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日本ピープルソフト、J.D.Edwardsとの日本法人合併に伴う国内事業戦略を発表


 日本ピープルソフト株式会社は、日本ジェイ・ディ・エドワーズ株式会社との統合1周年を迎える7月23日、国内における事業戦略についての説明会を開催した。

 米PeopleSoftによる2003年6月の米J.D.Edwards買収発表に伴い、両社の日本法人でも統合作業が行われ、2003年11月には1組織として製品サービスを提供する体制が整った。この最終段階として、それまでの複数拠点を集約する新社屋への移転が両社合併から1周年となる先週に行われたという。


日本ピープルソフト株式会社 代表取締役社長 クレイグ・ハリデー氏

人事管理ではトップのシェアとなるPeopleSoft製品

相互に補完しあう旧PeopleSoftと旧J.D.Edwardsの製品群
 日本ピープルソフト株式会社 代表取締役社長のクレイグ・ハリデー氏は、「日本ジェイ・ディ・エドワーズは1990年から、日本ピープルソフトは1996年から日本市場に進出しており、これまでにそれぞれ200社ずつの顧客をかかえている」とした。

 両社の合併により、新生PeopleSoftは世界第2位の企業向けアプリケーションベンダーとなった。そして日本法人でも、合併により顧客企業が400社以上となり、「本社から見た日本市場の相対的価値が高まった。権限も拡大し、これに伴って意思決定のスピードも増したほか、日本向けの製品開発予算も拡大した」という。

 また両社ともにERPパッケージのベンダーではあっても、人事管理のベンチャーとしてスタートした米PeopleSoftは、依然この分野では特に高いシェアを占めている。一方の米J.D.Edwardsは生産管理分野に強かった。同氏は「それぞれがすべての市場をカバーするベンダーではなく、統合以前の段階で競合関係はなかった」と述べ、「両者の強みとするソフトウェアを相互に補完して、規模別、業種別の幅広い機能とモジュールの選択肢を提供できる」とした。すでに従来顧客から、これまでPeopleSoft製品になかった不動産管理の機能を利用したいとの声も寄せられているという。

 こうして拡大された製品ラインは3つの製品群で構成されている。旧PeopleSoft製品である「PeopleSoft Enterprise」はハイエンドの大企業向けに、また旧J.D.Edwards 5である「PeopleSoft Enterprise One」は製造業、中堅中小企業向けに位置付けられる。また「PeopleSoft World」は、IBM AS/400プラットフォーム向けとなるより小規模企業に適した製品で、短期導入が可能なことから新規顧客の引き合いも多いという。

 これら製品により「異なったニーズにこたえられる。また例えばグローバル展開の大企業では高機能高性能のEnterpriseを、各国拠点では高度にパッケージ化され、カスタマイズが最小限で済むため、短期に導入できるEnterprise Oneを組みあわせるといった導入例もすでに存在している」とのことだ。


国内でのパッケージソフトライセンス売上は上昇が見込まれている
 米Gartnerの調査によれば、日本市場での企業向けパッケージソフトのライセンス売上は堅調な伸びが予想されているが、「企業ではインフラを手作りからパッケージへ切り替える動きが加速している。また2003年だけを見ても、パッケージに投資してROIを早期回収する方向へ、ユーザーの要件は変化している」と同氏は語り、この予測以上の伸びを見込んでいるとした。これを背景に、合併後の新生ピープルソフトは、財政的にも人材的にもさらに大きな企業になったことで、さらなる成長と売上拡大を図るとしたが、「成長を支える根幹には顧客がある。従って顧客ニーズを満たすのが第1」とした。


日本ピープルソフト株式会社 執行役員 プロダクト・テクノロジー統括本部長 荻矢隆雄氏

アーキテクチャの根幹となるPeopleTools

アプリケーション間を統合するAppConnect
 日本ピープルソフト株式会社 執行役員 プロダクト・テクノロジー統括本部長の荻矢隆雄氏は、「2000年前後のERPブームを終え、企業では、すべてのプロセスをパッケージに合わせて導入していく困難さを改めて認識している」と述べ、現在ではコンポーネント化されたベストソリューションにより、「既存資産を生かしながら、ビジネス環境の変化に合わせてシステムをトータルに刷新していくことが明確な要求になっている」と述べた。

 同社が2000年より提供しているPeopleSoft 8は、他社に先駆けてWebアプリケーションをベースにした企業向けパッケージだった。「完全にオープンなアーキテクチャで、クライアント側ではアプレットやプラグインも必要なく動作し、OSも選ばない」という。

 同社のアーキテクチャでは、PeopleToolsにより開発用と実行用の環境からミドルウェアまでを1つの層で提供している。「すべてオープンなので、アプリケーションロジックとデータベース構造をオープン参照した追加構築ができる」とのことで、アプリケーションとプラットフォームが分離されているため、「プラットフォーム側で最新のテクノロジをサポートでき、アプリケーション側を10年以上利用することも可能だ」という。

 アプリケーションレベルでは、200以上のコンポーネントによる選択肢を組み合わせることで、さまざまな機能を提供している。そしてこれらのアプリケーション間を統合するものとして、統一したUIを提供するエンタープライズポータル、Webサービスによりデータ処理を統合するインテグレーションブローカー、データそのものを統合するエンタープライズウェアハウスの各機能があり、同社ではこの全体をAppConnectとして提供している。このAppConnectでは、同社の3製品ラインだけでなく、他社製品との統合にも利用できるという。

 こうしたアーキテクチャにより、「適合性の高いパッケージによる新規導入のスピードと、業態変化に合わせた柔軟なシステム改変が実現されている。


金融分野向けソリューション「PeopleSoft Financial Management」は世界2位の売上げ
 こうしたアーキテクチャの上に提供される同社の業界特化型ソリューションは、人事管理をはじめとした12分野で高いシェアを獲得している。金融分野向けのPeopleSoft Financial Managementも北米ではトップ、そして世界でも2位の売上高を誇り、顧客満足度でもトップの評価をされている。

 同氏は、「TOE(Total Ownership Experience)の考え方にのっとって、10年のライフサイクルスパンを考えて、アプリケーション導入における満足度を高めることも目指している。そうしないと企業向けアプリの将来はない」とした。

 このTOEの考え方は、製品の開発基準にも採用され「800億円以上を投資して、開発リソースを機能向上だけでなく、使いやすさと品質、さらにコストの低さの実現に割り当てている」という。これによりアプリケーションの透過性を高めて、高レベルのコンサルティングを必要としないことからくる導入費用の安さを実現するという。またパフォーマンス解析やチューニングの機能を製品内に盛り込むなど、導入後の運用にも注力しており、導入後3年間のTOCも他社製品と比べ低くなるという。

 また同社では、顧客サポートを担当するカスタマーケアセンターや、アジア太平洋地域の製品品質保証を担当するほか東京テストセンターの強化も今回の事業拡大にあわせて実施したほか、販売パートナーである日本IBMと共同で、「IBM-PeopleSoftコンピテンスセンター」を開設し、パートナー営業活動の支援なども行っていく。



URL
  日本ピープルソフト株式会社
  http://www.peoplesoft.co.jp/
  プレスリリース(「IBM-PeopleSoftコンピテンス・センター」を開設)
  http://www.peoplesoft.co.jp/corp/en/news_events/news/database/int_press_release.jsp?doc=4606775F633AD95483256ED700147B8C&language=jp

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( 岩崎 宰守 )
2004/07/23 19:18

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