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日本IBMが広告から「eビジネス」を外した理由とは?

Image Communication 2004 エグゼクティブセミナー

 日本アイ・ビー・エム株式会社 常務執行役員の堀田一芙氏は7月27日、株式会社東京リコーが主催する「Image Communication 2004」で行ったセミナーの中で、同社の広告から「eビジネス」という言葉を外した経緯や今後の企業経営のあり方を、同社の経験をふまえて説明した。


日本アイ・ビー・エム株式会社 常務執行役員 堀田一芙氏

オンデマンド・ビジネスのWebサイト
 同社は1997年に「eビジネス」、2002年には「eビジネス・オンデマンド」を提唱し、ITを駆使して市場の変化に対応できる、企業の競争力強化を推進してきた。しかし、昨今の同社が打ち出した広告などでは“eビジネス”を外した「オンデマンド・ビジネス」をかかげている。堀田氏はこの変化を「現在はインターネットを使う・使わないに関係なく、常にビジネスモデルを変えていかねばならない時代になったから」と説明する。

 ここでいうビジネスモデルとは単に販売やマーケティングだけを指すものではない。社員のやる気を出させる方法などを含めた、「経営者から新人までオンデマンドビジネスに対する問題意識を一つとするための取り組み“イノベーション”を連続的に行うことが必要」と堀田氏。

 そしてオンデマンド・ビジネスを実現する企業とは「ビジネスプロセスが、全社および主要なパートナー、サプライヤー、さらに顧客までエンド・トゥ・エンドで統合されており、顧客の要求や新たなビジネスチャンス、外部からの脅威に対して迅速に対応できる企業」を指すという。

 実際に同社がオンデマンド・ビジネスを提唱したのに合わせるかのように経営者の意識にも変化が起きているという。同社が中堅から大企業のCEO500人(内100人が日本企業)に経営における関心事についてインタビューしたところ「従来はコストダウンやダウンサイジングが多かったが、現在は売上向上や対応能力の強化、人材育成など、5人中4人が企業の成長に向いている」という。堀田氏は大企業よりも中堅企業やベンチャーのほうがスピードがあってオンデマンド・ビジネスを実現するのに有利とし、その中の「世界最大の例」として米Googleを挙げた。


日本IBMの売上に占めるサービス事業の割合
 こうしたオンデマンド・ビジネスを掲げる同社だが、自身も1993年に「一度おかしくなった」(堀田氏)後に事業方針の転換を行い、最近ではプライスウオーターハウス・クーパーズ(PwC)のコンサルティング部門や米Rational Softwareの買収を行う一方、HDD製造部門を日立に売却するなど、かつてのハードウェア中心のベンダーからソフトウェア・サービス中心へと大きく変化した企業の一つだ。

 外から見て大きく変化した同社だが、社内でも組織・人事制度の見直しなどイノベーションを繰り返しているという。「IBMでは人事制度がいくつもあり、給料を優先したものから契約期間を優先したものなど」が用意され、日本経済新聞の「働きやすい会社2004」調査で1位にもなった。ただし「“働きやすい=甘い”わけではなく、あくまでパフォーマンスの向上を目的としたもの」とのこと。

 米国本社においても2003年にパルミサーノ氏が会長に就任後、自社の経験を生かして「満足を超えた、顧客の成功」に向け、顧客がどのような変革を起こせば成果を挙げられるかを社外の人間を交えて検討しているという。

 7年間看板としてきた「eビジネス」を外した同社は、さらに経営コンサルティングを中心としたサービス事業に力を入れ始めている。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  IBM ON DEMAND BUSINESS
  http://www-6.ibm.com/jp/e-business/

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( 朝夷 剛士 )
2004/07/28 09:58

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