する階層型ストレージの配備によって、ストレージに格納されたデータは大きな一元化されたデータとなり、データ保護やリカバリも改善されてくるという。特に、オフィスに出勤せずにリモートから仕事を行う場合でも、そこにあるノートPCの中のデータを守っていかねばならないが、統合されていればこれもやりやすくなる。また、データの複数サイトでの保存や保存期間の長期化も求められているが、こうしたことにも対応できると、そのメリットについて語っていた。
続けて、マッカーサー氏は「(一般的には)スタートしたが結果は期待した通りでなかった、とお客様から言われることはよくある。しかし、統合化は必ずメリットをもたらす。2002年、2004年の調査を比較しても、期待に見合わなかったと答えているのはともに5%程度に過ぎず、70%は期待通りか、期待以上の効果があがったと回答した」と述べ、ITにプライオリティを1つだけ付けるのなら、統合を考えていくべきだろうと強調していた。
■ URL
米IDC
http://www.idc.com/
( 石井 一志 )
2004/07/09 18:02
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