|
エンタープライズ事業本部 ソリューション本部長の多田和之氏
|
「基幹分野へ本格的にくい込んでいく」、8月2日に行われたデル株式会社の新サーバー製品発表会で、同社代表取締役社長の浜田宏氏はこう宣言した。同社はIAサーバー市場でのシェアを2004年第1四半期に初めてNECを抜いて一位となるなど、サーバー分野での成長が著しい。そして、今回同社の第8世代となるEM64T対応Xeon搭載サーバーを発表し、基幹システムなどハイエンド分野への浸透を狙う。基幹分野への取り組みについて、同社エンタープライズ事業本部 ソリューション本部長の多田和之氏に話を聞いた。
■ 64ビット対応は顧客に大きな安心感を与えられる
|
EM64T対応Xeonを搭載した第8世代のIAサーバー「PowerEdge」シリーズ
|
今回発表されたEM64T対応Xeon搭載サーバーは、同社にとって大きな意味を持つサーバーだと多田氏は語る。「なによりも64ビットに対応していることが大きな特徴」という。しかし、現時点でEM64Tに対応しているOSは少なく、Windows Serverも来年にならないと対応製品はでてこない。そうした中で、EM64T対応Xeon搭載サーバーにはどのような意味があるのだろうか。
「われわれが現在開拓しているエンタープライズ市場では、64ビットUNIXメーカーが先行してアプローチをかけている。彼らは、32ビットのIAサーバーでは将来が不安、64ビットなら将来安心というメッセージを打ち出している。こうしたUNIXメーカーの提案で将来性を不安視しているユーザー企業に対し、EM64T対応Xeon搭載サーバーなら、64ビットの選択肢を提示できる」と、64ビットという将来を見せられることに大きな意味があると多田氏は説明する。「現実的には、32ビットでも十分対応できるのだが、64ビットにも対応可能である点が大きな強みとなるだろう」と、32ビットと64ビットの橋渡しとしての期待もあるようだ。
また、ラインアップの面からも大きな意味を持つという。多田氏はサーバーシステムを3階層モデルで表現し、Tier 1であるフロントエンド分野について、「UNIXからLinux搭載のIAサーバーへの移行は大きく進んでいる」と、同社のサーバー製品がすでに優位に立っていると話す。
Tier 2のミッドティアについては、「始まったところという表現が正しいだろう。この分野に関しては、2CPU搭載サーバーによるクラスタリングで対応できると考えている。この分野でもUNIXからの移行を促進する」と、ミッドティア分野についてもUNIXサーバーからのリプレースが進みつつあると多田氏は述べた。
残るTier 3のバックエンドについては、「Tier 2の次に攻める領域で、この領域を攻めるときに64ビットのメモリ空間をフルに使うことになる」と、バックエンド分野では64ビット製品を中核に据えた展開となると説明する。「バックエンドでいえば、OracleとRACに関する協業を進めるなど、次への布石は打っている。まだ手がついていないのは、BI(Business Intelligence)の分野くらい」と、ハイエンドの領域にもすでに照準を合わせているようだ。
■ 「Sell Dell」で自社ノウハウをソリューションとして売り込む
こうしたハードウェア面での強化とともに、企業の基幹システムにくい込むために欠かせないのがソリューションの提供だ。同社では、マイクロソフト、オラクル、SAPなどパートナーと協力してさまざまなソリューションを提供しているが、その中でも、同社内でのIAサーバーへの移行事例をソリューションとして提案するものが増えている。
「これまで、デルはクライアントPCなどで企業との接点を持っていた。サーバー製品は、そうしたルートを生かしてアプローチしているが、ソリューションという形で企業の上層部に対して提案する事例が増えている」と多田氏は語る。その際に効果的なのが、同社の経験を説明すること。「企業のCIOを対象に、積極的にデルがレガシーシステムからIAサーバーへ移行した事例を紹介している。その際、営業色をなるべく排除し、純粋に事例紹介に徹するようにしている」と、同社の移行経験をまず知ってもらい、その次にソリューション提案につなげているという。
同社ではこうした行動を、「Dell on Dell」もしくは「Sell Dell」という言葉で表しているそうだ。「デルという会社のシステムがデルの製品で動いていることを表現しているのが、Dell on Dell。IAサーバーが基幹業務でも使えることを、デルの経験を通じてお客様に伝える努力をしている」と多田氏は説明する。そして、それをさらに進めたのが、「Sell Dell」だ。「デルを売れ、という言葉は、デル社内で成功した事例をソリューションとして販売することを意味する」と、自社の経験を最良の商材として利用しているのだ。
「Sell Dell」のひとつに、6月に発表された災害復旧(ディザスタリカバリ)システムを構築するサービスがある。これは、同社が川崎の本社と関東圏内のデータバックアップサイト間で構築した災害復旧システムのノウハウを生かしたもの。「低価格でもあり、多くの問い合わせをいただいている」という。同社では、こうした事例をソリューションとして商品化することで、企業の基幹分野に積極的にくい込んでいこうとしている。
■ URL
デル株式会社
http://www.dell.com/jp/
■ 関連記事
・ デル、「基幹システムを標的」とするサーバー戦略(2004/08/02)
( 福浦 一広 )
2004/08/10 10:02
|