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「到来しつつある“ユビキタス情報社会”を見据えた」日立のITビジョン

~HITACHI ITコンベンション2004 基調講演

 7月22日から23日まで、東京国際フォーラムで開催されている「HITACHI ITコンベンション2004」において、株式会社日立製作所(以下、日立)の代表執行役 執行役社長、庄山悦彦氏が、「ユビキタス情報社会をリードする日立グループ」と題して基調講演を行った。


ユビキタス情報社会への変化、その背景

代表執行役 執行役社長、庄山悦彦氏
 まず庄山氏が触れたのは、今求められている社会がどのようなものか、ということ。それは、情報を「安心」「安全」「快適」に利用できる、ユビキタス情報社会だという。「町中で携帯電話の画面を見ながらメール送信を行う人や、無線LANでPCと会社とつないで仕事をする人など、数年前とは大きく異なる場面に遭遇することが多くなった」と述べた庄山氏は、こうしたところからもユビキタス情報社会がはじまっていることが実感できるのではないか、とする。

 続いて庄山氏が説明したのは、ユビキタス社会到来を促す変化についてだ。政策、経営、IT、個、の4つの視点をあげた同氏は、まず政策面でユビキタス社会到来を支えるものとして、e-Japan戦略をあげる。基盤整備を優先した第1フェイズに加え、応用分野へ踏み込んだ第2フェイズ、そしてそれを単なる提言に終わらせないための「評価専門調査会」の取り組みについて言及した同氏は、自らが座長を務めるこの組織において、「元気・安心・感動・便利」な社会の実現へ向け、「皆様方にも実感していただける成果を出せるように努力している」と語った。

 また2つ目の経営面では、市場競争が激化しているため、商品やサービスの魅力をアップさせないと、企業は生き残ることができない、という現実を踏まえ、変化への対応力強化、コアビジネスへの集中など、企業革新を行う必要があるとした。

 さらにITに関しては、「いつでも/どこでも/だれでも、安心/安全、快適」といったキーワードをあげたが、一方でそれぞれに対比して「今だけ/ここだけ/あなただけ、簡単な、安価な」ものも必要になってきていると説明する。そして、「これまでは“リアル”世界で行われてきたものが、PCやネットワークといった“サイバー”世界でも扱われるようになり、リアル世界での活動がより効率的に行えるようになってきた」とした庄山氏は、これからのビジネスでは、サイバーとリアルの世界が融合・循環することで、新しい価値の創出がなされるだろうと述べた。

 4つ目の問題では、「今まで日本が得意としてきた、いいものを大量に安く作れば売れる時代は終わった。これからは個の視点、つまり個人が楽しんだり感動したり、使うことによって便利だと感じられる、など、人間が本来持つ価値観としての安心、安全、便利という価値観の醸成につながっていくだろう。価値観が多様化し、体験・経験に価値の重要さが移るなど、プライベートな個人としての変化が出てきているし、企業内個人としては、個々の人間の能力発揮が重要な視点となりつつある」と述べ、個人の視点をいかに活用するか、ということが重要だと強調した。


日立が考えるユビキタス情報社会とは?

日立が描くユビキタス情報社会のイメージ

ユビキタス情報社会を見据えた「uVALUE」戦略のイメージ
 では、こうしたことを踏まえ、日立はユビキタス情報社会をどう考えているのだろうか。庄山氏は、「国内、国外といった境界を越え、グローバルに、時間的、空間的制約を受けず、ダイナミックに結びつくだろう。そしてそれらが結びつくことで、新たな価値が創造できる社会こそがユビキタス情報社会だ」と語る。

 そしてこうした社会では、「ITの進展によって人が主役になり、企業、生活、公共の場で、人と人、人ともの、人と情報をつなぐ場が飛躍的に拡大する。各場面で連鎖的なコラボレーションが行えるようになり、新たなビジネス、サービス、ライフスタイルが登場する。例を取ると、家で仕事ができたり、行政サービスを受けられたりするようになる」というのだが、こうした社会での価値提供のあり方は、顧客からの対価に応じて一方的に企業が行うのではなく、顧客と企業が立場や利害を共有しながら連鎖していく時代へと変化するのだ、と庄山氏はその見通しを説明した。

 このような社会では、たとえばレストランがユーザーの好みを分析して、個別に特別なサービスを提供できるようになる、という。“ビジネスインテリジェンスシステム”ともいうべきシステムを利用すると、店の利益を増やすだけでなく、顧客の満足度も高めることが可能だ。

 一方企業では、経営環境の変化に柔軟に対応するため、EA(Enterprise Architecture)の考え方を導入することが有効だ、と庄山氏は述べる。「これにより、企業経営とITシステムの融合が可能になり、より多くの成果を生み出せる。ビジネストランスフォーメーション、アウトソースなどのソリューション活用で、コアビジネスへの集中をより確実なものにできるだろう。お客様と当社との協業で、新たなビジネスチャンスが創出される」(同氏)。

 このほか、eラーニングやヘルスケア分野などの例もあげた庄山氏は、「さまざまな場で新たな価値を創造していける社会、それがユビキタス情報社会だ。サイバー世界のIT活用により、これまでのビジネス領域を超え、リアルな世界がもっとすてきになっていく」と繰り返し述べた。

 そして、日立グループはこうした社会において価値を“共創”していくため、“uVALUE”を情報通信事業の新たなコンセプトと位置付け、事業を進めていく意向だとした庄山氏は、「ビジネス、ライフ、コミュニティというお客様の活動の場で価値を連鎖させ、革新的な価値へ高めていく。つながること、連鎖することで新たな価値を生むことができるのがユビキタス社会」と再度説明した後、「日立グループはさまざまな研究開発・事業分野を強みとしており、これらを活用・連鎖させることで、ユビキタス情報社会を実現できる」と、日立グループの能力に自信を示していた。



URL
  株式会社日立製作所
  http://www.hitachi.co.jp/
  HITACHI ITコンベンション2004
  https://hitachi-itcon.com/index.asp


( 石井 一志 )
2004/07/22 19:28

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