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「オープンソース化が企業の健全な利益を妨げることはない」米IBMファーガソン氏


 全世界のIBMで技術職に就く16万人のうち、55人しかいない最高位の“IBMフェロー”のひとりが、チーフエバンジェリストでソフトウェアアーキテクチャ チーフアーキテクトのドン・ファーガソン氏(Donald F. Ferguson, Ph.D.)だ。同氏を囲んだラウンドテーブルでは、これまでの研究成果である分散オブジェクト指向システムの研究と、WebSphere誕生の背景について語られ、さらに今後のソフトウェア開発がどうあるべきなのかについても意見が述べられた。


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 ファーガソン氏はチーフアーキテクトとして、1993年からは主にSMソリューションとフレームワークに基づくCORBAにフォーカスした分散オブジェクト指向システムの研究を開始。オブジェクトトランザクションモニターに基づいたCORBAフレームワークのシステムストラクチャーを定義した。これらのシステムの初期のデザインとプロトタイプが、「IBM Component Broker」などのWebSphereファミリーを生み出した。

 ファーガソン氏のこれまでの研究成果は、Javaをはじめとするオープンソースのコミュニティに多く貢献している。最近では2004年8月3日にリレーショナルデータベースのソースコードをApache Software Foundationに寄贈している。またMicrosoftとの協力によって、.NETとJavaの相互接続を可能にする技術の研究にも力を注ぎ、SOAP、WSDL、UDDIなどのオープンなWebサービス技術の発展にも大きく関与している。

 オープンソースコミュニティへの大きな貢献を果たすファーガソン氏に対し、「ソフトウェアを開発する企業として利益の衝突はないのか?」という質問が投げかけられた。すると「オープンソースでITインフラを提供するのは厳しいかもしれませんが、画期的なアイデアを持つ多くの企業にとっては、最初のコストを抑えることが可能となるため、業界全体の活性化につながると信じています」とオープン化が企業の利益を妨げることはないという信念を力強く語った。

 また「アイデアをどのように生み出すのか?」という問いかけに対し、「朝、目覚めて画期的なアイデアが浮かんでいるということはほとんどありません。お客様や多くの技術者とのコミュニケーションから常に問題に接し、“もっと楽に解決できるのではないか”と考えます。もともと怠惰な人間なので、もっと簡単にするにはどうしたらいいのかをいつも考えているのです」と常に問題意識を持つことが斬新なアイデアの源であること述べている。

 多くの若い技術者に対し「物事を長期的な視野で考えて、短絡的な思考に走らない忍耐強さをもつ」こと、「開発チームの一員であることを自覚する」こと、「新たな技術を拒絶するのではなく取り込む」ことが重要であるとファーガソン氏は語る。しかしファーガソン氏は「どれほど重要な仕事であっても、1000年後にどれだけの意味があるのでしょうか? 仕事そのものではなく、家族と過ごす時間こそが人生の意義なのだと思います。私のことを“WebSphereの父”と呼ぶ方もいらっしゃるが、私は単なる開発スタッフのひとりに過ぎません。私は娘の父であり、私が作ったのは人間です」と仕事や家族に対するはっきりとしたポリシーを語った。



URL
  米IBM
  http://www.ibm.com/
  ファーガソン氏略歴
  http://www-6.ibm.com/jp/developerworks/ibm/personal/don.html


( 北原 静香 )
2004/08/09 14:29

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