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政府・自治体への技術提供で社会に貢献するマイクロソフト

~電子政府・電子自治体戦略会議 講演

ビデオメッセージで参加した米Microsoft 会長兼チーフソフトウェアアーキテクト ビル・ゲイツ氏
 8月2・3日の2日間、日本経済新聞社の主催で行われている「電子政府・電子自治体戦略会議」において、「世界最先端の電子政府・電子自治体の実現にむけて」と題して、マイクロソフト株式会社 代表執行役社長 兼 米Microsoft コーポレートバイスプレジデントのマイケル・ローディング氏とマイクロソフト株式会社 執行役 最高技術責任者 兼 米Microsoft コーポレートバイスプレジデントの古川享氏が講演を行った。

 講演に先立って、米Microsoft 会長兼チーフソフトウェアアーキテクトのビル・ゲイツ氏がビデオメッセージで登場した。ゲイツ氏は「テクノロジを社会問題に活用する最近の動きは、世界中で見られる進歩」とした。そして「人々が成功への新たなハードルを越える手助けをするために、民間企業もコミットしてビジョンを提示すべき」との考えを述べた。


マイクロソフト株式会社 代表執行役社長 兼 米Microsoft コーポレートバイスプレジデントのマイケル・ローディング氏

ITIL導入などによる運用プロセスの改善でコストを見直すべき

ITILをより実践的にしたフレームワーク「MOF」
 続いて登壇したローディング氏は「ゲイツ氏も、日本の電子政府への取り組みの進展と新しいシナリオについての報告を待っている」と述べた。そして「システムの開発・導入・運用・保守のフェーズで継続的な改革と改善を日本政府・自治体でも推進するべき」とし、電子政府でも本格的な導入が始まろうとしているWebサービスの技術について、「いかにこの技術を使い、効率を高めて質の高いレベルのサービスを提供するか」について語った。

 企業のIT投資は、うち7割を保守運用費用が占めているとの調査結果を示したローディング氏は、「理想を言えばこれを55%程度にすることで、より多くの成果を少ない投資で実現し、高い水準のサービスを提供すべき」とした。そして「公共セクターでは、レガシーシステム、購買や契約の仕組み、重複投資などの問題から、この比率はもっと高い。この問題はe-Japan戦略にも取り上げられている」とした。

 既存運用環境の効率化を実現するにあたっては、「環境の複雑性悪化で多くの保守コストを要し、一方でレガシー保守を担当する多くのエンジニアが退職しようとしている状況のなかでは、オープンスタンダードへの移行による合理化と統合が必要だ」とした。ただそれだけでは不充分とも述べ、「開発・導入・運用・保守のプロセスを改善するITILの考え方を導入すべき」とした。

 マイクロソフトでは、ITILの原則をより実践的にしたフレームワーク「MOF(Microsoft Operations Flamework)」を提唱している。これは継続的なモニタリングと管理サイクルによるサイクル見直しのためのアプローチで、同氏は「明確なフレームワークを活用して効率的な運用をすることで、より少ないもので多くを達成できる」とした。

 またIT投資を全体最適するためには、EAのようなアーキテクチャも積極的に導入して、個別のプロジェクトをフレームワークに落とし込んで他システムとの連動と外部との相互接続性を確保することや、政府機関もベンダーや業界と密に協業して、必要に応じてWebサービスや能力を民間から取り寄せたり、アウトソースを活用することも必要とした。さらに「いちから開発するのではなく、標準化された製品を活用すべき」とした。同氏は「世界各国の防衛省庁も、標準化活用の潮流があり、共有機能への投資が冗長化しない方策にもなる」とした。

 標準化されたXMLに基づいたWebサービスについては「より深いコラボレーションを求めるモデル」とし、「省庁、自治体、民間の間の枠組みを超えて自治体独自のニーズも満たすことができ、さらに高い機能をより経済的に提供できる」とした。そして公共交通情報、県の観光情報や防災情報、民間の渋滞情報や位置情報といった複数ソースを統合して情報を提供する愛知県の「ITSポータル」の事例や、総務省統計局の統計ポータルをWebサービスの事例として挙げた。


Webサービスによる電子自治体のイメージ 総務省統計局の「統計ポータル」 複数ソースを統合して情報を提供する愛知県の「ITSポータル」

 同氏は「Webサービスをはじめとした技術によるこうしたミッションが、世界の人々を支援すると確信している。情報振興と地域経済への貢献といった責任ある企業活動を通じて、個人や企業でなく社会に技術を提供することで、デジタルデバイドの解消と安全かつ信頼できるインターネット社会を実現していきたい」とした。


マイクロソフト株式会社 執行役 最高技術責任者 兼 米Microsoft コーポレートバイスプレジデント 古川享氏

PC以前の各社独自規格から、ソフトウェアによる相互運用性に基づいた業界標準への流れ
 古川氏はWebコンピューティングの概念について、「特定OSに依存せず、画面表示やデータ格納・加工にインターネットの力を使うもの」とし、Webサービスはこれを発展させたものとした。

 PCとFAX、電話は、人間の眼を介在しないと相互にやり取りできない。同氏はWebサービスを「モジュール化されたプログラムにより、機器やデバイスの間で自由に情報をやり取りでき、人間が介在する必要なく相互乗り入れが可能になるもの」と定義した。

 またWebサービスでは必要なモジュールの組み合わせも可能で、サービスの一部を呼び出しても利用できるとし、「電子ショッピングサイトでは、電子決済や配送サービスを連動させたサービスの統合ができる」とした。またすべてを自社で開発せず、サービスを呼び出せるため、システム変更のたびにプログラムを書き直す必要もなくなる。

 同氏はこうしたWebサービスを実現する上での前提となる“開かれた標準化”の重要性について、「昔はプリンタも接続できるのは自社のものだけだった」とし、デバイスドライバの公開や、コネクタ形状の標準化などにより、マイクロソフトがオープン化の流れの一端を担ったことに触れ、「開かれた標準化によって逆転ポイントの訪れた瞬間に値段が安く豊かなサービスを提供できるようになった」とした。

 そしてWebサービスを、こうした相互に運用できるインターオペラビリティの大きな流れにあるものと位置づけ、日本独自の取り組みであるWebサービスイニシアチブについて行政、大学も参画する「官民学が連携するユニークなもの」として取り上げた。

 またWebサービスとXMLを活用したサービスとして、現時点でもっとも一般的といえるBlogに触れ、「Web記述言語を習得しなくともサイトを公開でき、フィードバックも簡単にできる。またXMLを核に同一の記述を相互に参照できる」とその仕組みを紹介、米国大統領選挙でもインターネットによる政治献金の収集で威力を発揮したことを述べ、「政府、官庁、自治体へ意見を反映する自然な流れが仕組みとして備わっており、顔の見える政府を実現するキーワードになる」とした。また「今後は会社の情報開示などでも利用されていくだろう」とした。そしてBlogのような柔軟なサービスも「Webサービスによって、実現が可能になった」とした。


XMLを核にする相互に接続する「Blog」 Blogの活用が、顔の見える政府の実現につながる


URL
  電子政府・電子自治体戦略会議
  http://www.nikkei.co.jp/events/egov4/
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/


( 岩崎 宰守 )
2004/08/03 00:01

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